「絵で見る十字軍物語」塩野七生 著 読んでみた
「絵で見る十字軍物語」が店頭に並んでいた。(新潮社:塩野七生『絵で見る十字軍物語)
塩野七生氏について詳しくはないが「ローマ人の生活」が面白かった。
十字軍についてどんな側面を見せてくれるのやらと思い、手に取ってみた。書評、メモ。
底本は1812年から1822年にかけて出版された、ミショー(Joseph François Michaud)の "Histoire des Croisades"(十字軍の歴史)(参照)。
塩野氏による翻訳ではなく、その本のギュスターヴ・ドレ(Paul Gustave Doré)の挿絵を使って十字軍の概略の物語を描いたもの。
見開きの左側ページにドレの版画挿絵、右ページ上半分にその挿絵の舞台となった地域の簡単な地図、下半分に塩野氏の簡単な解説が載せられている。
見た目は重そうだが、中身は意外と薄い。
空白多いし、塩野氏の解説は簡略にすぎると思うが、詳しい内容はこれから出版される「十字軍物語」で書かれるだろうから、ドレの挿絵が主役の入門書と思えばこんなものだろう。
十字軍の入門書として、ちょっと面白い一冊。
ジョセフ・フランソワ・ミショーは18世紀末から19世紀のフランスの歴史家・出版者。王党派。(Joseph François Michaud - Wikipedia)
ポール・ギュスターヴ・ドレは19世紀の画家・版画家・イラストレータ。(ギュスターヴ・ドレ - Wikipedia)
ミショーの原本は、当然キリスト教側の視点で書かれてはいるが、一方的にイスラム教徒を悪役とするものではなく、また今時の歴史書籍のようにイスラム教徒への配慮で書かれない内容もしっかりと書いてあるそうだ。ドレの挿絵もそれに倣ったもので、イスラムの英雄サラディンの威厳ある姿や文化的背景も描かれている。
出版されたのは、ナポレオン1世によるフランス帝政からブルボン復古王政の頃。(参照)
挿絵でイングランド王・リチャード1世の扱いが大きく、捕虜となったとはいえフランス王・ルイ9世の扱いもそこそこあるあたり、19世紀当時のフランスの情勢が反映されているのかもしれない。
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十字軍は虐殺と略奪の歴史とも言われるが、ドレの挿絵も、生首ゴロゴロ、死体ゴロゴロ。
高校生未満にはちょっと奨めにくい。
そこのところ、漫画「ベルセルク」をイメージしたら全体像が分かりやすそうだ。映画「300」も合わせてイメージすると、ドレのイラストの前後の戦闘シーンや進軍の雰囲気など縦方向の時間軸も補完出来そうな気がする。
ミショーの原本に載っているドレの挿絵は全100枚で、本書ではその一部が使われている。
ドレの挿絵100枚はここで見ることが出来る。
Gustave Doré: Illustrations of the Crusades
1枚目の「囚われのリチャード1世を見つける吟遊詩人(意訳)」をはじめ、載せられなかったイラストを見てみると、塩野氏の視点を知る一助となるかもしれない。
次の記事:「「十字軍物語・第一幕」塩野七生 著 読んでみた」
ドレの挿絵目当てならこっちの方が大判な気がする・・・値段も安いし・・・
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商品の寸法:30 x 22.4 x 0.8 cm
内容説明:
Magnificent compilation of all 100 original plates from Michaud's classic History of the Crusades. Includes The War Cry of the Crusaders, The Massacre of Antioch, The Road to Jerusalem, The Baptism of Infidels, The Battle of Lepanto, and many more. Powerful, striking royalty-free illustrations. Captions.
メモ
塩野七生氏について、「ローマ人の生活」が面白かったという程度しか知らないが、今回改めて調べてみたら、日本では文学でも歴史学でも叩かれているそうだ。(参照:塩野七生が叩かれる理由)昨今の政治・社会情勢についても、イタリアからいろいろと書いている。
書店店頭ではけっこう大きな扱いだったけど、売れてるのか?
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» 『絵で見る十字軍物語』読書感想 [マイペース犬ソリ]
塩野七生の著作は好きでよく読むのだが、
これは彼女の著作というよりは、ギュスターヴ・ドレの画集である。 [続きを読む]
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