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2010年9月 2日 (木)

「誰も語らなかった 防衛産業」桜林美佐著 読了

誰も語らなかった防衛産業

防衛産業は「国防の要」であるにもかかわらず、防衛費の削減により、国産の装備品を製造できなくなる事態が進んでいる。
日本の防衛産業の多くは中小企業で、いま職人の技術が途絶えようとしている。一度失った技術は二度と戻らない。安全保障のためには「国内生産基盤」の維持は欠かせないのだ。三菱重工など大手企業から町工場まで、生産現場の実情を初めて明らかにする!
内容(「BOOK」データベースより)


ピンク色の「防衛産業」のタイトルロゴと著者の写真に目を引かれ、女性ならではの視点で語っているかもしれないと思い、読んでみた。

難しい評論やミリタリー本などとはひと味違った内容。



戦車の製造に関わる会社は約1300社、戦闘機は約1200社、イージス艦は約2500社が関わり、その多くがいわゆる町工場の中小企業だそうだ。
近頃、町工場や中小企業が世界に通用する技術を持っている、小さいながらに創意工夫で頑張っているという話を多く目にするし関連書籍も多くなった。
この本もその流れの一冊かと思って買ってはみたけれども、ちょっと違っていた。

日本の歪んでいる現状を背景に、防衛産業に関わる人々が持っているだろうフラストレーションがそのまま感じられるような読後感。いろいろな意味でフラストレーションが溜まった一冊。(*)

例えるなら、
「戦況が芳しくない最前線で取材した。
 塹壕で泥にまみれて頑張っている兵隊達は素晴らしい人たちだ。
 司令部の指揮や命令系統が無茶苦茶で、兵站計画・予算計画が悪く補給が酷い。
 戦果の期待と規律はやたらと厳しい。
 最前線の兵士達が苦しんでいる。」
そういうルポルタージュを読んでいる感じ。

選択と集中が必要という部分には賛成だし、最終章のまとめで問題点の指摘や解決策を示しているがそれで解決されるとはとても感じにくい。そういうフラストレーション。

誰も語らなかった防衛産業
誰も語らなかった防衛産業桜林 美佐

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自衛隊の各種トラックのバンパーや荷台を作っている会社では、機械では細かい要望に応えられないから一つ一つ手作りをしなければならないそうだ。これはあきらかに設計の問題だが、そこを技術者の職人技で対応し、その技術力を維持しなければならないといい「町工場の美学」とまとめている。

著者は防衛産業に関わる中小企業の技術者たちの「志」を高く評価して書いているが、それはもう精神論を持ち出さなければいけない状態にまで追い込まれていることを反映しているのかもしれない。

本書が想定している読者は、防衛関係と接点が少ない人や若者ではなく、その「志」や精神論にシンパシーを感じている人たちのようだ。
桜林氏の他の著作は未読だが、変に堅苦しい表現が多いしWW2の時の辞世の句などが転載されている。

最初に書いた、世界に通用する町工場や凄い技術の中小企業、目立たないけど重要な技術の会社についての記事や本を読むと、そういった会社で働いてみたい気分が高まる。自分が大学生で就活してたら、読んだその場の勢い(笑)で応募していたのは間違いない。

本書を読む前は、夏場の自衛隊イベント多く富士総合火力演習の直後だったし、今年は10式戦車が登場したから、出版のタイミングを合わせてきて、

「10式戦車作ってる会社、すげー」
「俺も戦闘機を(部品でも)作ってみたいぞ」
「こんなの作っている会社で働くのもいいかも」
 (どうせ、どこの会社も似たような状況だし。)

と感じられるような内容を期待していた。

就職超氷河期の今なのに、そういう方向性が薄かったのが残念。



あとがきに、自衛隊のイメージと自衛官制服のインナーの輸入案に触れて、一般の人と国防に関わる人の意識のすれ違いについて書かかれている。

著者は、自衛官の制服は「納棺服」で万が一の事があれば彼らの血が滲む服であり、その「制服を輸入」という論議はたとえインナーであれ自衛官の誇りを傷つけたのではないか、と思うのだそうだ。

「輸入」と一括りにしているが、どの国からの輸入でも誇りを傷つけるのだろうか?
もしそうなら、一般市民の意識とのすれ違いが解消することは難しいと思う。


もちろん、そんなことは無いと思うが。



本書では、製品原料や工作機械とその機械部品などの貿易や輸入については触れられていない。



メモ
大学時代、卒業後の進路に自衛隊も考えた程度の意識は持っている。
ダメもとで出した富士総合火力演習の見学応募は落選・・・

広報センターや駐屯地祭りでは、戦車や装甲車が展示され大人気だが、乗ったり撃ったりすることをイメージ出来ても、それを作るひとをイメージさせるようにはなっていない。

「10式戦車を作った会社フェア」とか技術展示会を併設してアピールすればいいのに。

もちろん隠すべきところは隠しておく。
自社では防衛受注出来ない会社でも意識高い熱心な営業がいれば、取引相手として選択するインセンティブにはなるかもしれない。

(*)ブログで書いて吐き出してフラストレーション解消。ブログの効能のひとつ。



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