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2011年5月

2011年5月27日 (金)

「検証 東日本大震災の流言・デマ」読了。デマ検証をしていた経験からの感想や手法など

検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)
荻上 チキ

光文社 2011-05-17
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そのうちに誰かが出すだろうと思っていたが、思いのほか早く出版されていた。
本書に書かれているいくつかの流言・デマの検証に少々関わっていたので、とても面白く読ませてもらった。レビューとか書評というか、読んで考えた事。

本書では、東日本大震災後にネット上で広く流布されていた流言・デマを分かりやすくまとめている。どういうパターンの流言・デマがありどういう風に流れていったか、ちょうど防災訓練のように、傾向と対策を知ることが出来るだろう。
大きな災害の後には、相も変わらず真偽不明の噂やデマが流れる。
相も変わらず、ということは、次に大きな災害があった時にも、似た流言やデマが流れる可能性が極めて高い。不安感が根っこにあるので仕方のないことかもしれない。
今回の震災では「阪神大震災の時に〜だったらしい」という流言やデマが多く流れた。次回は「東日本大震災では〜というデマが流れていた」と考える人が増えれば良いと思う。

流言やデマで、自分(家族・友人知人・会社等)が被害者にならないように、また自分が加害者にならないためにも、一読してほしい一冊だ。



書籍という紙メディアで一般向けの新書という形で出版されているので、内容のバランスや文字数の関係か、書ききれない部分や踏み込めない部分があるように感じられた。(*2)
また、流言・デマのまとめとして書かれているため、現在進行形の本当か嘘か分からない情報、東日本大震災や過去の災害で似たデマがあり疑わしく感じるけれども、検証まとめ記事はまだ無く報道も発表も無い、こういう時に個々人がどう対処すれば良いか分かりにくいように感じた。(*3)

こういう部分には、ネットの雑文屋の方が適しているだろう。

悪筆ながら、実際に関わった流言やデマの例をもとに書いてみたい。
後に、デマ検証している経験から真偽不明の情報のネットでの簡単なチェック方法をいくつか書いている。
(文中の「@」付きの英数字列(例:@abcde)はツイッターの登録名(アカウント))

Kitty Cat
Original Update by serge s.


本書では、広く流布された流言・デマに対して、その検証の為の論拠(エビデンス)として報道や発表、統計データ、あるいは公人などが確認した情報、まとめた検証記事等を提示している。一般向け書籍としてまとめる以上、必要な論拠提示だったのだろう。

それら明確な論拠が表に出る前から、疑問を持った多くの人が検証をして情報発信をしている。
本書で「懐疑屋」や「検証屋」と書かれている人々だ。
mixiでの検証コミュニティ、著者のサイトやいくつかのまとめサイトが紹介されている。(参照
後の報道やはっきりとした証拠が出る以前にデマの拡散が沈静化していた場合があるし、流言・デマが大きく広がらないまま沈静化した場合もあっただろう。
本書では、これら途中経過の描かれ方が弱いように感じられた。

私は、ネット上ではそういう多くの人たちによって発信されていた様々な検証情報が重要だと考えている。

それら一つ一つは、万人を納得させる明確な検証結果ではなかったかもしれないが、ただ流言やデマに流されていただけでもなかっただろう。
デマのまとめ記事を書くわけでもなく、必ずしも他者を説得するためでもなく、自分が納得したいため知っていた情報や調べてみた情報を“つぶやいた”のかもしれない。
それでも、各人の持つ経験や専門分野、あるいは居住地、いろいろな角度から判断材料となる情報が発信されたことで、「本当らしいぞ」あるいは「疑わしいぞ」という空気を作っていったと感じる。


日本人は「空気に支配されやすい」。

山本七平の「『空気』の研究」では、この「空気」と「論理やデータ」が対決した結果、「空気の勝ち」となった例をいくつかあげている。(*4)ネット上でも、お互いの顔が見えないながらも似た現象は起こっている。
「議論における論者の論理の内容よりも、議論における言葉の交換それ自体が一種の『空気』を醸成していき、最終的にはその『空気』が決定の基準となる形をとっている場合が多い」とあるが、多くの人たちの情報の双方向のやり取りそれ自体が一種の「空気」を醸していき判断材料となっていたのではないだろうか。

これにはデマを信じる情報発信も含まれる。

閉鎖的なつながりでは、デマ情報でも真実であるかのように語られる空気が出来うるし、一方、開かれた場では結局は適切な結論に至るだろう。
例えば、コスモ石油火災による有毒な雨が降るというデマの拡散と中和の表とグラフ(本書p.42-44)を読むと、ツイッターでは3月11日はデマのうわさばかりが拡散し懐疑屋も検証屋も登場していない。
このデマは、最初mixiでの千葉の若い母親のコミュニティで広まったという噂を聞いた(未確認)。案外これが正しくて、mixiで真実であるかのように語られ広まった後、口コミや携帯電話で身内に拡散し、そして翌日にツイッターで大きく拡散したのかもしれない。

そこで念頭に置かなければならないのは、

その噂を聞いた感想など、ネット情報の数と情報の真偽はまったく関係がない

ということだ。

チェーンメールは本書でも書かれているように情報源が変わったり場所が変わる(参照)などパターン化しがちだ。
また(あくまでも主観だが)、デマ情報は多角的な検証に対しては脆弱であり、一部あるいは全部のコピペ(転載)が多く新情報が出ない傾向が高い。返事も反射的、感情的な感想が多く、デマ発信者は「本当」という自説を取り繕おうとして自己矛盾を起こしてしまう。



例えば、宮城県仙台市の三条中学校における外国人犯罪の流言。

一連の流れは、Togetter(Twitterでの発言のまとめ)で編集・記録されているので参照をしてほしい。(私は @pelicanmemo で顔を出している。)

本書では、国会議員が大丈夫だと確認したという情報と、後日の東北大学の教授の確認情報を最終的なエビデンスとして提示しているが、その他に多くの人が内容に疑問を感じたり、一次発言者(仙台在住?)の過去の発言から信頼性に疑問を持ち検証をしていた。決定的な部分として @PrettyCureさん(仙台在住)が実際に三条中学校に行って確認をし多くの矛盾点を指摘している。

私は、名前を聞いたことも無い参議院議員の「大丈夫です」ツイートは簡単すぎでその後の発言が無かったため、「その議員さんは本当に現地確認をしっかりとしたのだろうか?」と不安を感じていた。ところが@PrettyCureさんが再確認をしてくれた事で、絶対とは言えないまでも、極めてデマの可能性が高いと判断することが出来た。似た感想を持った方もおられるのではないだろうか。(*99)

後日の、河北新報の記事(リンク切れ)や、東北大学の教授による現地の本当の状況のブログ(河北新報の記事を一部引用)「3/14にも行って閉鎖を確認しているので、モンクがあるやつは出てきなさい。」記事が公開された時には、「デマだろう」とほぼ認知されていた。
いわば最後のトドメを刺したものだった。



今でこそこういった駄文を書く材料をもっているが、私が関わったきっかけもとても簡単なものだった。

ツイッターで「人種差別の発言を繰り返しているアカウント」を書いてあるツイート(フォロワーのもの)をたまたま読み、その中の一人のツイッターサイトをちょっと見てみたらアイコンに見覚えがあった。
これだけ。

その一次発信者は、少し前に「中国救助隊が被災者のご遺体の写真を撮影し公開をしている」という内容のツイート(現在は削除されている)をし(参照)、論拠として中国の新聞社のリンクも出していた。(閲覧注意

「まさか、そんなことはしないだろう」と思い、ちょっと見てみて写真のコメントの漢字を読んだら、写真の撮影地は中国救援隊が活動をしていた岩手県大船渡市ではなく岩手の他地域や宮城など各地の写真。
「場所が違うから写真は寄せ集めじゃない?」とつぶやくのと前後して、Reutersで同じ写真を見た、NewYorkTimesで見たという指摘がされ事実誤認の情報だと周知された。後にデマ認定されてまとめられた。
そして、三条中学校の流言のツイートを読んでみたら「あれ?あのツイートを書いてた人じゃない?」。

たまたま自分が知っていた、ほんのちょっとしたことでした。


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広井 脩

北樹出版 2004-05

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本書では、公的な発表や報道、あるいは公人の確認などを流言・デマの確認をするための論拠としてあげている。
重要なことだし非常に強力な論拠となるのだが、一方、例えば3月や4月の東京電力による公的な発表はどうだっただろうか。
もし似た事故が新たに起こり電力会社から公的発表があったとしても「安心デマ」と言われないだろうか?疑問を抱くことなく言葉通りに信じる人はどれだけいるだろう。

行政や政府機関の発言やそれを受けた報道が災害後の流言やデマの元となった例として、ハリケーン・カトリーナの後のニューオーリンズでのデマがある。本書でも紹介されている「災害ユートピア」にもその例が載っている(前の記事で言及)。

ハリケーン・カトリーナの襲来後、避難所として指定されたニューオーリンズの多目的ドーム施設「スーパードーム」で治安の悪化が酷く、殺人やレイプが多発しているというデマがあった。その情報発信源の一つがニュー・オーリンズ警察のコンパス本部長の発言だった(参照)。またブランコ州知事が、治安維持のために発砲も辞さない、という戒厳令ともいえる対応をし(参照)、「ニューオーリンズが無法地帯と化している」という全米報道に拡大し、救援や支援を大きく遅らせたとも言われている。(*5、詳細は後述)

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公的な発表や報道は重要なことだし非常に強力な論拠となるが、事実確認や調整で遅くなりがちだ。また、本書でも触れられているように、個々の事例を詳しく説明されることはあまりない。
そういう時に、ネット上での流言・デマの検証記事はソースとしての効力を発揮することになる。(うちのブログでは、そういうデマ検証のまとめをしていたサイトのリンク集を作っていた。本書に載っていないものもある。)(*6)
もちろん、検証者たちも万能ではなく事実誤認や勘違いも起こりうるし修正をすることもあった(私も同じようなミスがあった)。かなり後になって新しいデータが出てきて、実はデマでは無かったと言われている例もある。(*7)



ツイッター上で、被災地での犯罪について真偽不明の噂が流れ、それを読んだ人の反応で次のようなものをいくつも見かけた。

常識的に考えたらおかしいけれども、注意するにこしたことはないから・・・」


常識と不安感がせめぎ合っている、ここが分水嶺ではないかと感じている。

この時に誰かから「こういうデータが・・・」「こういう解釈はどうでしょう?」「〜で調べてみたところ・・・」とコメントがあれば判断材料が増え、その人は、その人なりの判断を下すだろう。
提示された情報ソースが信頼性や説得力の高いものだったらなおさら。

ただ否定をするのではなく、抱いている不安感を少しだけ和らげ常識を少しだけ後押し出来るような解釈や情報を提示する。相手を説得するというか、相手に納得してもらう。

結局、人は信じたいものを信じようとする。

本書を読むなどして不安感の元を知り、万が一の災害の時に自分の不安感に浸らずに、判断材料となるちゃんとした情報を知れば常識的に対応するだろう、と期待をしている。(*8)




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メモ
ちょっと水を差してみた。


関連記事

「東北関東大震災に関するデマのまとめ」をしている情報源
ツイッターとデマの拡散
【東北関東大震災】チェーンメールまとめ 「千葉のコスモ石油火災により有害物質が降る」デマからみた傾向と対策

「生き残る判断 生き残れない行動」を読んで、東日本大震災の例と一緒に考えてみた(2/2)
「災害時でも秩序ある列を作る日本」 ステレオタイプな国民性の記事の効能、正常性バイアス、日本の財産

などなど



最初に書いた、「疑わしい情報だけど、公的発表も報道も、流言・デマのまとめ記事もない場合」の簡単なチェック方法いくつか。

Googleの検索オプションを活用する。(参照)Googleにはいつもお世話になっています。

Googleタイムラインを使う。
本書でも書かれているしメジャーな方法。
ツイッターでどのように語られているかけっこう分かる。

調べたい期間を細かく設定することも出来る。(参照

Googleの期間設定を使って検索をしてみる。
(例えば、検索期間を地震の前の2011年3月10日までに設定をしてググる。)
ちょうど先週に「放射性セシウムが乳腺に蓄積するので乳がん予防をしてください」という話を聞いた。
たまたまフォロワーさんが「ホントかな?」とつぶやいていたので、私も「ホントかな?」と感じ、ちょっと期間設定(2000/1/1〜2011/3/1)をして調べてみたところ、震災以前の関連情報は皆無だった(参照)。その後、科学的証拠は無かったというツイートがあった。

こういう疫学調査が必要な研究結果は震災後の調査だけで発見されることはありえないし、もしたまたま震災後に発表されただけだったとしたら間違いなくニュースになる。
もちろん、検索キーワードを外国語に変えたり化学式としたり、検索キーワードに工夫は必要。

filetypeオプションを使って、pdfファイルだけを検索してみる。
公的なデータはpdfファイルで公開されることも多く、リンクがあまりされていない場合が多い。この場合、Googleの検索結果の上位には載りにくく目に付きにくい。
pdfファイルだけを探してみると、案外、関連情報が見つかる場合がある。
統計データはMSエクセルのファイルだけ公開している場合もあるので適宜調整。

国ごとのドメインに限定したり、言語設定を変更してみる。
siteオプションを付けることで国別のドメインを検索出来る。検索窓の右下の「検索オプション」ページで言語設定を変える。
外国発のデマの検証をしたり、ソースを調べる時には非常に便利。ただし参考情報程度。

例えば、日本のマスコミは中国関係となると客観的に報道しているのか疑問を感じることがある。中国メディアの日本語版は、人民網・日本語版のように都合のよい部分だけを訳すこともある。
レアアースの報道に疑問を感じて調べた時(参照)に強く感じた。

巨大掲示板2ちゃんねるで、関連情報が無いか調べてみる。
検索キーワードにsiteオプション「 site:2ch.net 」を付けることで調べられる。
2ちゃんねるでは、流言やデマが多く、「釣り」と言われる、わざとデマを流して真面目に反応した人を嘲笑うという悪戯がある(悪戯で済まない悪質なものもある)。そのせいかデマ情報に対する、リテラシーというか耐性が非常に高いと感じる。
ただ、様々な掲示板やスレッドがあり、場所によってはかなり独特の空気があるので注意は必要だろう。






(*1)私の意見は、震災直後から言っているように「デマは救援や支援の邪魔にしかならない」。
著者とは面識なしツイッターでのやりとりもなし。そもそも3月時点では私自身がツイッターの使い方をろくに知らなかったし(笑)。初心者丸出しなツイートばかりしてました。

(*2)光文社という大手出版社から出版されていることも制限枠となっているだろう。

(*3)結局は、自分の判断次第なんだけどね。

(*4)「日本人とユダヤ人」を書いたイザヤ・ベンダサンだそうだ。

(*5)ハリケーン・カトリーナによる洪水の後、被災地に入ろうとしたオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)(超有名なトーク番組司会者)に対して、ニューオーリンズ警察のエディ・コンパス(Eddie Compass)本部長は多目的施設のスーパードーム内で「ギャングたちが武装をしている」「赤ん坊がレイプされている」ととんでもない警告をしている。(参照)また、キャスリーン・ブランコ(Kathleen Blanco)ルイジアナ州知事が、治安維持のために発砲も辞さない、という戒厳令ともいえる対応(参照)を行い、「ニューオーリンズが無法地帯と化している」などの全米報道に拡大した。FEMAによって申請と承認のない現地での救援活動が制限された結果、国際赤十字などの支援も遅れ、被災地はいわば見捨てられた状況となってしまった。
「災害ユートピア」で書かれているエリート・パニックによる公的な発表の混乱や、間違った報道が救援や支援を遅らせ、治安を悪化させた一因と考えている。

実際には、1ヶ月後の英国BBCの記事(参照)によると、スーパードームでの殺人や強姦の報告は無く、ルイジアナ保険局が確認した14人の死者の中には発砲による傷があるものがあったが、それはドームに運び込まれる前のものだろう、と報道している。多くが混乱の中での間違いや誇張だった。(参照:東京都議会海外調査団|平成17年度海外調査報告

(*6)こんな感じ↑に凝り性なので(苦笑)、一つの流言・デマに必要以上の時間と手間をかけてしまう。それよりは、判断材料となる情報を掘り出す方が向いていると考えて、ブログではリンク集といくつかの検証・分析記事を書くに止めていた。

(*7)ある女性タレントが死亡者数を賭けていた、という話。(さらに新情報が出るかもしれないので伏せておく)

(*8)辰巳ブログと川崎ブログ。

(*9)相手を説得するのではなく相手に納得してもらうことが主眼なので、悪意で拡散させたり、何も考えずに先入観や差別意識で脊髄反射的にリツイートするような人に対しては、労力対効果が非常に悪そう。

(*99)自己申告だという可能性があった可能性はあるが、デマ発信者が自己矛盾を起こした。さらに現地情報が増えたらより確実だっただろう。一応、隠し文字で追記しておく。


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