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2011年6月10日 (金)

「災害時でも略奪が起きない日本」という海外メディアが伝えた記事とその背景、まとめ。その3:考えてみた

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前記事:
「災害時でも略奪が起きない日本」という〜 その1:まとめ
「災害時でも略奪が起きない日本」という〜 その2:事実確認


今回、「災害時にも関わらず日本では略奪が起こっていない」という海外メディアの報道は、日本時間の地震翌日、現地時間の3月11日には出ていた。
例えば、TheNewYorker誌のNicholas D. Kristof氏は11日(米国東部時間)のTHeNewYorker誌に "Sympathy for Japan, and Admiration" という記事を書いている。TheEconomist紙のKenneth Cukier氏は現地レポート[The tremors in Tokyo] を書くとともに、米国PBSの11日夜のPBS NewsHourにSkypeを使って出演し「(略奪行為は) -- never, never in Japan」と言っている。

3月12日のCNNの「列を作る日本」記事は話題になったので知っている人も多いだろう。
(Orderly disaster reaction in line with deep cultural roots:参照

一方、日本の大手メディアが、被災地での治安悪化を最初(?)に報道したのは3月15日(読売新聞)だが、3月13日の読売新聞紙面でCNNや中国メディアの報道が紹介されている(参照)。
BBCは、3月18日の記事「Why is there no looting in Japan after the earthquake?」の末尾で47NEWSの記事をあげて looting が起こっている可能性に触れている。(*3)

地震直後の海外メディアの報道のほとんどは、東京に居るジャーナリストや特派員の声を伝えたもので、地震直後の首都圏の様子や帰宅難民、被災地でも比較的に被害が少ない地域の声を集めたものだったのだろう。(仙台の

今回の震災では、海外メディアの記事の酷さが日本在住の外国人や在外の日本人から指摘されている。(参照)(参照

国内ですら事実確認が出来ずに情報ソースの確認に躍起になっていたのに、在京の記者が充分な情報収集をしていたとはちょっと考えにくい。
パニクっていた記者もいただろう。(人にもよるが、外国人、特に来日して日の浅い欧米人の地震の恐がり方はオーバーすぎると感じる。世界の終わりが来たのようなパニクり方されると、見ているこっちが(どう対応しようか)不安になってくる。)


多くの報道関係者が被災直後に来日し、津波被災地にも入っている。

優秀なジャーナリストはバランス感覚が優れていると思っている。
彼らも人間だし、日本という先進国で起こった甚大な被害を、文字通り目の当たりにして、その悲惨な記事の中に安心出来る内容を含めたかったのかもしれない。

東日本大震災では、津波被災地でもその被災規模に対して略奪行為はとても少なかった。

目の前で起こっていたりインタビューで聞かなければ、限られた時間の中でわざわざ略奪の例を探すのは取材のパフォーマンスが悪そうだ。
すでに報道されていた「災害時でも略奪をしない、礼儀正しく秩序ある対応をする日本」というステレオタイプなイメージを覆すために、被災地の悲惨な状況で犯罪例を積極的に掘り出そうとはしなかっただろう。
特徴的なのが(前述した)TheNewYorker誌のNicholas D. Kristof氏の記事だ。(参照)(クーリエ・ジャポン2011年5月号(参照)に邦訳がある)の中で、阪神大震災で起きた地震後の犯罪をとりあげ、目撃者の「誰が日本人だと言いました?外国人でしたよ。」という言葉をわざわざ書いている。(*4)

多くの点で、ハリケーン・カトリーナによる洪水の時のニュオーリンズ市の治安状況についての米国メディアの報道姿勢とは違っていた。
マスコミの報道で怖いのは一部の事実がセンセーショナルに取り上げられ、繰り返し流されて事実以上の状況になっていると錯覚されることだ。現在では、さらにネット上でも増幅されてしまう。

今回は、事実以上に喧伝される事はなく、更なる治安の悪化も引き起こらなかった。

そしてその状況では、施政者が「被災した住民がパニックを起こすかもしれない」と考えて過剰反応をしてしまう「エリート・パニック」は起こりにくいだろう。被災者が冷静に行動することを信頼することが出来る。

その後、被災地の状況を日本メディアが報道し英語でも報道された。
「略奪が起きない(no looting)」から「略奪が少ない(little looting)(less looting)」という様に表現が変わったが論調はあまり変わっていないようだ。(参照)(*5)
地方紙のシカゴ・サンタイムス紙の記事 [But there was looting in Japan] などがある。

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「なぜ日本では略奪が起きないか」、いろいろと難しい解釈がされている。

「GAMAN(我慢)」が流行語大賞になりそうな勢いだ。その後も、福島第一原発事故の政府の対応に対して「我慢しすぎ」という記事もあった。
執筆者の思想やその国の社会状況にあわせてアレンジされているが、日本社会の伝統や文化的背景による精神論や、コミュニティの力というものが多く感じる。
総括すると、自然災害という圧倒的な外力に対して、「我慢」や「仕方ない」という精神作用やコミュニティの社会的結束などで守りを固めている日本という視点だろうか。


海外メディアの記事や掲示板の書き込みを読むと、ハイチ地震やハリケーン・カトリーナによる洪水の際の治安の悪化が引き合いに出されている。
英国メディアでは2007年の中西部の洪水もある(参照)。

ハイチはハイチ地震の前から最貧国であり、大統領府が崩壊する激甚災害の後では政府や社会への信頼感はかなり弱かっただろう。

ハリケーンカトリーナの洪水によるニューオリンズの場合は、救援や支援が遅れたことで状況が悪化したが、治安悪化の背景には米国の地域社会での経済的格差と人種差別があった。
米国メディアが偏向報道をした結果さらに悪化したそうだ。

ちなみに、カトリーナの例は米国での略奪の例とされる事が多いが、「こころと脳のサイエンス 03 (別冊日経サイエンス) 特集1:災害時の行動と心理」によると、ほとんどの略奪行為は食料や水を購入しようにも決済システムが機能していなかった為に行われたものだと書かれている。しかし一部の地域住民(主に白人)や自警組織は一方的に「利己的な略奪者。犯罪者。」とみなして発砲していたそうだ。(「災害ユートピア」レベッカ・ソルニット著。またはTheNation紙の同氏の記事[Reconstructing the Story of the Storm: Hurricane Katrina at Five])

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「サービスできないドイツ人、主張できない日本人」の中でドイツ在住の川口マーン惠美氏は
 「(日本に着くと)何より心地良いのは、攻撃されるかもしれないという警戒心を持たなくてよいことだ」
と書いている。
確かに海外では、緊張していなければいけない、という感覚があったしそれに慣れてしまっていた。

「日本」では、自己の外側の社会環境への無意識の信頼感が諸外国に比べて強いのだろう。

特に、物質面、ハードウェア面での信頼感が強いようだ。

時刻表通りに来る各種交通機関は「当たり前」(日本の常識・世界の非常識)で、地下鉄で居眠りだって出来る。社会インフラへの信頼感が(政府や政治家への信頼感はともかく)とても強い。
郵便や指定時間配達を無料で行う宅配便など流通システムへの信頼も強く、コンビニなど小売チェーン店でのサービスの質も良い。

これらは、基礎工事や鉄筋の本数、筋交いや耐震金具等を組んできた耐震基準の厳しい日本の建築物のように感じる。
今回、マグニチュード9.1の巨大地震が人口密集地の近くで起きたにも関わらず、これだけの被害で済んだのは日本の建築物の耐震性が高いという指摘がある。

防災教育の量も質も高く、自然災害の時に救援や支援が行われる事への信頼感も強いだろう。
首都圏では、震災直後の帰宅難民・交通渋滞は大変だったが今を凌げば何とかなると予想をした人は多かっただろう。(*6)
その状況では、人種差別や経済格差による不公平な物資の分配はされにくいだろうし、店舗の打ち壊しに発展するほどの悪質な便乗値上げはなかったのではないだろうか(*7)。

日本では、その安定した状況がとても長く続いてきたことで「当たり前」なこととなった。

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しかし、建築物も設計された耐震基準値を超えると壊れるように、その信頼感が裏切られた(と感じる)時には壊れやすくなるだろう。
また、そういうサービスや支援は公平に与えられないと自覚したり錯覚している人や集団は、その社会環境への信頼感はあまり高くないかもしれない。


「衣食足りて、礼節を知る」と言う。

それでも津波被害が大きい被災地では、その衣食が足りなくなったため、礼節を重んじる前に水と食料の確保を重視しなければならなかった場合もあったのだろう。それら地域の人は、いろいろな意味でこれから大変だと思う。(*8)


さらに、たがの外れた人々が火事場泥棒に走ったようだ。安普請だったり手抜き工事だったのだろうか。
これらの犯罪行為については、県警による捜査や、河北新報や石巻日々新聞など地元報道機関が調査をし報道することだろう。期待している。



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(*3)theAtrantic紙の記事[Why No Looting In Japan? Ctd] の読者コメントにも触れているが、そのコメントはまず首都圏での所謂「東京電力のふりして押し入りレイプ多発」というデマの可能性が高い情報を提示し、阪神大震災の際のレイプ報道(一部のマスコミ報道された事例はその信頼性に問題が多い(*))を持ち出しているので、やや思想的であり信頼性に疑問を感じる。
(*)『物語の海、揺れる島』与那原 恵著の検証記事、参照。その概略のまとめ

(*4)被災者が、地震後の犯罪例をあえてよそ者のせいにしている可能性は無視している。

(*5)事実が報道されるにつれて、海外メディアの論調が変わるのではないかと心配していたが杞憂だった。

(*6)先日のNHKクローズアップ現代「“帰宅できない” 〜どう備える首都直下地震〜」によると、頑張って帰宅しようとするとかえって危ないとまとめられていた。

(*7)便乗値上げはあった。

(*8)もしかすると何年も経って、それら略奪行為が行われた店の店主に対して、加害者の誰かが深く詫びて代金を支払うという「美談」がニュースになるかもしれない。



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