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« 28日(第三次潜水試験)の中国の有人深海潜水艇「蛟竜号」 | トップページ | 【再掲】中国の有人潜水艇「蛟竜号」はどこまで自主開発なのか調べてみた »

2011年8月 2日 (火)

有人潜水艇「蛟竜号」の報道も制限されていた?中国高速鉄道事故の報道規制の影響?

Jiaolong0728_01

中国高速鉄道の衝突・脱線事故の直後、中国の科学技術への信頼回復のためか中国メディアは有人潜水艇「蛟竜号」が水深5000mの潜水に成功した事を大きく報じていた。
参照:中国、信頼回復に懸命?深海艇成功をPR

それは1〜2日だけで、実はその後にかなり制限されてしまっていたかもしれないという話。

自分でも何が何やら分からない気分をまとめたいので、ちょっとメモ。
前の記事で変な写真を見つけてから、ちょっと想像力たくましくなってます。)

追加記事まとめ:「中国の有人深海探査艇「蛟竜号」関係の記事、まとめ


蛟竜号の今回のミッションはかなりオープンに報道されていたので、ツッコミいれつつもけっこう楽しくニュースを追いかけていた。
ところが、速報や記事が頻繁に出ていて多くの写真や動画も迅速に公開されていたのが、7月28日の第三次潜水試験から急に変化する。

新浪网の特設 サイト「蛟龙号5000米载人深潜」の更新はストップし、母船からのレポートは電話レポートに切り替わり、動画はおろか写真も公開されなくなった。第三次潜水試験で水深5188mに達して無事帰還したという報道では「子供の科学」的なイラスト(冒頭のイラスト)が使われていた(参照)。

何か変だ。

こういう状態の中国の報道から感じてしまうのは「隠蔽工作」。
中国高速鉄道の大事故の直後という最悪のタイミングなので、余計にそのイメージは強かった。写真や映像に出せないような大きなトラブルが蛟竜号に起こったため、報道を制限し、時間稼ぎをしている間に修理をして誤魔化そうとしているのではないだろうか、そう疑っても仕方ないだろう。

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21日の第一次潜水試験(中国高速鉄道の事故の前)では、

蛟竜号が「潜水を開始 4:21」「水深1700m突破 5:39」「4027m到達 7:17」「新記録を作った 7:37」「海面まであと100m 8:35」「水面に出てきた 8:45」「潜航員が姿を見せた 9:20」
等々、速報や多くの関連記事があり写真・映像が使われていた。

事故後の26日の第二次潜水試験では、「中国、信頼回復に懸命?深海艇成功をPR」(参照)と言われたように特設サイトの速報だけを抜き出しても

「潜水を開始 4:59」「毎分30〜40mで潜水する 5:07」「水深500m突破 5:13」「1000m突破 5:22」「2100m突破 5:50」「3176.6m到達 6:16」「4335m到達 6:50」「4944.6m到達 7:08」「5000m突破 7:12」「蛟龙号は正常、3人の潜航員も良好 7:33」「水深5000mで海底巡航 7:45」「海面下100mまで浮上 10:24」「浮上 10:40」「3名の潜航員が姿を見せた 11:15」

と、いったいどこのマスコミかと思うくらいの頻繁に情報発信を行っていた。高鉄の事故後の報道から目を逸らさせたいという意気込みが伝わってきそうだ。
成功直後の朝(日本時間28日午前)にGoogleニュース検索で記事数を調べると約1700件、写真や動画も多く掲載されていた。

ところが、28日の第三次潜水試験では、

「もうすぐ潜水を始める 5:09」「水深5115m到達 7:20」「5143m到達 7:23」
これだけ。
それと水面から潜っていく時の水中撮影映像(参照)。

母船「向阳红09(向陽紅09)」からのレポートは、これまでは映像レポートだったが電話レポートになる(参照)。
そして、浮上して数時間経ってから「第三次潜水試験を完了。水深5188mと新記録達成 16:03」(参照)というまとめ記事が出るが、そこでは(深海の様子を説明したいのかもしれないが)イラストを使っている。

翌日になっても大して状況は変わらない。
第二次潜水の写真を使い回す記事は出てくるが、第三次潜航試験の時の蛟龙号の写真はなかなか公開されず、新たな映像も無く、潜航員3人の勇姿も見ることは無かった。

30日にやっと、第三次潜水試験で海底で撮影したというマンガン団塊の鉱床の映像が公開された(参照)。
これは今回のミッションの主目的の一つだから、成果と証拠をアピールしないわけにはいかない。

29日に、母船に同乗している王凯博レポーターが、マイクロブログで「(何かが)壊れて船上では修理出来ないと、蛟龙号の技術者もソニーの技術者も言っている」と書いている(参照)が、その影響だろうか?



その30日には第四次潜水試験があったが、新浪網の特設サイトでは「潜水を開始」「5182mに到達」だけ。
CCTVの夜のテレビニュース(参照)で使われた映像には、第三次潜水試験のものも一緒に使われていてちょっと分かりにくい。
31日に公開された第四次潜水試験の数枚の写真から(参照)、映像の最後で、甲板に引き上げている部分は第四次潜水試験のものだろう(あれ?映像使えるように修理できた?)。

荒天のため、揺れまくっている。

Jiaolong0730_02
[视频]“蛟龙”号第四次深潜 成功采集到锰结核_中国网络电视台

それでも潜水試験当日の夜に母船からの映像を含むニュースが流れるようになっただけ、報道姿勢は好転したと言えそうだ。
公開するタイミングを逃したのか、第三次潜水試験のものは、潜水時の映像と海底の映像以外は公開されていないようだ。

参照:蛟龙号5000米深潜--新闻报道_科技时代_新浪网


とまあ、こんな感じで。

改めて分かったのは、中国メディアの報道は、その文章と写真と映像を頭から信じ込んでしまうか、そうでなければ経験とか、読み比べて考えるテクニックがかなり必要になるということだろうか。

疑うときりがなくなるけど、前の記事で変な写真を見つけたから、頭から信じ切れないのも事実。何が何やら分からない気分。


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これらを見ていると、第二次潜水試験の大々的なPRは極端な状況としても、その前の第一次潜水試験と第三次・第四次潜水試験との落差が激しい事に気付く。
第三次潜水試験ではすでに報道が興味を無くしたとか、新浪网が何かヘタをしたために報道から外されたかとも考えたが、それでは写真がほとんど出てこない理由には弱い。

中国高速鉄道の事故に対してのネット世論の高まりと報道規制の余波もあり、それまでのオープンな報道姿勢の反動が出て過度に保守的に制限されてしまったのではないだろうか。

第一次潜水試験までの報道は中国にしては比較的にオープンな報道をしていると感じていた。

はやぶさ君のツイッターよろしく、蛟龙号も微博(ウェイボー)のアカウントをとる(結局、ろくに更新されていない)など革新的な事をやろうとしていたようだ。
比較的にオープンな情報公開もその流れだったのだろう。第一次潜水試験の準備の写真では新浪网のマスコットを写り込ませたり、母船「向陽紅09」に同乗しているレポーターによるインタビューも和気あいあいと行われていると感じられる。

Jiaolong001

陸地から遠い海の上、長い船旅、美人レポーター(王凯博、丛威娜)や撮影スタッフと寝食を共にして、規則とかいろいろとゆるんでいたのかもしれない。

そこに中国高速鉄道の事故が起こり、信頼回復の為に大きく取り上げられ注目された結果、どういう記事と写真を載せるか決定するまでに多くのチェックと承認が絡んできたのではないだろうか。
中国の資源探査船「海洋六号」が同海域で、潜水試験の保護監視任務を行うとともに、試験海域の温度や塩分データ、海底地形の測量などを行っている。(参照
それぞれの船の船長や科学者に命令順位があるだろうから、蛟竜号の報道に対しても自由裁量の幅は狭くなったのかもしれない。



第二次潜水試験で、今回の5000m級潜水という第一目標は達成され、第三次潜水試験では、マンガンノジュールの鉱床の発見という目標も達成された。
28日の夕方には、刘赐贵 党書記・国家海洋局局長により、第三次潜水試験の完了宣言、ほとんど全ミッションの成功宣言とも受け取れる宣言が行われる。
イカにもこの2つが主目的と宣言しているようだ。
後は、都合の悪い報道や写真、映像が流れないように、公開情報のコントロールをしようとしているのかもしれない。

その後、第四次潜水ではマンガンノジュールの採取、第五次潜水では深海生物のサンプル採取など成果をあげている。
上の興味も薄まり報道指針も固まってきたからか、徐々に母船からの現地レポートを含む映像も出てきている。





蛟竜号は、第四次潜水試験で海底に竜の木像を置いてきたそうだ。
公海なので、大っぴらに置くことが出来ない中国国旗「五星紅旗」の代わりだろう。(*)その底に「五星紅旗」が貼ってあるのかも、というのはあまりに穿った見方だと思うが。

道教では「四竜(蒼竜、白竜、赤竜、黒竜)」が「四海」をおさめる。
「四海」は「黄海、渤海、東シナ海、南シナ海」と言われる。

それを第一列島線、第二列島線を越えて「黄海+渤海、東シナ海、南シナ海、太平洋」とシフトさせようという大きな精神的・呪術的戦略の一手とみているというのは考えすぎだろうな。



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