「新選組組長 斎藤一」菊地明・著 読了
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「新選組組長 斎藤一」菊地明・著 読了。書評というかレビュー。
時は慶応4年。 ベン♪
後に明治と改元された最初の年の、今日と同じ日、9月5日。 ベンベン♪
会津に攻め込む新政府軍に対し、斎藤一隊長率いる新選組は ベベンベン♪
ここで会津を見捨てるは「誠義にあらず」と、今の会津若松市の北西に位置する如来堂、ここで戦い、そして最後を遂げたのでありました。ベベンベベンベンッ♪
・・・もっとも、斎藤一ほか数名は生き延び名を変えて明治の世を生きたのはご存じの通り。
斎藤一については謎が多い。
山口一、斎藤一、山口次郎(二郎)、一瀬伝八、そして藤田五郎と姓名を変えている。
本書ではその名前を手がかりに、戸籍や人名録、各種の名簿や公文書などを参照して、斎藤一がどういう行動を取っていたか、なぜ名前が変わったのか、試衛館時代〜新選組加盟〜池田屋事件〜天満屋事件〜鳥羽・伏見の戦い〜会津戦争〜西南戦争、それらでどう関わっていたか、あるいは関わっていなかったか、そして晩年を、丹念に読み解いている。
よくここまで細かく調べたものだと感心した。
菊地氏は、歴史作家で幕末の人物についての著書が多い。本書でも、戊辰戦争の生存者が書き残した一次情報でも裏をとり、他の資料と矛盾する場合はその理由を探って解釈を試みている。
斎藤一は、近藤勇の天然理心流・試衛館道場の食客ではなく、もっと関係の深い門人だったと推測している。剣の腕は沖田総司に次ぐ第二の実力。
伊東甲子太郎が御陵衛士をつくり新選組と袂を別った時には、斎藤一は御陵衛士に参加している。間者として入り込んだと言われるが、それだけ近藤勇や土方歳三の信頼が厚かった事を示している。
伊東甲子太郎の暗殺、御陵衛士の壊滅と前後して(新選組は隊士の脱退を認めていないので)山口二郎と名前を変えて帰隊。その後は、山口二郎または山口次郎と名乗る。
著者が2003年に書いた「土方歳三の生涯」と比べてみると、本書「新選組組長 斎藤一」は性格描写よりも資料解析を中心に行われている。そのため、斎藤一がどう行動したのか詳しく知りたい人には向いているが、斎藤一の人となりを情感豊かに読みたい人にはちょっと不向きかもしれない。
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家族や縁者によると、斎藤一は無口で几帳面な性格だったそうだ。身長170cmと当時としては長身。
その無口さのためか、斎藤一の人となりを知るエピソードが少なく今ひとつ人物像が掴みきれない。
本書は斎藤一の行動を細かく追跡しているのだが、それは逆に言えば、エピソードを元に人物像を描き出す困難さを表しているようにも感じられる。
その中で残っているのが、最初に書いた「誠義にあらず。」
ひとたび会津へ来たりたれば、今、落城せんとするを見て志を捨て去る、誠義にあらず
会津戦争で、母成峠の戦いで新政府軍に破れた旧幕府軍。会津から庄内、仙台への転戦を主張する大鳥圭介らとの会合で、斎藤一が言った言葉とされている。
そして、思いを同じくする新選組隊士たちと会津に残って戦った。
「誠」の一字が、新選組組長・斎藤一だったことを強くイメージさせる。
ちなみに、近藤勇亡き後の新選組の指揮官となった土方歳三は、会津の前の宇都宮での戦闘で怪我をしたため、会津戦争では山口次郎(斎藤一)が(会津)新選組を指揮している。その土方も、母成峠の戦いの後、援軍を求めて庄内から仙台へ行っており、そして会津への救援は間に合わなかった。
司馬遼太郎の「燃えよ剣」では、斎藤一が土方歳三に付き従って仙台から函館まで転戦する物語が描かれているが、それは実は、斎藤一諾斎(さいとう・いちだくさい)という別人だからややこしい。
これも斎藤一の謎を深めた一因なのだろうが・・・、自分の中の「燃えよ剣」の諾斎の雅号のひょうきんなイメージを何とかして欲しいもんだ(苦笑)
メモ
前記事のドイツZDFの番組記事の裏付けとかで手間取ってたけど、9月5日に何とか間に合った。 (;´Д`)
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コメント
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メモノメモさん こんにちは 「 新撰組組長 斎藤一」 私も読了 しました 何だか 淋しいような 何とも言えない想いに捕らわれました、それは 最初の妻 「やそ」 さんの 事です 斗南で 「 伝八」 君 の事を ずっと 待っていたのでしょうか? 謎 です 菊地道人 著の 斎藤一 では 「やそ」 さんは 斗南で あまりの生活の酷さのため 病死 してしまいます。 浅田次郎氏の 一刀斎 では 「最初の妻は捨つることにした こんな男を信じたおのれが悪い…というたはわしの声 じゃろう、その後の消息は絶えて知らぬ…」 もう!! 赤間さんの最初の本にも 「やそ」 さんの事は書かれていませんし 中村彰彦さんの 明治無頼伝にも 書かれていません。 確かに やそ さんは 居たのにもう少しなんとか しようよ? という 気になります。
投稿: 桂 恵 | 2012年2月20日 (月) 22時22分