「日本を再発見」という人民網・日本語版の記事 その元記事(南方周刊)が興味深い件
人民網・日本語版に「日本を再発見」という記事が載っていた。
この国(日本)がとても清潔で秩序があり、安全で安定しており、豊かで現代的であると感じるようになる。私たちはどうしてこのような国に敵対するのだろう?というフレーズで始まる。
載ったのは南方人物周刊という週刊誌で、人民網は、例によって都合悪そうなところを削除して一部だけを転載。
それでも人民網がこういう記事を載せたことに対して、某掲示板では「工作活動」とか「懐柔しようとしている」という反中・嫌中の方々の意見が出ている。
ちょうど昨日書いた、「 中国メディアが載せた石原慎太郎インタビュー」という記事で、南方人物周刊という中国メディアについて調べたばかりだし、元の記事を調べてみた。
まだ南方周刊のオフィシャル・サイトには載せられていない(11月28日現在)ようだが、ポータルサイト「163.com」などで転載された全文が見つかった。
元の記事では、前書きの後、日本について、近代史から東京下町の生活、地方都市の生活や農業など、さらには日本人について分析解説を試みている。
人民網・日本語版に転載されたのは「前書き」だけ。しかも、都合悪そうなところがかなり削除されている。 ┐(´д`)┌ヤレヤレ (本筋でないので、記事末尾に記載)
一部だけ転載されたので余計に変なイメージを持ってしまうのかもしれない。
石原慎太郎のインタビューを載せた南方人物週刊だし、人民網の意図は別として、インタビュー記事にも書かれているように、相手をよく知りうまく対応することを考えて書かれた記事だろう。
こちらも、この記事をよく知るためにも、人民網の記事でばっさり切られた残りの各章のタイトルと概略を書いてみた。
日本再发现 (日本再発見)
太阳照常升起 (日はまた昇る)
戦後の日本の復興の話
1955年发生了什么? (1955年に何が起こったか)
朝鮮戦争特需と55年体制、高度成長期へ
“1亿总中流” (1億総中流)
1億総中流といわれた時代
“买下美国!” (米国を買う!)
公害問題、石油危機、Japan as No.1、バブル
“对了,去京都吧” (そうだ 京都、行こう。(JR東海のキャンペーンの事))
バブル崩壊、失業率上昇、失われた10年
里弄东京 (東京の下町)
亀戸の下町の様子、町内会の仕組み・防災、神社・宗教観、お年寄りの生活、隅田川花火大会
风物新泻 诗意的农村 (新潟の農村部の詩的な風景)
国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった(穿过县界长长的隧道)から始まり、地方都市(三条市)の様子、米と日本食、日本人のこだわりと米輸入自由化、中国産毒餃子事件、農業の状況
日本的国族困惑 (日本国家の混乱)
日本人のアイデンティティの話から、現代の日本人の人間性がどう形成されているか分析
記者の分析や結論には賛否あるだろうが、内容はしっかりと書かれている。読み応えがある。
中国人が日本に抱いている誤解をとく役に立ってほしいものだ。
(参照:中国人が日本に抱く「10の誤解」)
ただ、米の話から日本食、日本人の食へのこだわりへと続けて、米輸入自由化から中国から輸入された毒餃子の話へつなげ、中国国内の食の安全性の話にもっていくのはいいけど、
「日本人は食い物のことだと本気で怒る」
という一文を入れてほしかったなあ(参照:日本を本気で怒らせる方法)。
中国が日本との貿易でうまく対応するための大きな一歩なのに。残念。
その他にも、現在の中国の状況に対して問題提起となることがいろいろ書かれている。近代史で公害問題を盛り込んでいるのも中国の現在の環境汚染と摺り合わせているのかもしれない。
正直なところ、こういう記事を書ける記者、こういう記事を載せられる中国のメディア企業は日中関係でとても重要だと思うし、なにより面白い。
それはともかく・・・、
このポータルサイトのページの右側に居る、晴れやかな顔の「金正男」はどうにかならんかなー (笑)
(写真)
( ↑ 直リンクです。ご注意ください笑)
(掲載ページ:孤独な長男・金正男)
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メモ
南方人物週間の記事の前書きから、人民網・日本語版で削除された部分は大きく3カ所。
まず、日本を再発見 (2)の次の赤字部分。
言語学者の統計によると、現代中国語における科学名詞の70%は日本から輸入したものだ。たとえば、「科学」、「民主」、「哲学」、「物理」、「教育」、「社会」などが挙げられる。私たちがよく口にする 、「高度な」、「文化」、「代表者」、「経済」、「科学」、「商業」、「健康」、「社会主義」、「資本主義」、「法律」、「共和」、「美学」、「文学」、「美術」、「抽象的」も例外ではない。
同じページの最終行の、「・・・。日本は古代において中国から非常に多くのものを得たからだ。」の後の2段落を削除。
「しかし、かつての生徒はもう教師となっている。」と続き、日清戦争で清が敗北した時の、伊藤博文と清朝中国の李鴻章との講話のエピソードや、中国で英国の治外法権が撤廃されたのは日本よりも35年も遅かったことなど、当時の日本が大きく優位に立っていたことが示されている。
そして次ページ、日本を再発見 (3)では、中程の「・・・経済的に裕福で、政治的に独裁状態の国は最も恐ろしいのだ、、、。」の後の2行と2段落を削除。
2004年アテネ五輪の110mハードルで中国の劉翔選手が金メダルをとった時、日本の記者が中国の記者席に言って祝福をした。劉翔選手の勝利は中国人としてだけでなく黄色人種としても勝利をしたのだ、という内容。国家や民族でなく、黄色人種で日本人・中国人をまとめようとしている。
削除部分を全訳してみようかとも思ったけど、内容が中国的にけっこう神経質な領域なので、誤訳したら大変だし止めときます。
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