深海潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」|ジェームズ・キャメロン氏、マリアナ海溝最深部へ単独到達
映画監督で探検家のジェームズ・キャメロン氏が3月26日、海洋最深部であるマリアナ海溝のチャレンジャー海淵の着底に成功した。ナショナル ジオグラフィックの探査チームによると、水深1万898メートルに達したのは現地時間午前7時52分(日本時間午前6時52分)。現地時間の同日正午頃、 無事に再浮上し帰還した。
映画監督にして、ナショナル ジオグラフィック協会所属の探検家のジェームズ・キャメロン(James Francis Cameron)が、マリアナ海溝へ潜り、単独ではじめて最深部の水深10,898mに到達した。(キャメロン監督については、わざわざ書かなくていいかな)
1960年に、「トリエステ号」で潜ったジャック・ピカール(Jacques Piccard)とドン・ウォルシュ(Don Walsh)に続く、52年ぶりの快挙。
深海1万メートルに行ったのはわずか3人なので、月よりも遠い深海底と言われる。(月面に立った人間は12人)
目を引くのが、深海潜水艇「ディープシー・チャレンジャー(Deepsea Challenger)」の大きさと形、設計だ。
「DEEPSEA CHALLENGER」
全長:7.3m
空中重量:11.8トン
耐圧殻直径:1.22m(内径:1.09m)
速力:3ノット(スラスター12基)
最大潜航時間:56時間(1名)
潜水記録:10,896m (2012/3/26)
(Deepsea Challenger - Wikipedia(en)

(DEEPSEA CHALLENGE Expeditionより)(イラスト:Acheron Project Pty. Ltd.)
「ディープシー・チャレンジャー」は、全長7.3m(多分、アンテナなど含む)。
本体の縦と横は2~3mくらい?で、折りたたみ式の小さな翼のようなスタビライザーや、採集用やカメラ用のアームなどが付いている。
地下鉄に乗ったらそこに詰まってて、車両の長さの半分弱を占めている感じ(笑)
重量は11.8トン。耐圧殻も含めてほとんどがオーストラリア製で、シドニーの工場で作られた。
トリエステ号の副操縦士だったドン・ウォルシュは、カナダの新聞のインタビューの中で、トリエステ号と比べて「ライト兄弟の最初の飛行機とボーイング747のようだ」と感想を述べている
ドン・ウォルシュは80歳(ジャック・ピカールは2008年に死去)、この「DEEPSEA CHALLENGE」ではキャメロン氏のアドバイザーをしている。(参照:en)
「トリエステ」との大きさ比較。
母船「マーメイド・サファイア」のクレーンで海面に下ろされた後、沈降速度5ノット(分速150m)と潜水艇としてはかなり早い速度で、直立した状態で、回転しながら潜っていく。(*1)
耐圧殻は直径1.22m、厚さ6.4cmの鋼鉄製(高張力鋼?)で、内径はわずか1.09m。
狭い耐圧殻の中に、酸素ボンベなど生命維持装置、各種機材やケーブル、カメラ、食料や水がある。キャメロン氏は身長188cmと背が高いこともあり、手や足を伸ばすことは出来ない。(参照:en)
「GANTZ」の黒い球(1.35m)とほぼ同じ大きさなので、ガンツの中の人をイメージすればだいたい当たる(笑) (参考画像)(*2)
大洋底の深さを越えて、マリアナ海溝に入っていく。
マリアナ海溝で、もっとも深いチャレンジャー海淵は、長さ11.3 km・幅1.6 kmほど(だいたい品川駅~上野・鶯谷駅くらい)。(11°22.4'N, 142°35.5'E)(wikipedia:en)
DEEPSEA CHALLENGEでは、他に2台の無人潜航艇「ランダー(LANDER)」(全長3m、電話ボックスくらい。重量455kg)を使っていて、ディープシー・チャレンジャーの潜航の数時間前に1台を潜らせている。その発するビーコンを目指すので迷うことなく、ゆっくり回転しながら潜ることで、ぶれにくく目的地へ向かって一気に潜っていく。
ランダーはただの誘導装置ではなく、複数のカメラ等を積んでいてディープシー・チャレンジャーと連携して運用をする。これが計画の、もう一つの肝だろう。
チャレンジャー海淵の底まで120mをきるとランディング(着底)の準備にはいる。バラスト(重り)を少し投棄して沈降速度を落とし、スラスター(推進装置)の電源を入れて、ライトとカメラをチェック。中性浮力とってスラスターをゆっくりと操作し、現地時間午前7時52分(日本時間午前6時52分)に水深10,898mに到達した。
キャメロン監督は、「底についた(AT BOTTOM.)」と母船にテキストメッセージを送った。
そういえば映画『アビス』でも、エド・ハリス演じる主人公が、深海用の液体呼吸式潜水服を使って1人で潜り、深海底に着いた時に「TOUCHDOWN」とテキストメッセージを送っていた。
キャメロン監督も、頭の片隅で思い出していたんじゃないだろうか。
片道切符じゃないのは分かっているし(笑)
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深海底まで、2時間36分。かなり早い。
移動時間が短ければそれだけ、海底での探査や撮影に時間を使うことが出来るので、スピードを重視した設計となっている。予定では、分速150mで一気に潜って、1時間半で到達するつもりだったそうだ。
4つの船外カメラの解像度はこれまでの深海撮影カメラの10倍で、ランダーにも同じ3Dカメラが積まれている。
2mのLEDライト群は30m先まで照らすことが出来る。
それでも、深海底での限られた時間で、狭い窓から生き物の姿を探すことは難しい。そこでランダーには生き物を呼び寄せるための、いわゆる撒き餌(chemical bait)をする装置がついている。
近くにいなかったか、エサが口にあわなかったかな?
エビに似た小型の端脚類しか見なかったそうだ。
今回は残念ながら、油圧系統のトラブルが起こり充分なサンプルは採集できず、6時間の探査予定を3時間で切り上げている。
450kgのバラストを投棄して浮上開始。回転しながら浮上して、わずか70分ほどで海上に到着。
もしパイロットに異常があっても海上からリモートでバラストを投棄することが出来、さらに一定時間塩水に浸かっていると自動的にロックが外れてバラストを切り離して浮上する安全設計。
共同設計者で深海カメラマンのロン・アラム(Ron Allum)によると、この後、数週間のうちに複数回の潜水をするそうだ。
DEEPSEA CHALLENGE – National Geographic Explorer James Cameron's Expedition
気になるのは、この実体験と、撮影される素材が今後のキャメロン監督の映画にどのように反映されるか。
母船「Mermaid Sapphire」到着後の記者会見でそこに少し触れていた。(Deepsea Challengeのツイッターより)
映画と探検:きっと、私はその2つを平行して行える。じきに『アバター2』&『3』へと注意を向けていくだろう。On Film & exploration: "Hopefully I can do the 2 in parallel. Going to be turning my attention to Avatar 2&3 shortly." #deepseachallenge

(Twitter / @DeepChallenge: On Film & exploration: ...より)
惑星パンドラの、さらに森の奥深い何かに潜っていくのかな?
キャメロン監督は、3月30日、31日に映画『タイタニック 3D』のキャンペーンのため来日する。(参照)
さらに深い話を聞きたいものだ。
キャメロン監督は、今回の深海10000m探検を含むドキュメンタリーを、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルのTVスペシャルと、3D映画を計画している。年末から年始を予定している。(参照:en)
(追記20120402)
ディープシー・チャレンジャー号のコストは約2370万ドル(約20億円)らしい。
Mega Millions宝くじの一等賞金が6億4000万ドル(約531億円)(参照)が出たことのNHKテレビニュースで、27隻分と言っていた。
(追記ここまで)
(*1)一般的な潜水艇は沈降速度は2〜3ノット。
(*2)「GANTZ」が分からない人は、押入れの中段にすっぽり入る球体の、その中に入るイメージ。
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