中国の有人深海潜水艇「蛟竜号」メインパイロットのインタビュー。5000m級潜水試験で露呈した問題点。
中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜号」のメインパイロットの叶聪(葉聡)のインタビューが、4月21日の人民日报海外版に載っていた。
“蛟龙”将倾情演绎马里亚纳海沟传奇
— 专访中船重工第七〇二研究所水下工程研究开发部高级工程师叶聪(人民日报海外版)
「"蛟竜” マリアナ海溝での伝説を予感 ー 叶聪インタビュー(中船重工第702研究所 水下工程研究開発部 シニアエンジニア)」(ちょっと意訳)
叶聪(葉聡)は、蛟竜号設計製造開発の中心組織・中船重工第702研究所のエンジニア。蛟竜号の設計から製造に関わり、メインパイロットでもある。1979年生まれ。通称「最牛潜航員」(誉め言葉)。
今年7月に予定されている、マリアナ海溝での7000m級潜航試験についてと、昨年7月の5000m級潜航試験で見つかった蛟竜号の問題点について語っている。
7000m級潜水試験については、潜水試験のやり方とか抱負とか。
最後に、マリアナ海溝は他国の排他的経済水域なので、国際的な慣例に従って永久に残る何かを置くべきではない、といったやり取りがある。海外版だし、例の南シナ海の件から、邪推されないよう気にしているのだろうか。
目をひいたのが、昨年の5000m級潜航試験のときのトラブル。
まず、蛟竜号にはGPS(海上用)が付いていなかった。(おいおい・・・)
潜航後に海が荒れたため、母船「向阳红09」は嵐の中、浮上した蛟竜号を長時間捜索しなければならなかったそうだ。
帰港後に、蛟竜号にGPSシステムを導入し、現在テスト中。(測位衛星「北斗」を使った中国版GPSかどうかは書かれていない。)もう見失うことはないだろう(多分)。
ーー
5000m級潜水試験では、電気系統のトラブルがいくつか報道されている。
潜水試験の時に、潜水後に電気系統の絶縁アラームが鳴ったが、葉聡は蓄電池関係のトラブルではないと考え潜航試験を続行し、無事成功させたそうだ。
インタビューの直前まで、同じトラブルを起こさないため検査作業をしているから、まだ完全に解消はされていないのだろう。問題の解決に全力を尽くすと言っている。
蛟龙号には、110kW·hの酸化銀亜鉛電池が搭載されている。
(しんかい6500は、当初は酸化銀亜鉛電池が搭載されていたが、2004年にリチウムイオン電池に切り替えられた。)
この酸化銀亜鉛電池の異常な発熱が問題となっている。
酸化銀亜鉛電池はエネルギー密度が大きいが、充放電可能な回数が少ないことや寿命が短いこと、そして発熱によってガスが発生した場合、電池ケースを壊す可能性がある。
3000m級潜水試験の時にトラブルがあって、5000m級潜水試験の前に丸ごと交換したそうだ。
その潜水試験前にも、向阳红09の船上でメインバッテリーボックスから油漏れが発見されるなどトラブルが報道されている。
蛟龙号には新しい電池を搭載したと言っているが、次は大丈夫だろうか。電気系統まわりがアキレス腱になっているように感じられる。
リチウムイオン電池に載せ替えないのかな、と思って少し調べてみた。
2012年に、崔维成(崔維成)(蛟竜号の副第一設計士・702研究所副所長)が発表した「“蛟龙”号载人潜水器关键技术研究与自主创新(“蛟竜”号有人潜水艇のキーテクノロジーの研究と技術革新)」(pdf)によると、リチウムイオン電池の研究開発は、中国国産の4500m級有人深海潜水艇の研究開発計画に含まれているそうだ。
(削除・追記。耐圧殻について、ちょっと誤読。書き直すつもり。)
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