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2012年2月11日 (土)

中国で降り続くガラスの雨 ガラスの自爆率を調べてみた

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西部网より)

前回に続いて、中国での爆発ネタ(チャイナボカン)で。

チャイナボカンの中でも、ガラスの爆裂は比較的に多く報道されている。
特に2011年は多く、上海では1日に3回も高層ビルのガラスが破裂・落下して「ガラスの雨」が降る日があるなど大きな問題となっている。

ガラスの自爆率や原因が気になったので調べてみた。めも。



まず、知らないと損をするかもしれない一般常識として、

強化ガラスは「割れにくい」と思われがちですが、耐熱や耐衝撃の安全ガラスではないので、割れます。自然に割れることもあります。
激しく破裂することもあるので、自治体では取り扱い注意のお知らせを出しています。

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ガラス食器類の破裂-京都府ホームページより)

安全シグナル:「強化ガラス」=「割れないガラス」ではありません!~身近なガラス製品にもこんな危険が~(東京都)

ガラス食器類の破裂(京都府)

強化ガラスの破損について:学校給食ニュース

そこんとこ、でんじろう先生が、強化ガラスと同じ作り方の「オランダの涙」というガラスで実験しています。破裂、というか爆裂。必見。


以下、メモを貼り付けて体裁を整えただけなので、である調に変わります。
(ガラス職人ではないので、素人考えな部分もあるかもしれません。)



中国各地でのガラス(強化ガラス等)の「爆発」と報道される事故には、大きく分けて3つの原因がある。

・強化ガラスの製造工程で混入する、不純物のNiS(硫化ニッケル)が原因で自爆。
・夏の高温やエアコンの排熱、風圧や地震によって、許容応力を超えたり、部分欠損が広がって破損。
・手抜き工事で脱落、破損。

強化ガラスでは、製造工程で硫化ニッケル(NiS)が混入することがある。(強化ガラスの製造方法によって違う。)
この内部要因である、NiSが原因の自然破損(spontaneous breakage)を「自爆」と言う。

ざっくりと書くと、その不純物のNiS粒の一部が、温度変化によって結晶構造が変化し、体積が増加することで「自爆」の原因となる。
「NiSのα型がβ型に相転移して・・・」とか書くと長くなるので、詳細は、SEGA(UFOキャッチャーのガラスが自爆)のプレスリリース添付資料(pdf)が分かりやすいので参照してください。

混入を完全に排除は出来ず、大きさは数十ミクロンと小さいため発見は難しく不良品をゼロにする事は不可能。
しかし製造後にヒートソーク試験(Heat Soak Test。以下、HST)という熱処理を行うことで、自爆率を大幅に減らすことが出来る。温度変化で壊れるのなら、出荷前にオーブンで熱して壊してやろうというもの。

次は、外部要因。ガラス表面やガラスの縁に外力や衝撃が加わるなどして、許容応力を超えた場合。
真夏の高温やヒーターの熱風がガラスの一部に直接当たることで、ガラス内部に温度差が出来、許容応力を超えると破裂する。
もともとのガラスに傷がある、表面の歪みが大きい、強化する時の熱処理のむらがあるなど質が悪いと破裂しやすい。

日本でも、強化ガラスの鍋ぶたが破裂する事故や、強化ガラス製食器を落として破裂する事故、ジャパネットたかたが販売していた台湾製のテレビ台が破損した事故がある(参照)。NITEが2011年2月にリコール情報を出している(参照)。

強化ガラスは一部の破損で、驚くほどあっさりと全体が破裂する。(動画:強化ガラスの割れ方 - YouTube

そして、手抜き工事。
高層ビルの窓ガラスが外れて落ちるとか、ありえない事故も起こっている。さすが中国。

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中国では「ガラスの雨(玻璃雨)」が降ることがある。報道記事を調べてみたら次から次へと出てくるので、その多さに驚いてしまった。怪我人も多い。

中国の高層ビルの多くでは強化ガラスを使っている。しかも自爆防止のHST処理されていないものが多く、飛散防止フィルムが貼られていないものも多い。(参照
自爆したり脱落した窓ガラスが落下途中で壊れて、粒状の破片がガラスの雨となって降り注ぐ。

日本でも高層ビル時代が始まった1960年代に、同じように強化ガラスが割れて落ちる事故が続発していた。
そのため高所での強化ガラスの使用を自粛していたが、その後、徹底した原材料の管理やHST処理、飛散防止フィルムを貼ったり合わせガラス加工とすることで安全性を高め、再び高所での使用が出来るようになった(『ガラス建築―意匠と機能の知識』より)
現在、高層ビルで主に使われているのは、割れても粒状に飛散しない倍強度ガラスで、強化ガラスの使用は低層階が主。HST済みで飛散防止フィルムを貼るなど対策がとられている。

日本での事故というと、2009年の丸の内の三菱商事ビルの事故が記憶に新しい。近くを歩いていた女性が怪我を負った。この事故では倍強度ガラス(外国製)が自爆している(撤去済み)。(参照


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中国メディアの記事では、強化ガラスの自爆率は約0.3%(千分の三)と書いているものが多い。

これは(どこでもよくある話で)最も良い数字で、中国国内のガラスメーカーによって自爆率は0.3%~3%とばらつきが大きい。(参照:百度百科

上海の、ガラスカーテンウォール建築のビルの自爆枚数を数えてみたところ、2万4000枚中124枚(~2011年?)で自爆率0.5%だったそうだ。(*1)
(参照:上海幕墙玻璃自爆率千分之五 124片玻璃自爆

意外と、HST処理をしていない強化ガラスとしては、自爆率0.3%は国際的にもそれほど悪いわけではない。自爆率0.5%はちょっと悪い。

2001年の研究によると、オーストラリアの強化ガラスにトラブルがあった8つのビルを調べたところ、12年間で1万7760枚中306枚(1.76%)の強化ガラスに不良品があった(Jacob,L., 2001(pdf))。この値を参照したのか『豪州での自爆率は1%を越えているので、中国の自爆率はむしろ低い』と書いてある記事もあったが、研究、対策がすすみ、現在は、強化ガラス(HST無し)の自爆率は0.25%くらい(他の原因も含む破損率は0.59%)のようだ。(参照

アメリカでは、強化ガラスの自爆率は0.2%以下(HST処理の有無は不明)だそうだ。
業界の期待値は0.0027%、と書かれているので、品質管理や施工管理、メンテナンスでそのレベルが可能なのだろう。(参照:Saferproducts.gov:消費者情報データベース)

日本では、1500~3000トンあたり1枚。
ガラス製造所によると、強化ガラス出荷量13,600トンに対して6枚が破損している(2,266トンあたり1枚)。(参照:国土交通省(pdf))(*2)

重量比なので、ちょっと比較しづらい。

百度百科によると、強化ガラス5~8トンあたり1つのNiS包有物があるので、均一に分布しているなら、面積が1.8m2で厚さが6mmの鋼化ガラスでは自爆率が0.34~0.54%となり、国内メーカーの実測値と合うと書かれている(参照)。
(この5~8トンあたり1つのNiSというのはHST無しの場合。HST済みの場合は500トンあたり1つ(情報源によって若干違う。))

同じ計算方法で日本での自爆率を計算してみると、0.0012%となる。

「中国では、日本の約400倍の頻度で強化ガラスが『自爆』している。」となってしまうんですけど・・・(怖)
(*)中国は自爆率0.5%、日本は2266トンに1枚が自爆として計算。

国土交通省が把握していない暗数もあるだろう。
最悪、HST済み強化ガラスのNiS混入率と同じ割合の500トンに1枚だったとしても、100倍近い。

中国では、ガラスカーテンウォール建築のビルが多いから、それだけ多く自爆しているだけだと説明している記事もあったが、そうではなく、品質管理や自爆予防と飛散防止の対策をしていない結果だった。

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しかもこれは、建築に使われる強化ガラスだけの話で、不純物のNiSが原因で「自爆」した事故だけの話。
外部要因で破裂する強化ガラスも多いが、それも含めて「自爆」と書く記事もけっこうある。

上海地下鉄のホームドアのガラスは、ホームと線路との温度差・圧力差で壊れたと考えられている。(参照

上海国際金融センター(上海国金中心)では、30階~40階の高さで破裂することが多いそうだ。
これは周辺の比較的に低いビルの高さが揃っていてその高度のビル風が特に強いらしく、ビル内外の温度差で強化ガラスの応力バランスが崩れていたところに、強風が最後の一押しをして破損したのだろう、と推測をしている。(参照

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新浪網より)


上海では、2階建て以上の住宅や病院、学校や幼稚園、老人ホーム、T字路正面建物でのガラスカーテンウォール構造の建築が禁止された。
ビルのガラス張り、上海で一部禁止…事故多発で : 読売新聞 (参照

上海には繁華街を中心に3655棟のガラスカーテンウォール構造のビルがあり、さらに500棟以上が建築中。当局の調査では一部は老朽化が進み、35棟に「深刻なリスク」、445棟に「リスク」があると診断された。

1割以上のビルでガラスが破裂したり落下するリスクがあると診断されたが、これはNiS原因以外のリスクだろう。数十ミクロンのNiS粒を見つけるのは難しいし、その自爆原因となる結晶構造かどうか確認するのは不可能だ。
オーストラリアでの強化ガラス(HST無し)の破損率は0.59%で、うちNiS原因の自爆以外の破損率は0.35%くらい。(参照

もちろん、中国国内でヒートソーク処理をしているガラスメーカーもあるし、うちが建てた高層ビルでは倍強度ガラスを使っているので安全ですと書いている建設会社もある。

ただ、中国での手抜き工事のニュースが沢山、本当に沢山表面化しているだけに、外的要因による破損率ももっと高いかもしれない。さらに手抜き工事による事故は、減らすのはかなり大変だろう。


夏の暑い時期、台風が通った後など風が強い時期に行くときは、気を付けたほうがよさそうだ。


(*1)中国の記事の「自爆率」0.5%は、外部要因も含む破損率かとも思ったが、不純物のNiSについて詳しく書いた上で使っているので、内部要因だけの「自爆」、自然破損(spontaneous breakage)だろう。
(*2)食器やインテリアを含まない、板ガラスだけの値かもしれない。


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