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2011年6月14日 (火)

「日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態」読了

日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態
千葉 明

彩図社 2010-07-10
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ネットだったかメールだったか、どこかで薦められた積ん読本。書評

本書では「在留中国人とは、どんな人たちなのか。また、どこから来て、何をしているのか。それはなぜなのか」を、統計データの裏付けによって読み解いている。
著者は、外務省に入省し在中国日本大使館や国際報道官等を経て、法務省入国管理局に勤務していた。

このジャンルの書籍は、変に感情的だったり、過剰に感傷的だったり、時には偏見で書かれた本を見かけるので、あまり友達には奨められなかった。

本書は一読の価値あり。



在留外国人は、2009年末で219万人で、総人口の1.72%を占めている。
中国人は68万人とその30%。2000年頃から急激に増え始め2007年にはそれまで最も多かった韓国・朝鮮を抜いている。

Transition_of_foreigners_in_japan
wikipedia

在留中国人の居住地域は、東京都の23%を筆頭に首都圏だけで44.4%を占め、次いで、大阪府7.3%、愛知県6.9%となっている。この傾向は他の在留外国人と大差はない。

中華街・チャイナタウンと言われるように(*2)同国人や出身地域で集まりがちで(横浜中華街や神戸南京町のように明治時代以来の地域は別格としても)、日本各地でも似た傾向があるだろうと思っていたが想像していた以上に出身地域に偏りがあった。

出身地は、遼寧(16.0%)、黒竜江(10.6%)、吉林(8.3%)と東北地方(旧満州)が多く、台湾(6.5%)や対岸の福建(9.1%)など日本と縁の深い土地の出身者が多い。
さらに、居住県によってけっこう偏りがある。
例えば、長野県では全中国人登録者のうちの62.1%、福島県では56.3%が東北地方出身者と際立っている。とくに富山では43.9%とほぼ二人に一人が遼寧の出身者となっている。


中国の東北地方出身者というと、いつも楽しく読ませてもらっているKEUMAYAさんとこの「中国嫁日記」ブログ。
若奥さんの月(ユエ)さんは遼寧省瀋陽市、外国語学校の王先生は遼寧省大連市の出身。

日本にお国柄や県民性があるように、中国でもお国柄(省民性?)がある。

中国・東北人の「熱しやすく冷めやすい」(参照)、「言ったことは曲がらない鋼の東北人(ドンベイレン)」(参照)な様子が、面白くも微笑ましく描かれている。
また、「第三の隣人 中国朝鮮族」さんとこの「中国東北女性の生態学パート2」では「面白く、正直であり、率直であり、素直であり、家族思いであり、働き者であるが、頑固である」とあり、「東北人は日本には水が合うためか、定住化が進んでいくように思える」と書かれている。

13億人の人口の国民を何となく「中国人」とイメージするのはナンセンスだし、「〜出身の中国人」と相手を知った上で、さらにその人となりを知れば対応の仕方も変わってくるのではないだろうか。


ただ、心配な事もある。

岐阜県では江蘇の出身者が26.1%と高いのは、どちらも繊維産業が盛んなので研修や技能実習での来日が多いからだそうだ。
一方、イタリアのトスカーナ州プラートは伝統的な繊維産業の地だったが、中国人住民(不法滞在者含む)による安価な衣類の加工基地と変貌し、産業の転換を余儀なくされたり違法行為が目立つという。(参照)(参照)。

どこが同じで、どこに違いがあるのか見極めた上で、同じような問題が起きないように気を付けなければいけない。

そういえば、何年か前、池袋駅周辺に新しいチャイナタウンが出来るのではないか、というニュース(大手メディアでは報じなかった?)があった。(参照
本書もそれについて触れており、派手な反対運動とは別に「地元の商店街の意見で比較的多いのは、町のルールを守り町の一員として行動するからになってからにして欲しい」と書かれている。(*3)
(ただし華僑紙(日本国内で発刊されている中国人向け新聞)の記事なので、在留中国人に向けたメッセージにもなっているのかもしれない。)



その他、華僑紙から在留中国人の本音を描こうとするとともに、広告欄などからかいま見える裏側の社会、道を踏み外す人々についても書かれている。

本書で紹介されている「新宿インシデント」。(オフィシャルサイト)(wikipedia
主演:ジャッキー・チェン、竹中直人 (R15指定

予告篇・香港版(日本版よりかなり激しい)



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最終章では、中国といかに向き合うかを考察している。

目指すべきは国益の一致であり、かつて亡命生活を送っていた孫文のように、在留中国人の中から将来の中国を引き継いでいくような人材を多く見いだす「質的思考」への転換が重要だと書いている。

ちょっと理想主義的だし、企画書の〆の大風呂敷とも感じられたが、単に労働力の確保や観光客数の増加といった量的な思考ではなく、「在留外国人を知日派として育て上げていくべき」という質的な提言は、(未来の孫文はともかくとして)同意できる部分もあり、現実的に見つつ考えるべきだろう。



メモ
本書で使われている法務省の入国管理局−統計−は、数字を弄ってグラフを作ってみるといろいろと面白い。
例えば、(日本の)東北と北海道は他地方に比べて若い女性の比率がかなり高いとか、神戸南京町がある兵庫県では高齢者の割合がかなり高く定住化・安定化が進んでいるとか。


(*1)入国管理局−統計−(法務省)
(*2)日本人も日本人街を作るが、中国人は特に集住性が高いようだ。
(*3)そこんとこ個人的にも、ちょっとマイルールな人が多いように感じている。そして目立つ。
  言われなければやらない、とか、言われても納得出来なければやりたがらない、とか、まあいろいろ。納得させるのがちょっと手間。
(*4)「新宿インシデント」は未見。ジャッキーの映画でカンフーがほとんど無いという所で、あまり見る気が起こらなかった。そろそろ見てみようか。



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