「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」補足、海底に20年分とはどこから出てきたか?
(wikimedia commons)
中国がレアアース輸出禁止したというNewYorkTimesの記事と、それを中国商務省が否定したというニュースの影響か、前のレアアースの記事のアクセス数が驚くほど増えていた。
前の記事:「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」 変な記事の背景
中国メディアの希土類関係のニュース記事で「日本が海底に貯蔵している20年分のレアアース」という表現をよく見る。
前記事で、中国メディアの記事に書かれている「日本が海底に貯蔵しているレアアース」とは、EEZの海底熱水鉱床、マンガン団塊、コバルトリッチクラスト(CRC)に含まれる希土類元素の事を言っているのではないかと考えた。
採掘はおろか調査・技術開発段階の資源をもってきて「貯蔵」とは恐れ入る。
しかし、中国メディアでまことしやかに語られている「20年分を貯蔵」の根拠はよく分からなかった。
単に、含有量から資源量を計算したのだろうと思っていたがちょっと違うようだ。
2009年の8月頃から中国メディアの記事で「日本、稀土(レアアース)、海底、20年」がワンセットで使われ始めている。
8月18日の人民网の「中国划出稀土出口红线 日本已囤20年储备于海底--人民网经济频道 -人民网 」という記事。
中国の希土類関連工業の発展計画「〈2009-2015年稀土工业发展规划〉修订稿」(概要・日本語)について、清華大学の周世俭 研究員が解説をしている。
周世俭说,近两年日本从我国采购的渠道和策略发生了明显的变化,从大量、公开、集中采购转为多批、少量、分散采购。还有一些通过中国香港、泰国等地进行转港贸易进口。其目的一是转移视线,另一方面巧妙利用采购时间差,扭曲正常的供求关系,打压和操纵市场价格。
有统计显示,日本稀土的大约83%都来自中国。在获得大量稀土后,日本并不急于用,而是将这些足够使用20年的资源贮存在海底,显示其对未来能源战略的规划。
(日本語適当訳)
日本の購入の方法は変化してきていて、大量、一括の購入ではなく、少量ずつ分散させて香港やタイなどの貿易港経由で輸出をしている。
統計では、日本の希土類輸入の83%が中国産。しかし、日本は将来のための戦略的エネルギー計画により、海底には20年の使用量に足るだろう資源が貯蔵されているのに獲得すること(採掘)を急いではいない。
海底資源開発は、中国も含めて各国で技術開発途上の計画なのに、希土類元素の鉱山がありながら閉山している米国やロシアなど生産国の戦略と同列に扱われている。
中国が、中国だけがレアアース資源を持ってるわけではないと主張し輸出制限を正当化したいなら、政治的にも、日本も資源国と言う必要があるのだろう。
他の記事に比べれば、これはまだ論理的な方。
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日本が20年分のレアアースを貯蔵している、という中国メディアの記事では、2010年6月14日の人民網・日本語版の「中国のレアアース、低価格で輸出 ハイテク不足が原因」の中の文章と似た表現がよく出てくる。(元記事)
中国科学院・徐光憲院士の推算によると、1995年から2005年までの10年間で、中国のレアアース輸出による損失は少なくとも数十億ドルに達したという。
さらに深刻な教訓となったのは、日本や韓国がこの間に中国から安価で高品質のレアアースを20年間分購入・貯蔵し、国際的なレアアースの価格決定権を把握したことだ。
この日本語版の記事では「日本や韓国」だが、元記事では「日本と韓国他」と書かれている。他記事ではそのうちに韓国がどこかに消えてしまった。
試算をした中国科学院の徐光憲(徐光宪)氏は、中国では「稀土(レアアース)の父」と言われるほど権威ある人。(参照) 中国もレアアース資源の備蓄制度を整えるべきだと呼びかけている。
この徐光憲氏の試算の「1995年から2005年までの10年間で利用量20年分を購入・貯蔵」という部分が「20年分を貯蔵」に置き換わり、最初の記事の「海底に貯蔵」とごっちゃになって、「海底に20年分を貯蔵」となり、日本のレアメタルの備蓄制度とも混同していったようだ。
20年から30年に増え、40〜50年に増えて数十年と書く記事も出てきている。
マスコミにありがちといえばありがち。
コピペコピペし、編集で記事内容の一部削除をしている中国メディアだし、尖閣諸島の漁船の船長逮捕の問題と東シナ海の領有権問題、さらに東シナ海の海底資源が絡んできてるから面倒この上ない。
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メモ
だんだん、どういう性格のブログか分からなくなってきた・・・
まあ、いいけど・・・
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コメント
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中国のレアアースの対日輸出禁止により、輸入先の分散及び代替物質の開発が進む。
国はレアアースよりも優れた物性の代替物質の開発に資金を投入すべき。
投稿: | 2010年9月24日 (金) 07時45分