「宇宙暮らしのススメ 〜小惑星移住計画〜」レビュー
「宇宙暮らしのススメ 〜小惑星移住計画〜」
著者:野田篤司氏 / 漫画:あさりよしとお氏、と、この手の宇宙ネタの本では鉄板の布陣。
勝手に位置づけするなら「子供の科学」や「かがくる」の宇宙特集、そのお父さんお母さん向け副読本。
もうすぐ宇宙飛行士・若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)から地上に戻ってきます。
そのISSや宇宙船、ロケットについての子供の素朴な疑問に答えるのに使える
・・・と奥さんに説明すれば文句を言われないだろうマニアックな一冊。
人工衛星はブレーキをかけると前に行ってしまうんだよ、と子供に話すと「なんで〜?」と必ず食いついてくると思います。
各センテンスが2〜3ページに漫画1ページなので、ちょっとした時間にひとつふたつ読めると思う。
あまり難しくなく、かといって科学的・技術的に適当なことを書いていたり中途半端な説明で済ませているわけでもない。
分かりやすく、かつ楽しめる一冊。
後半になると、題名から分かる通り小惑星への移住についてややマニアックな内容になってくる。
月や火星のありがちな移住計画でなく、もちろん金星や木星・土星へのSF的な移住計画でもなく、小惑星への移住計画。
第三章の「月に行っても資源がない!?」「火星に行くメリットはあるのか」から(こういっては何だが)話が俄然面白くなってくる。
一気に読むと、このあたりでロケットの打ち上げ直前のようなわくわく感を感じてきた。
確かに月の資源活用には相当な手間がかかる。
地球の地下資源開発と同じに考えていたら月面で火傷か凍傷になるだろう
火星に行くメリットはあると思う。
40年前に月に行ったのだって、旗を立てに行ったと揶揄されたけれども、それでもやはり人類の歩みにマイルストーンは重要だ。心理的な橋頭堡も必要だろう。
作者はメリットはないと書いている。
そしてその後は、さらに話が面白くなってくる。
「星一つを独り占め! 小惑星をくりぬいて住もう」
「小惑星開発の要は蒸気ロケットだ」
NASAやソ連科学アカデミー、ロシア航空宇宙局、予算規模がかなり小さくなるがJAXAのような国家組織でなく、スペースシップワンのように民間の有人宇宙船が出ている現在、宇宙船や宇宙旅行は国家戦略だけのものではなくなってきた(もう少し、時間かカネがかかりそうだが)。
このあたり、資源開発の歴史と似ている。
まだまだ国家や巨大資本による宇宙開発が進み月や火星の開発も行われると思うが、経済的な効率を求める民間資本は小惑星開発を積極的に行う、そういう宇宙開発もありえるだろう。
野田篤司氏は、この本の内容に関連したことを氏のブログで書かれています。
マツドサイエンティスト・研究日誌: 【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】 目次
野田篤司氏のだいたいの説はこのブログの記事を読めば分かると思う。
とはいえ(こう言っては何だが)読んで面白かったのは、やはりこの書籍の方だった。
個人的な読後感は、最後はあさりよしとお氏の漫画で〆てほしかったかなあ。
まあ「まんがサイエンス」の頃からあさりよしとお氏の漫画が好きだからなのですが。
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