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2011年7月10日 (日)

太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(2/2)

Rareearthoxides2
(wikimedia commons)

前記事:太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(1/2)

国内で話題になった深海底のレアアースは「使えないし、情報は古いもの」という記事を中心に、中国メディアの反応について考えてみた。

中国メディアの反応は、日本で報道された当日と翌日は、ネイチャー・ジオサイエンス誌で「東京大学の研究グループによって、太平洋の深海底に陸上で確認されている埋蔵量の800倍のレアアースが存在していることが発見された」という発表の第一報と、英国・BBC中文版の記事の転載が大部分で、数も少なく、反応はにぶいものだった。

ところが、翌々日の7月5日に、日本が発見した深海底のレアアースは「使えないし、情報は古いもの」という報道が出たとたんに、その転載記事が急増していた。
サーチナが紹介しているので、日本語でも概略を読むことができる。
日本の海底レアアース大発見「使えないし、情報古い」

サーチナが情報ソースと書いているのは中国経済網。
元記事は「稀土大发现想忽悠谁 专家称深海稀土可利用率不高」(レアアースの大発見はごまかしだろう 専門家によると利用可能性は高くない)」のようだが、さらにその元の記事は国際金融報が書いたもの。

中国メディアでは他紙の参照が多いので、日本メディアのニュースで「中国の〜紙によると」と報道されても、元ネタを調べると実際には他紙の参照記事や引用記事だったり、元の記事から一部削除や編集をした記事という場合がよくある。そのため、非常に多くの記事があるように見えても実はたった1つの記事のコピペ(複製・転載)なこともある。
この中国経済網や他の多くの記事でもコピペしたものが多い。


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国際金融報は人民日報社が発行している経済誌で、8ページの金融に特化した情報誌。その7月5日版の1面に大きく載っている。(*1)


稀土大发现想忽悠谁 专家称,深海稀土可利用率不高,中国仍为第一大国」(レアアースの大発見はごまかしだろう 専門家によると、利用可能性は 高くなく、中国は依然と一番の(レアアース)大国だ)

人民網・日本語版が「「日本がレアアース大発見」のニュース 狙いは何?」という邦訳記事を書いている。(参照

この記事によると、

日本メディアの報道は中国のレアアース輸出制限に対する圧力としての、一種の「世論戦・メディア戦(舆论战)」のようだと言っている。また、米国のレアアース鉱山についての報道の後も中国に対しての輸出制限緩和の圧力が続いていることから、それもまたメディア戦と見ているようだ。
日本の発見がごまかしという根拠として、
 「今回発表された深海底のレアアース資源はすでに1月5日に発表された「古いニュース」であること」
 「深海底のレアアース資源の採掘には技術的に困難であり不可能に近いこと」
をあげている。
終わりのところでは、中国も深海底資源の開発利用にも注意を向けなければならないと書いて、実際にそういった企業活動が進められていることを紹介している。


(追記)
タイトルの「稀土大发现想忽悠谁」を「ごまかしだ」と意訳しましたが「誰をごまかしたいのか」の方が適切ですね(参照)。大筋変わらないので修正はしていません。
(追記ここまで)

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国際金融網の記事で根拠と言っている部分について考えてみる。

1月5日に発表された「古いニュース」は、時期的に1月6日にサーチナが「日本が南鳥島近海でレアメタル、レアアースの調査を実施へ」と報道した事だと考えられる。(参照

日本が2011年4月から「南鳥島(みなみとりしま)」近海で1年間にわたって海底資源調査へ乗り出すと伝えた。レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)を豊富に含む「コバルト・リッチ・クラスト」の埋蔵を調査するためで、記事は「日本政府が周辺国家との競争になる前に、排他的経済水域の資源の開発に手を打った」と伝えた。

記事を読むと一目瞭然。
このレアメタル、レアアースの海底資源調査はコバルトリッチクラスト(CRC)に対するもので、今回のレアアース資源泥(REY-rich mud)とは別の深海底鉱物資源である。
深海底鉱物資源は、「コバルト団塊」、「深海熱水鉱床」、「コバルト・リッチ・クラスト(CRC)」の3つが発見されていたが、今回の東京大学の発見はまったく新しい4つ目の「レアアース資源泥」の事。


記者が、深海底繋がりで混同したもかもしれないし、それとも南鳥島と排他的経済水域(EEZ)を絡ませて反日の雰囲気を出そうとしたのかもしれない。
案外もっと簡単な、もっと打算的な事のように感じられる。

今回の新発見のニュースを「古いニュース」だと強調することによって、すでに市場には織り込み済みの話題だと感じさせようとしたのではないだろうか?

中国メディアの中では、経済情報誌の国際金融報はいち早く、政治的な見解が出るより先に、反駁する記事を書いていたようだ。
中文の元記事を見てみると、「舆论战(世論戦・メディア戦)」と「旧闻(古いニュース)」が括弧付きで何度も書かれ、特に強調しようとしている。
今回の東大の発表は、6月になって原油、金・銀・プラチナなど商品市場が大きく下落している中の、6月後半にはレアアース銘柄の株価も下落を続けているタイミングでのサプライズだった。
それに対抗するための、レアアース相場への悪影響を考えて書かれた、ごまかしだったと考えられる。

記事タイトルで「第一の大国」と書いているように、レアアース大国と自認しているプライドを脅かされるような状況は好ましくないだろう。

中国が国内産業を優遇するためレアアースを高値で安定させてるために価格操作を行っていると言われる(参照)。
この国際金融報の記事の後に、各中国メディアが一気に複製記事を発信してきた。記事内で、「舆论战(世論戦・メディア戦)」を仕掛けていると他者のせいにしているところは、まさに自分がその情報操作を行っている事の裏返しなのかもしれない。


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深海底資源の採掘は、まだまだ技術的に成熟してはおらず、今後の探査や技術開発が重要な、これからの産業だ。

これは東京大学の一次資料に書かれているし、日本メディアの記事でも同じように書かれているのだが、朝日新聞や日本経済新聞では誤解されそうな表現となっている。例えば、朝日新聞の記事では、

技術的には、海底の泥を吸い上げるだけで採取でき、陸地の鉱床のような放射性元素をほとんど含まず、利用に適するという。海底で、開発が有望なレアアースの存在が確認されたのは初めて。

という書き方をし、すぐにでも実行可能にも感じられる誤解を与えそうな表現となっている。(参照

これらの記事を読んで危機感を増幅させたのかもしれない。

サーチナが「太平洋海底のレアアース資源…中国で「日本の脅し」の見方」 で触れている中国青年報は、「日本科学家称太平洋海底稀土资源丰富(日本の科学者によると太平洋の海底に莫大な量のレアアースがある)」で、朝日新聞の4日の記事を翻訳引用している。(参照

研究报告还指出,从技术角度看,海底稀土的开采只需要将淤泥吸上来,而且其中不含陆地稀土矿藏中伴生的放射性元素铀、钍等,所以“很容易提取和炼制”。
技術的には、海底の泥を吸い上げるだけで採取でき、陸地の鉱床のような放射性元素をほとんど含まず、利用に適するという。

その上で、大部分は公海にあり日本だけの資源ではないことと日本の排他的経済水域(EEZ)にも存在することにも触れ、日本メディアの報道は「中国だけに希土類資源があるのではない。売り惜しみをするな」と警告する姿勢が見られると主張しているようだ。この中国青年報の記事も比較的に早い時期に出たものでコピペされていた。


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国際金融報は「古いニュースだ」の記事で、これは日本メディアによる「世論合戦・メディア戦」と書いている。
日本メディアの報道は、中国へ圧力をかけるための情報操作なのか、蛇足ながら考えてみた。

中国ではメディアによる情報操作が多いという話をよく聞く。その中国から見たら、他国メディアの報道もそういうものと見えてしまうのだろうし、レアアースの輸出制限など圧力外交をしていると、疑心暗鬼になりレアアースに関する全ての他国の対応が圧力に見えてくるのかもしれない。
時期的に、松本剛明外相が訪中した後、海江田万里経済産業相が訪中しレアアース問題を話し合う直前の事なので、余計にそう見られてしまうのかもしれない。

日本の中の人からすると、そこまで考えて官学協調路線をとってくれているなら、その方が嬉しい(笑)

日本でマスコミによる情報操作が行われていないとはとても言えないが、今回のレアアースの報道はちょっと違うだろう。

東日本大震災の後、日本メディアは明るいニュースはことさらに大きく報道し、反論記事は載せないようにしているように感じられる。内向きになっている。
そういう日本マスコミの持つ悪い「空気」の中で、いいかげんな記事が出て、それを読んだいくつかの中国メディアが噛み付いてきた、とそんな感じではないだろうか。

日本メディアが報道し外国メディアが反証する。調べてみると外国メディアの方が正しいらしく余計に日本メディアの報道が信頼されにくくなってしまうだろう。
好むと好まざるとに関わらず、そういった「空気」に支配されることの危険性については、山本七平の「空気の研究」以降、多くの研究がされている。

その空気は、日本メディアだけでなくロイター日本語版の記事にも影響しているようだ。
7月6日にJulie Gordon記者が書いた「Analysis: Underwater rare earths likely a pipe dream(分析:海中のレアアースは夢物語のようだ)」という分析記事(参照)は、Reuters中文版で「日本开采海底稀土可能只是白日说梦」中国語に訳されている(参照)。
要するに、過去の例と、カナダのNautilus社がパプアニューギニア沖で計画している採掘計画などに触れて、現状では非常にコスト高という分析をし夢物語とキツイ表現を使った記事だが、Reuters日本語版では邦訳記事はないようだ。



深海底の鉱物資源の採掘が難しいことはよく知られているし、ちょっと関連書籍を読めば書かれている。
だから、今回のレアアース資源泥が、比較的に採掘しやすいことは明るいニュースだ。

陸上資源はその産出国の事情によって供給リスクが生じるが、海底資源はその心配は少ない。
10年後に、陸上埋蔵量の1000倍のレアアースが供給されるとは思わないが、海底資源探査(特にEEZ)と技術開発を進めない理由は特に思いつかない。(政治以外)

脱原発の主力と見られている天然ガス資源。米国で水圧破砕法がシェールガス(非在来性ガス)に対して技術開発され実用化されることで、天然ガスの産出量が増え、2009年にはロシアを抜いて世界一の生産国となった。

こういう部分ももう少し客観的に報道すべきだと思うのだが、残念ながらほとんど見かけない。


多分、NHK教育の科学番組が放送をしてくれるのだろう。



メモ
(*1)人民日報と朝日新聞は提携関係にある(参照)。さらに考えたくなるのは、ちょっと「マッチポンプ売りの少女」の悪影響だろうな(笑)

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