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2012年7月

2012年7月27日 (金)

おかしな「世界のコーヒー消費量」の図と説明|インフォグラフィックの功罪

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GIGAZINEさんとこの「「世界のコーヒー消費量」を図解、一番たくさん飲む国と日本との差は?」の記事の内容について。

世界のコーヒー消費量第一位は1人当たり年間2844杯を消費するルクセンブルクで、これによると1人あたり1日約8杯のコーヒーを消費している計算になります。

「世界のコーヒー消費量」を図解、一番たくさん飲む国と日本との差は?より)

元ネタは「トリップアドバイザー」という、旅をテーマにしたインフォグラフィックス専用サイトの「世界のコーヒー消費量 TOP30」という記事。
(当のイラストは、GIGAZINEの記事かこのトリップアドバイザーの記事で確認してください)

コーヒーという一般的な飲み物で、ルクセンブルクの人々が他の国々を大きく引き離して、2倍以上も飲んでいるという解釈は、違和感ありまくりです。

2位以下の国々の消費量は、1位〜2位の差に比べれば大きくは違いません。



しかしグラフのすぐ下にある、1位、2位、3位の表彰台のイラストを見ると、左に大きく1日を示す時計があり、ルクセンブルク国民が毎日毎日8杯近いコーヒーを飲んでいると、直感的にイメージしてしまいそうです。

記事を読んだ人たちのネットでの反応を見ると「ルクセンブルク、どうなっている」、「一日中飲んでいるの?」という誤解もされています。
他にも、二次災害紹介記事が出てきました。

世界のコーヒー消費量、1位の国は1人あたり1日約8杯飲んでいる!?(マイナビニュース)
【トリップアドバイザー】「世界のコーヒー消費量 」のトリップグラフィックスを公開(MSN産経ニュース)

コーヒー豆の輸入・製造販売の、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)のサイトの説明を読んでみましょう。

世界の一人当たりの消費量を見ると、1位はなんとルクセンブルク。1年間に国民一人当たり2740杯ものコーヒーを飲んでいることになります。これは、日本やアメリカのおよそ8倍。ルクセンブルグはドイツ、ベルギー、フランスに囲まれた西ヨーロッパの小国ですが、嗜好品に掛かる消費税が低く、周辺諸国からの買い物客が多いことが、この数字に貢献しているようです。

世界と日本のコーヒー豆事情|AGFより)
(赤字強調は、ブログ管理人による)

説明はいらないですね。

データや解釈を視覚的に表示するインフォグラフィックは、分かりやすく伝えることが出来るツールです。

しかし、よく分かっていない人が作ってしまうと、その人の間違いも分かりやすく伝えられてしまうという、これまた“とても分かりやすい”例でした。

同時に、こういう変な情報を提供している情報サイトって、そのサイトの他の情報の信頼性は???、と感じさせてしまう例ですね。
せめて、過去データを参照するとか、ちゃんと裏付けをとってから載せればよかったのに。


多分、記事を読んで違和感を感じた人は多いと思います。
その違和感が重要。

記事を書いた人は、違和感を感じなかったか、感じてもスルーしてしまったのでしょう。



メモ
データの元となった資料は、International Coffee Organization発行の「Monthly coffee market report(2012年1月)」だそうです。
ICOのサイトに、その月の資料が見あたらないのですがそれはともかく。

ルクセンブルクでの、コーヒーの一人当たり消費量は、2007年は16.65kg(参照)、2008年は6.8kg(参照)。今回の記事によると、2011年は28.44kg。

2008年が減ったのは世界金融危機の影響。2011年に、2008年以前と比べても大きく増えているのは、ユーロ安で輸入品の値段が上がったため、消費税分を節約しようとルクセンブルクで買う人や、買う量が増えた。そういうことじゃないでしょうか。



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2012年7月25日 (水)

マテ茶と放射能

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マテ茶関係の記事を書くなかで、冗談で「マテ茶 放射能」と検索してみたところ、マテ茶が放射能にきくという話があることにびっくり。

まじめに取り組む気はないので、ネタ程度のメモで(笑)

要するに、放射性核種のセシウムやストロンチウムが、カリウムやカルシウムに化けて体内に取り込まれるから、ミネラルたっぷりのマテ茶をたくさん飲めば予防になるという説らしい。

マテ茶の「茶葉」のミネラルは「お茶(浸出液)」にはほとんど出てきません。(参照

ミネラル・サプリメントにしとけば?



これが、ポリフェノール(カテキンも含む)の抗酸化作用が、被曝によって作られるフリーラジカルに対抗できるという説明なら(どれだけ効果があるか分かりませんが)、まだマシなのですが・・・

それなら、緑茶の方が抗酸化能は上という研究結果が出ています。
FRAPでもORACでも、緑茶の方がマテ茶よりも抗酸化能が高いという結果が出ています。(参照

それにしては、緑茶を飲めばその抗酸化作用で放射能によるDNA損傷を予防できるという話は聞きません。もっぱら、緑茶の放射能汚染の話ばかり。

でも、マテ茶は汚染されてないと、なぜ思いますか?

2003年に、茶(tea)とマテ(yerba mate)と、茶畑(マテ畑)の137Ceと40Kが調査されています。

137Cs contamination in tea and yerba mate in South America(南アメリカの茶とマテのセシウム137汚染)

一言で書くと、「原発事故による放射性セシウムで汚染されています」。
137Csの結果は、マテの葉で 〜6.4 Bq/kg、土壌で 3.5〜6.2 Bq/kg 。

2003年の研究なので、福島第一原発事故ではなく、チェルノブイリ原発事故によるものと推測しています。
チェルノブイリ事故後に、南米で何か対策がとられていたかは分かりませんが、現在もあって不思議はないでしょう。


まったく心配ない結果です*が、1Bq/kgですら口にしたくないという人(*)は、マテ茶は避けた方がいいかもしれません。
飲料茶換算だと0.1Bq/kgくらいになるから大丈夫かな?(笑)
(*)ずっと「非実在青少年市民」だと思っていたけれども、本当にいるらしい。



ところで、マテ茶がよく飲まれている中東のシリアで、マテ茶に放射能汚染疑惑があったことをご存じでしょうか?
(参照:シリアで流通しているマテ茶に放射能汚染の疑惑!

後に、放射能汚染は無かったという政府発表があったそうです。
(参照:シリア:マテ茶に放射能汚染なし 経済貿易発表

日本政府の公式発表を、嘘だ隠蔽だ信じられないという方は、アサド政権(2000年〜)のシリア政府の公式発表は、どう受けとるのでしょう。

もちろん単純に比較は出来ませんが。



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2012年7月24日 (火)

マテ茶と健康|(8)まとめ、効能や副作用 | 雑感

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マテ茶の成分や、効果や副作用について、いろいろ書いてきたことを軽くまとめます。

(注)一連の記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。

うちのブログでは、“販売業者は都合のいい書き方を好む”という批判的視点で、第三者の研究結果をもとに検証を試みてきました。

簡単に書くと、マテ茶の特徴は「コーヒーと緑茶のいいとこ取りの成分で、カフェイン少なめ」。

個々の成分を見るとコーヒーや緑茶と比べて劣る部分がある一方、コーヒーよりカフェインが少ないことや、緑茶よりサポニンが多いという優れた部分もある。
いい感じにいろいろな成分を含有している。


以下、簡単なまとめ。
(日本マテ茶協会の説明文や、販売業者の広告内容と食い違う部分もあります。)

各項目の後についている()括弧は、詳細を書いている連続記事の番号です。詳しくはそれぞれの記事をご参照ください。(下にリンクを載せています)
ブログ管理人個人の見解ですが、主に外国(特に南米)の研究結果(マテ茶は100%輸入ものなので)をもとにしています。


成分の特徴

・緑茶と比べて、サポニンが多く含まれている。(7)
・緑茶と比べて、ポリフェノール(カテキンを含む)は少ない。ただしカテキンは少ないが、カフェ酸やクロロゲン酸を多く含んでいる。(7)(5)
・緑茶と同程度かやや劣るくらいの、抗酸化能力がある。(7)
・コーヒーと比べて、カフェインが少ない。煎茶と同程度。(5)
・クロロゲン酸は、カフェインよりも多い。(5)
・テオブロミンは、カフェインの半分とけっこう多い。(5)

ミネラルと食物繊維については、後述。
ビタミンについては、詳しくは調べていないので特に触れていません。(*1)

緑茶に、カフェ酸とクロロゲン酸、テオブロミンなどコーヒーやカカオに多い成分を加えた感じと書くと、ちょっと無茶すぎるかな(笑)(*2)

効能・副作用

・常飲することで、LDLコレステロール値を下げ、HDLコレステロール値を上げる可能性がある。(7)
・強い利尿作用(個人の感想です)。
・コーヒーよりは穏やかな、中枢神経興奮作用。
・気管支拡張作用(個人的には感じられない)。

・胃腸に合わない人もいるようだ。(ネットでの反応から)

日本で適量を飲む程度で考えています。
参考までに、アルゼンチンでの、マテ茶「茶葉」の一人当たりの年間消費量は6kgです。

注意点

・カフェインなどアルカロイド類の摂取量に注意。(5)
 妊婦や小さいお子さん、併用不可の薬剤を飲まれている方は特に注意すべきだろう。
・ミネラルや食物繊維は、「茶葉」には比較的に多いかもしれないが、「お茶(浸出液)」にはごくわずかしか含まれない。(2前)(6)

・マテ茶の「お茶」を(日本で適量を)常飲するだけでは、痩せるとは思えない。(2前)(2後)(3)
・日本語の情報が少ないので、微量成分やアレルギーなどの情報が少ない。また新しい研究結果があっても伝わりにくい。
・製品の品質に関する情報が少ない。(輸入販売業者による)

販売業者による広告や関連情報の疑問点については、これまでの記事でいろいろと書いてきたのでここでは繰り返しません。
(*)“販売業者は都合のいい書き方を好む”という批判的視点をもって、調べざるをえなかった所以。

製品を買うときのおすすめ

・「茶葉」製品。
 ティーバッグ製品は、「お茶」に含まれる有効成分が全体的に少ない。(*3)
・マテ茶の製造者や加工方法など、詳しい説明がある製品。(信頼できる業者であることが前提)

・おかしな広告をしていない業者の製品。

出来れば、「有機」マテ茶を薦めたいのですが、「有機」だから必ず良いとは言えないので、その評価が難しい。
似た例では、マテ茶の伝統的製法がそのまま健康リスク要因となっているそうです。(3)


うちのブログでは、マテ茶を応援しています。(マジで(笑))


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(wikimedia commons)

マテ茶と健康|(1)序
マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(前編)
マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)
マテ茶と健康|(3)発がん性リスク
マテ茶と健康|(4)マテイン?カフェイン?
マテ茶と健康|(5)含有量:カフェイン、テオブロミン、テオフィリン【修正版】
マテ茶と健康|(6)含有量: ミネラル(お茶(浸出液))
マテ茶と健康|(7)効能:ポリフェノール、サポニン


(*1)記事数が増えすぎて、手が回らなかった。
(*2)うちでは、マテ茶3~4gと煎茶2gの茶葉をまぜて、500ccのマテ&緑茶ブレンドを作っています。カテキンとフラボノイド狙い。
(*3)インスタント・マテ茶は、使う気にならないので記事では特に触れていません。その他、茶葉とティーバッグ以外で使ってみたいマテ茶製品はありますが、それはまた機会があれば。

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(wikimedia commons)


雑感

記事を見た人の中には「こんな誰得な長文書いて、こいつ、何やってんの?」と思われた方がいるかもしれません。奇遇ですね、私もです。

ホント、なにやってんだろ俺・・・(笑)

最初は、次のワールドカップと次のオリンピックはブラジルだから、ポルトガル語の勉強にいい機会だと思って、関連記事や資料を調べてメモしてただけなんですが。

それと、コカコーラの『太陽のマテ茶』の広告の食物繊維。
マテ茶の広告には違和感を感じる部分が多くて、海外情報をいろいろ調べていると、どうも日本語での説明文や広告内容と食い違っていたりずれている所がいろいろ見つかります。

単に、ネタを消費して、釣られたコメントしてるだけなら笑い話で終わりなのですが、これが飲食物だとちょっと・・・

じゃあ、日本語情報を増やしてみようかと調べたメモをまとめて書いていたら、これが止まらない(笑)
最初は、科学的な研究結果をまとめた新しいレビューを簡単に訳して記事2〜3本で済ませるつもりが、結局10本近い大作に(笑)

自分の知らなかった事を、「ネットは広大だわ」とか呟きながら色々と調べていくのは、それはそれで楽しいですが、・・・なにやってんだろ俺(苦笑)



一連の記事で書いた内容は、科学的な研究結果を主に参照しています。
なるべく参照数の多い論文や研究者を選んだつもりですが、専門家からすればメインストリームではない些末なものを使っている可能性を否定はしません。
これらは今後も、追試や検証、さらなる研究が行われるものなので、新たな情報が出てくるかもしれません。また輸入販売業者から製品の成分詳細が出てくるかもしれません。

紹介した研究結果は、私個人の視点でピックアップしたものです。
どこの馬の骨か分からない一個人の言うことを、頭っから信じることはせず、ご自身で調べてみることもお薦めます。その時に、頭の片隅にでも置いておいてもらえれば幸いです。



メモ
最初に「マテ茶と食物繊維」の記事を書いた後、マテ茶を販売するネットサイトがかなり増えました。
『太陽のマテ茶』効果でしょう。本当に増えました。
とんでもない説明広告を載せているところはまだまだあるのですが、その一方で、マテ茶協会の説明文など既存情報のコピペではない、それ以上のちゃんとした説明を載せているサイトも出てきました。

次は、マテ茶茶葉の品質表示が当たり前になって、付加価値がついて差別化が進むことを期待しています。

うちのブログでは、マテ茶を応援しています。



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(wikimedia commons)

2012年7月23日 (月)

マテ茶と健康|(7)含有量:ポリフェノール、サポニン

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(wikimedia commons)

マテ茶の広告によると、マテ茶には、ポリフェノールが緑茶よりも多く含まれているそうです。

東邦大学薬学部による2011年の研究「マテ茶に含まれるポリフェノール,カテキン,およびカフェインの含量分析に関する研究」によると、ポリフェノールは緑茶より1.3~1.5倍高かったが、カテキン4種は少なかったとされています。
:ただし、この論文には「マテ茶のポリフェノール,カテキン4種,カフェイン含量をそれぞれ分析した。」と書いてあるので、ポリフェノールとカテキンは区別して分析したのでしょう)

カテキンはフラボノイドの一種で、広義にはその誘導体となる一連のポリフェノールも含み、この意味での使用例の方が多いそうです。(wikipedia
実際、マテ茶についての論文を調べていると、カテキンをポリフェノールに含め、抗酸化物質としてまとめて書いているものが多いと感じられました。

ここでは、ポリフェノールにカテキンも含まれるとして書いていきます。



マテ茶、緑茶と紅茶に含まれている主なポリフェノール一覧(下図)を見てみると、マテ茶にはカフェオイルキナ酸やフェルロイルキナ酸などクロロゲン酸類(コーヒー豆やカカオ豆に多く含まれる)が特に含まれ、緑茶にはカテキン4種などいわゆる茶カテキンが特に含まれています。

緑茶とマテ茶のポリフェノールは、種類がちょっと違うことが分かります。

201207mate0701
Yerba Mate Tea (Ilex paraguariensis): a comprehensive review on chemistry, health implications, and technological considerations.(ProMed)
(マテ(Ilex paraguariensis):化学、技術的ポイントについての包括的な検証)

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(wikimedia commons)



マテ茶と緑茶、ワイン(赤・白・ロゼ)とオレンジジュースのポリフェノール量を比較してみると、マテ茶よりも緑茶の方がかなり多いという分析結果が出ています。
(サンプルや分析方法によって、また違った結果も出るかもしれません。(*1))

もしかすると、広告でよく目にする「マテ茶には緑茶よりもポリフェノールが多い」という説明は、最初に書いた東邦大の研究のような、カテキンを分けて分析した研究結果を根拠にしているのかもしれません。

201207mate0702
LC/MS characterization of phenolic constituents of mate (Ilex paraguariensis, St. Hil.) and its antioxidant activity compared to commonly consumed beverages

重要なのは、ポリフェノールとかカテキンという区分よりも、マテ茶や緑茶がもっている抗酸化能力です。
この論文では、FRAP試験の結果から、マテ茶よりも緑茶の方が抗酸化能力が高いことが示されています。

ORAC指数(下表)でも、マテ茶よりも緑茶の方が値が高くなっています(「お茶」(表の2列目)と「茶葉(DL)(表の3列目)」のどちらでも)。
ただしGAE(没食子酸基準 (equiv gallic acid))(表の1列目)では、マテ茶の方が値が高くなっています。

201207mate0703
Polyphenolic Compounds, Antioxidant Capacity, and Quinone Reductase Activity of an Aqueous Extract of Ardisia compressa in Comparison to Mate (Ilex paraguariensis) and Green (Camellia sinensis) Teas (PubMed)

細かい解釈は専門家に任せるとして、マテ茶は、緑茶に勝らずともそれほど劣らないと考えれば良さそうです。

201200mate09
(wikimedia commons)


マテ茶には、サポニンが多く含まれています。

緑茶や烏龍茶にも多く含まれています。
比較は簡単で、同じ量の茶葉を使って「お茶」を作って、放置して、適度に冷えたところで思いきりシェイクシェイク。
よりよく泡だったお茶の方が、より多くのサポニンを含んでいます(暴言(笑))。

逆に言えば、ろくに泡立たない「お茶」では、サポニンの量は期待できないような気もします。(未確認)
茶葉を使っていれたグリーン・マテ茶は、よく泡立つことをご存じの方も多いでしょう。
緑茶と比較すると、マテ茶の方がややサポニンが多いようです。

Determination Of Saponin And Various Chemical Compounds In Camellia Sinensis And Genus Ilex.(pdf)
(飲料メーカーのレポート)

マテ茶の効能のひとつとして、LDLコレステロール値が下がり、HDLコレステロール値が上がったというものがあります。これは、高脂肪食を与えたマウスを使った実験だけでなく、ヒトの被験者の研究でも確認されています。
マテ茶抽出物を使った研究結果には、胃内容物の排出速度が遅くなり摂取エネルギー総量が減ったために体重が減少したものもありますが、満腹感が続くことだけが体重減少と健康に影響しているわけではなさそうです。
(参照:マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)

大豆サポニンやゴボウ茶などでもよく知られているように、サポニンにはLDLを下げてHDLを上げ、動脈硬化を予防する効果があるので、マテ茶の例もこのサポニンの影響があるのではないでしょうか。

これらファイトケミカルの分量と割合が、マテ茶を特徴づけていると感じられます。


201200mate12
(wikimedia commons)



マテ茶の注目すべき特質としては、
・コーヒーと比べて、カフェインが少ない。
・緑茶なみのポリフェノールを含む。
・緑茶と比べて、カテキンは少ないが、テオブロミンとテオフィリンを多く含んでいる。
・テオブロミンの量はカフェインの半分と、けっこう多い。
・緑茶と比べて、サポニンが多く含まれている。
・ミネラルや食物繊維は、「茶葉」には多いかもしれないが「お茶」にはごく微量しか含まれない。

と、コーヒーと緑茶のいいとこ取りの成分の効果があり、カフェイン少なめというところではないでしょうか。

注意すべき点としては、
・販売業者の広告表現の中に、誤解を招きやすい表現がけっこう多い。
 (コカコーラの『太陽のマテ茶』という大型商品が出て、過渡期だから?)
・マテ茶の研究は、アルゼンチンなど習慣的に大量に消費する(例:アルゼンチンの一人あたりのマテ茶消費量は6kg/年)地域の住民を対象としたものが中心。日本で、少量を飲む場合にそのまま反映させることは出来ない。

宣伝文句に惑わされていない場合でも、
・コーヒーより少ないとはいっても、カフェイン等のアルカロイド類はけっこう多く含まれている。
・併用不可の医薬品に、注意をしなければならない。

・日本の一般的な食生活での、所謂、食べ合わせが悪いなど、充分な調査はされていない。


マテ茶は、知名度の低い健康茶から、一般飲料としての無糖茶に脱皮しようとしているところです。

コカコーラの『太陽のマテ茶』という大型商品がちょっと残念な広告(参照)で売っているので、類友な残念な宣伝文句と売り方が広まっているように感じられます。

そこんとこ、いまのマテ茶は、健康茶の売り方の悪いところと、一般飲料の売り方の悪い所が合わさっているのではないでしょうか。
まだまだ、これから。




次は「まとめ」と、個人的な正直な感想の予定です。


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。


(*1)正直なところ、所謂“御用学者”に依頼すれば、残念ながら、都合のいい結果を出すことは残念ながら出来てしまいそうです。




マテ茶と健康|(6)含有量: ミネラル(お茶(浸出液))

201200mate04
(wikimedia commons)

マテ茶について、今のところ、販売業者のサイトでは触れられていない研究結果の紹介から。

2011年に発表された論文では、アルゼンチンで、マテ茶を日常的に飲んでいる女性の骨密度を、飲んでいない女性と比較して調べたところ、飲む習慣のある女性は骨密度の数値が有意に高いことが報告されています。

Yerba Mate (Ilex paraguariensis) consumption is associated with higher bone mineral density in postmenopausal women(ProMed)
(マテ茶の消費量は、閉経後の女性の骨密度の高さと関係がある)

概略は次の通り。

アルゼンチンで、日常的にマテ茶を飲む習慣のある女性と習慣のない女性の食生活を詳しく調査し、腰椎および大腿骨頸部の骨密度(BMD)を調べたところ、マテ茶を飲む習慣のある女性の骨密度は、腰椎で9.7%、大腿骨頸部で6.2%高い値を示しました。
似た研究は各地で行われています。英国での紅茶についての研究では腰椎で5%高い値が、中国での中国茶についての研究では腰椎で4.3%、大腿骨頸部で4.7%高い値が出ています。
今回のマテ茶についての研究はそれらより高い値です。
論文ではその理由として、マテ茶に含まれるカルシウムとフラボノイドが影響しているのかもしれないとしています。

元の論文を読んでみると注目すべき点が2つあります。

論文では、紅茶や中国茶だけでなく、日本の緑茶についての研究結果も紹介されています。
緑茶を日常的に飲む習慣のある女性は、飲まない女性に比べて腰椎の骨密度が10%高いと、マテ茶以上の数値が書かれています。
日本でニュースにもなっていて、フラボノイドの効果かもしれないそうです。(参照:お茶が高齢女性の骨密度低下を抑制(2007.11.12掲載)

次に、アルゼンチンでのマテ茶の一人当たりの年間消費量は6kgと書かれています(コーヒーは0.7kg/年、茶(tea)は0.1kg/年)。
伝統的な飲み方は、容器に茶葉をたくさん入れて作り、かけらが混じるような飲み方なので、茶葉もいっしょに飲んでいるのでしょう。
日本での一般的な飲み方では、この結果をそのまま当てはめることは出来ません。




カルシウムが出てきたので、ミネラルについて。

マテ茶の販売サイトの広告を読むと、「ミネラルが豊富」とよく書かれています。
緑茶の何倍、烏龍茶の何倍と書かれているので、同じお茶を飲むなら緑茶、紅茶、烏龍茶よりマテ茶を飲みましょうという意味なのだと思いますが、中には「日常の欠乏しがちなミネラルの補給にマテ茶を~」というような、違和感を感じさせる宣伝文句があります。

カルシウムが豊富、マンガンが豊富、亜鉛が豊富と良いことずくめのように書いているけど・・・

「茶葉」に含まれるミネラルって、そんなに簡単に「お茶(浸出液)」に溶け出すものでしたっけ?

(以下、マテ茶の茶葉は「茶葉」、浸出液は「お茶」と括弧付きで書いていきます。)

201200mate11
(wikimedia commons)


昨年以前(『太陽のマテ茶』発売以前)からマテ茶を扱っている、所謂“老舗”の複数の販売業者のサイト(参照)には、「カルシウム(792mg)・・・・亜鉛(5.6mg)」と書かれています。(*)
煎茶のカルシウムが300mgなので、「茶葉」に含まれる量を比較したものですね。

どこもだいたい同じ数値を使っています。(日本貿易振興会(JETRO)が2002年に発行した冊子『マテ茶を知っていますか・・・?』(検索|JETRO)が引用元らしい。)
(*)この分析数値が載っているから、所謂“老舗”という意味ではありません。念のため。

では、マテ茶の「お茶」には、カルシウムやマグネシウム、亜鉛などミネラルはどのくらい含まれているのでしょう?

日本ではマテ茶は100%輸入ものなので、海外の分析結果が参考になります。
世界三大飲料のひとつだけあって、多くの研究論文が見つかります。(*2)

たとえば、ブラジルとスペインで店頭販売されている複数のマテ「茶葉」の製品を使って、「茶葉」と「お茶」に含まれるミネラルが分析されています。
(下表の項目は、左から、ミネラルの種類|「お茶」(ブラジル)|「茶葉」(ブラジル)です。続いてスペインの商品の「茶葉」・・・ ページ幅の制約から右側をトリミングして割愛しました。

201207mate0601
Yerba maté: Pharmacological Properties, Research and Biotechnology (pdf)
(イェルバ・マテ:薬理学的特性、研究とバイオテクノロジー)

ブラジルで売られているマテ「茶葉」に含まれるミネラルは、カルシウム(630mg)、マグネシウム(490mg)、リン(90mg)、鉄(18.5mg)、銅(0.89mg)、亜鉛(4mg)、クロム(0.15mg)(いずれも茶葉100gあたり)です。
ジェトロのデータと比べても極端には違いません。若干違うのですが、前の記事で、製品によりカフェイン等含有率が違う事を紹介したように、分析サンプルの違いだと思われます。

ちなみに、マテ茶の本場の南アメリカと輸出先との違いか、スペインで売られている製品はほぼ全てのミネラルで低い値が出ています。

201200mate07
(wikimedia commons)


続いて本題の、マテ茶の「お茶」に含まれているミネラルを見てみましょう。(上の"Table.4"の1列目)

研究で使われた「お茶」は、シマロン(chimarrão)という茶葉をたくさん使う伝統的な飲み方を想定しています。
80℃のお湯1リットルに70gの大量のマテ茶「茶葉」を入れて作り、その1リットルの「お茶」に含まれるミネラルを分析しています。(参照:pt)(*3)

カフェインの含有量を調べた記事と同じく、
日本で、一人分のお茶で使われるだろう量の“茶葉3g”で再計算してみます
(使うお湯の量は、普通のお茶の量であれば150mlでも500mlでも、溶け出すミネラル分はそれほど変わらないと仮定)

マテ茶のお茶(浸出液)に含まれるミネラル
茶葉3gあたり(mg)1日摂取必要量に対する割合
カルシウム1.886 0.31%
マグネシウム8.057 2.69%
リン1.757 0.25%
0.014 0.12%
マンガン1.457 48.57%
0.012 0.75%
亜鉛0.009 0.07%
クロム0.002 0.01%
アルミニウム0.147 -

「お茶」だけだと、1日の摂取必要量のごくごく一部。(**) (ノ∀`)アチャー

もし、この「お茶」に、「茶葉の欠片」が3.3%強(0.1g相当、計算しやすい値として)が混入していたとしても、大部分のミネラルは1日摂取必要量の1%未満です。

(**)マンガンだけ突出して大きい値となっています。スペインで売られている製品でも同じ傾向。不可解。Mnの1日の摂取上限摂取量は10mgと設定されているけど、大丈夫???(専門家の再評価待ち)


もし、マテ茶の「お茶」を毎日のミネラル源のひとつと考えたいなら、アルゼンチンの例のように、20g近くの「茶葉」をたっぷりと使ったマテ茶(茶葉の欠片もたっぷりと)を、1日に数杯、習慣的に飲む必要があるのではないでしょうか



次は、「(7)ポリフェノール、サポニン」の予定です。(タイトルは変更するかもしれません)

マテ茶と健康|(7)含有量:ポリフェノール、サポニン


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。



(*2)素人でも簡単に見つかります。
(*3)「茶葉」は、70%が「葉」で30%が「茎」としています。日本で売られている製品の割合が分からないのでそこは無視しました。
仮に、日本で売られている製品が90%以上が「葉」だとしても、0.1%が0.15%となる程度で、そう大きな違いはなさそうです。



2012年7月18日 (水)

マテ茶と健康|(5)含有量:カフェイン、テオブロミン、テオフィリン【修正版】

カフェインの科学―コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用カフェインの科学―コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用
栗原 久

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(前記事:マテ茶と健康|(4)マテイン?カフェイン?

前の記事で、マテ茶に含まれていると言われるマテインについて、 「マテインは、カフェイン、テオブロミン、テオフィリンなどのアルカロイド類混合物」 という表現が適切と考えると書きました。

その順番で含有量が多くなっています。では、それぞれどのくらいでしょう?

販売者にも似た表現をしているところがありますが、中には、マテインは「カフェインの成分が少なく、テオフィリンとテオブロミンが主成分」という感じに、微妙な表現をしている所があります。
たぶん、「*コーヒーと比べて*、カフェインが少ない」といいたいのでしょうが(*1)、テオフィリンとテオブロミンの方が多いとも読める表現です。

どうも健康飲料を扱う一部の業者には、努力をして、カフェインの量を矮小化させたがる癖があるよう感じてしまいます。

続けて詳しく書きますが、私の結論を先に書いておきます。

・テオブロミンの量はカフェインの半分。
・テオフィリンは、ごく微量。
・茶葉を使っている場合はカフェインの量は想像以上に多いだろう。
 推計値は、茶葉3gを使った「お茶」で24〜39.6mg。(製品やお茶の入れ方で変わる)
・茶葉やその粉末を直接使う場合は、使いすぎないように注意が必要。





この記事は【修正版】です。
最初、100ccあたり〜mgと推計した記事を書いたのですが、公開後に、茶葉の量をもとにした推計値を追記しました。
数字はそれほど変わりませんが、暑い時期、ポットで使った後に水や氷で薄めたりしますから、水量が基準では誤解のもとだと考え直しました。

また前の記事がかなり長かったので、修正版に差し替えることとしました。

混乱させてしまい、申し訳ありません。m(_ _)m


wikipedia 英語版の「Yerba mate」(マテ茶)項目によると、マテ茶の乾燥茶葉に含まれる主要キサンチン誘導体の含有率は、「カフェインは 0.7〜1.7%、テオブロミンは 0.30〜0.8%、テオフィリンは少量」です。(記事公開時)
カフェインは、テオブロミンやテオフィリンよりずっと多いです。

ちなみに、お茶の葉には 0.4~0.9%、ガラナには 2.5~7.6%、挽いたコーヒーには3.2%のカフェインが含まれていると書かれています。お茶の葉(紅茶か緑茶か烏龍茶か、何かは不明)よりもマテ茶葉の方が同量かやや多い、という説もあるようです(少なくとも米国では)。

Caffeine content varies between 0.7% and 1.7% of dry weight (compared with 0.4– 0.9% for tea leaves, 2.5–7.6% in guarana, and up to 3.2% for ground coffee); theobromine content varies from 0.3% to 0.9%; theophylline is present in small quantities, or can be completely absent.

Yerba mate - Wikipedia, the free encyclopedia

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(wikimedia commons)


日本で売られているマテ茶葉は100%輸入物です。

近頃は、パッケージに日本語だけが使われている製品も出てきましたが、外国で売られている製品パッケージに日本語の説明シールを貼っただけの製品も多くあります。

外国での分析結果が参考になるでしょう。

複数の資料を参照していきます。

医薬品・薬物データベースのEroword.org には、色々なメーカーのマテ茶製品を使って作った「お茶」のカフェインとテオブロミンを分析した結果が載せられています。
 Caffeine content of yerba mate (Erowid Yerba Mate Vault)

このPomilioほかによる2002年の論文の分析結果は、お湯や水を使って5分間浸出させたものなので、最も私たちの飲み方に近い分析結果です。
ミセル動電クロマトグラフィによる分析。

High-performance capillary electrophoresis analysis of mate infusions prepared from stems and leaves of Ilex paraguariensis using automated micellar electrokinetic capillary chromatography.(PubMed)

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"Sample"は商品名で、たとえば「Yerba Mate Tagagui」は、アルゼンチンのTagaguiブランドの製品です。次の"Type"のMilledは日本で売られている茶葉と同じような粉砕茶葉を表しています。続いてカフェインとテオブロミンの含有率。

この分析結果では、カフェインの含有率は0.78~1.35%なので、wikipedia英語版の値とだいたい同じです。
ティーバッグ製品は0.3〜0.8%で、茶葉製品よりも少なめ。
テオブロミンの含有率は0.11~0.66% なので、カフェインの半分くらいと考えればよさそうです。

マテ茶のメーカーや製品によって、けっこう違いがあります。



マテ茶の大手メーカーのひとつGuayaki社では、自社製品に含まれるカフェインの量を、弱い(LIGHT)適度(MODERATE)強い(STRONG)の3つに分けています。
Frequently Asked Questions about yerba mate (Guayaki)

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弱い(LIGHT)は20〜35mg、適度(MODERATE)は35〜50mg、強い(STRONG)は65〜135mg。(注意:8オンスあたり(多分、米国液量オンス。約236.6cc))
STRONGのマテ茶は、コーヒー並のカフェインを含んでいます。

「Traditional Loose Yerba Mate」がマテ茶葉だけの製品。
「マテ茶」と一括りにして売られてはいても、いろいろな種類があることを知っておいて損はないでしょう。

Guayaki社のように表示してくれれば分かりやすいのですが、日本の輸入販売業者が仕入れているマテ茶が、どんなグレードの製品か、どこの現地メーカーが作っているのか目にすることはまずありません。原産国と有機かどうかくらい。

その茶葉の製造方法によっては、前記事で書いたように、発ガン性物質のリスクが多少なりと高くなります。


いろいろ書いていますが、読んでいる人が知りたいのは、

「自分や家族が飲んでいるマテ茶には、
いったいどのくらいのカフェインが入っているの?」

だと思います。
私がまさにソレなので、調べまくってるんですが(笑)

もっとサックリと分かりやすく書け? ・・・努力してますι(´Д`υ)アセアセ

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(wikimedia commons)



日本マテ茶協会はウェブサイトで、珈琲や紅茶、緑茶と比較したカフェインの量を表示しています。

マテ茶について|日本マテ茶協会

Q. 「カフェインは入っていますか?」

A. はい、量は少ないのですが入っています。入れ方によっても変わりますが、カフェインの含有量はコーヒーの約1/4、紅茶の約1/3、緑茶の約1/2程度です。

(赤字強調は管理人による)

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日本食品標準成分表の値と比較した、ともなんとも書いていない印象情報なので、こういうのは非常に困るのです。

"カフェインアレルギーの歩む道"さんとこの記事「マテ茶のカフェイン量を知る」では、この日本マテ茶協会の説明をもとに、150mlのマテ茶には15mgほどのカフェインが含まれると推測しています。100ccあたり10mg。


うちではこれまで書いてきたように、“販売業者は都合のいい書き方を好む”という批判的視点を元にしているので、第三者のデータを使って推測しましょう。

東邦大学薬学部による2011年の「マテ茶に含まれるポリフェノール,カテキン,およびカフェインの含量分析に関する研究」によると、マテ茶のカフェイン含量は、1.70〜2.04%で、緑茶の56〜67%です。

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日本マテ茶協会が説明している「緑茶の50%」より、けっこう多い結果が出ました。

他も調べてみましょう。



ブラジルのサンパウロ大学、Bastosほかの2005年の論文『The Chlorogenic Acid and Caffeine Content of Yerba Maté (Ilex paraguariensis) Beverages』(マテ茶飲料に含まれる、クロロゲン酸とカフェイン)に、複数のマテ茶葉とティーバッグを使った分析値が載っています。

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上から、「マテ茶・シマロン(chimarrão)」、「水出しマテ茶・テレレ(Tererê)」、「ティーバッグのお茶(Mate Tea)」です。

ブラジル南部のサンパウロ市のスーパーマーケットで店頭販売されている、複数のメーカーの製品を使って分析しています。
ここでも、製品によってカフェインとクロロゲンの量にはばらつきがあります。

茶葉を使い、お湯でいれた「お茶」のカフェイン量は、101〜165mg(500mlあたり)。
ただ、この実験は茶葉1.5gに対して、お湯60mlを入れて浸出液を作り分析しています。
その上で、Cuiaという容器にたくさんの茶葉を入れて作る、マテ茶「シマロン(chimarrão)」や水出しマテ茶「テレレ(Tererê)」を想定して、お湯の量は500ccにして再計算しています。使われる茶葉の量は12.5gと多いです。

暑い時期なので、日本では、濃いめの「お茶」を作って、水や氷で薄めることもあるでしょう。
茶葉1.5gにお湯60mlを注いで「お茶」を作って、それを水や氷で薄めたとすると、その液量に関わらずカフェイン量は12.0〜19.8mgです。
紅茶や緑茶の、一人分の茶葉の量(3g)で再計算してみましょう。

 マテ茶(茶葉3g)・・・カフェイン量:24.0〜39.6mg

同じ量の茶葉を使った「お茶」では、マテ茶には緑茶(*)と同程度か2倍のカフェインが含まれている結果となりました。
(*)参考:五訂増補日本食品標準成分表

10℃の水でいれた水出しマテ茶のカフェイン量も分析されています。
同じ実験方法なので、500mlで再計算すると56〜102mg(500mlあたり)。同じように茶葉3gで再計算してみます。

 水出しマテ茶(茶葉3g)・・・カフェイン量:13.4〜24.5mg

水出しは、カフェインは減りますが、テオブロミンやクロロゲン酸(抗酸化物質)も減るでしょう。


ティーバッグ製品のカフェイン量は、8〜20mg(182mlあたり)。
これは、1カップ(182ml)に対して1つのティーバッグを使っています。

 マテ茶(ティーバッグ1つ)・・・カフェイン量:8〜20mg(182mlあたり)。

ティーバッグ製品はかなり低いです。
単純計算すると100ccあたり4.4〜11.0mgとなりますが、お湯の量を減らしても濃くなるだけとも思います。
その単純計算した値ですが、100ccあたり11g以下というのは、日本マテ茶協会の説明から推計した値と合致します。
あれは、ティーバッグを使った分析結果の可能性が出てきました。

日本マテ茶協会の住所とFAX番号は、ハーブティで有名な『ポンパドール』ブランドの日本緑茶センターと同じです。日本マテ茶協会会長は、日本緑茶センターの代表です。そこが中心になって、マテ茶の他にも外国茶を広める活動をしているようです。

日本マテ茶協会のウェブサイトに書かれている、カフェイン含有量の比較説明がいつからあるかは分かりません。
ハーブティ製品の店頭販売は、今でこそ茶葉も多く置かれていますが、昔はティーバッグが中心でした。茶葉等の使用量は1.5〜2.5gほど(ハーブによって違う)。

もしかすると、日本マテ茶協会の掲示している含有量の説明は古いもので、日本緑茶センターのティーバッグ製品を使って分析したカフェイン量を、今でもそのまま使っているのかもしれません。

そう考えるといろいろ符合します。(あくまでも推測ですが)

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(wikimedia commons)


これまでの数字は、マテ茶の「お茶」で推計してみました。
その一方で、マテ茶の茶葉それ自体や、マテ茶の粉末を料理やお菓子にまぜるレシピがあります。

この場合は、使う分量に注意が必要です。
使用した乾燥茶葉の重量の、1%〜2%がカフェインだと推測されます。



コカコーラの『太陽のマテ茶』のカフェイン量は、製造工程で増減できるでしょうから、メーカーからの数字が出ていない現状ではいくらか分かりません。

ただ、海外で売られているマテ茶ドリンクには、カフェイン量が多いものもあります(あくまでも参考情報です)。
たとえば上に表を載せたGuayaki社のマテ茶ドリンク「Bottled Yerba Mate」7製品では、16ozあたり140mg。100ccあたり29.6mgです。


もちろん、これらは推測値です。
輸入業者や販売業者からちゃんとした分析データが公開されたなら、また違った結果となるかもしれません。

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(wikimedia commons)


テオブロミンとテオフィリンの量

マテ茶の乾燥茶葉に含まれるテオブロミンは、0.30〜0.8%。カフェインの約半分と考えられます。
ティーバッグで、4〜10mg(182ccあたり)/茶葉で、12〜19.8mg(茶葉3gあたり)。

テオフィリンは、ごく少量。

P. Mazzaferaの1994年の論文「CAFFEINE, THEOBROMINE AND THEOPHYLLINE DISTRIBUTION IN Ilex paraguaryensis」(pdf)
(Ilex paraguaryensis(マテ茶の木)のカフェイン、テオブロミンとテオフィリンの分布)に、若い葉や古い葉、実の分析値が載っています。


テオフィリンの含有量は、単純計算で最大値でも0.021%。せいぜいがテオブロミンの量の数%と微量。テオブロミンの1%では、テオフィリンは0.08〜0.18mgとなるけど、その後の加工工程でどうなるか分かりませんし、はっきり言って電卓叩いて計算しただけの意味ない数値ですね。

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ハーブティ健康茶専門店 "百華茶苑" さんとこの「ハーブティー薬草データベース」に、マテ茶との併用に気を付けるべき薬剤などが書かれています。

マテの作用、ハーブティー薬草データベース



そのあたりも、次の記事で書ければいいなー、とちょっと弱気(笑)
専門的になりすぎ。


マテ茶と健康|(6)含有量: ミネラル(お茶(浸出液))
マテ茶と健康|(7)含有量: ポリフェノール、サポニン



(*1)かなり好意的に解釈してみました。
(*2)内外の製造・輸入・販売業者による分析結果の公開がある場合を除く。


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。載せている数値も参考文献からの推測値です。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。





2012年7月15日 (日)

マテ茶と健康|(4)マテイン?カフェイン?

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(wikimedia commons)


最初に書いておきますが、マテ茶にはカフェインが含まれています。
妊婦や小さいお子さん、併用禁止の薬剤を飲んでいる方、アレルギー等をお持ちの方々は注意をしてください。


マテ茶に特有とされる成分に「マテイン」というものがあります。

この「マテイン」について、販売者の説明は統一されていません。
「カフェインの一種」「カフェインではない」「カフェインに似たアルカノイド(原文ママ)」等々、表現が違います。
ひどい例では、「マテ茶に入っているのはマテインなので、カフェインは入っていない」「マテ茶はノンカフェイン」と言いきっている販売者もいます。

カフェインの量については、"カフェインアレルギーの歩む道"さんとこの「マテ茶のカフェイン量を知る」が参考になるので、ご参照ください。
うちでも、この次の記事で詳しく書くつもりです。
(日本マテ茶協会のFAQでは、コーヒーの何倍、緑茶の何倍という中途半端な情報なので、推測値を載せます。)

(追記:書きました。
マテ茶と健康|(5)含有量:カフェイン、テオブロミン、テオフィリン【修正版】」)

マテインについて適切と考える表現は
「マテインは、カフェイン、テオブロミン、テオフィリンなどのアルカロイド類混合物」
です。
アルカロイド類の部分は、キサンチン誘導体やキサンチン類でも可。
書いた順番で、茶葉内の含有量が多く、それら含有率はコーヒーやカカオとは少し違うようです。

日本での広告表現が混乱している原因には、「マテイン」の歴史と、米国でのマテ茶ブームでの業界の宣伝の悪影響があると考えられます。

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(wikimedia commons)


まず、カフェイン等について。

カフェインはアルカロイド類で、キサンチン誘導体です。カフェインと似た構造を持つアルカロイド類には、テオブロミン、テオフィリンなどがあり、中枢神経興奮作用、気管支拡張作用、心筋興奮作用、利尿作用等があります。

カフェインは、コーヒーに多く含まれることからカフェイン(caffeine)と命名されました。1820年にコーヒー豆から分離。(分離の年を書いているのにはワケがあります)
テオブロミンは、カカオに多く含まれ、カカオの学名"Theobroma"からテオブロミン(theobromine)と命名されました。1878年にカカオから分離。
テオフィリンは、カカオや茶の木に含まれ、茶葉のドイツ語"Teeblättern"からテオフィリン(theophylline)と命名されました。1888年に茶の葉から分離。テオフィリンには同名の、喘息や気管支炎の治療薬剤があります。

マテインは、1876年に、マテ茶に含まれる主なアルカロイド類の名称として付けられました。

「マテ茶の成分だから、とりあえずマテイン(matein)と呼ぼうぜ」。こんな感じ。

米国のEconomic Botany誌で、1950年に発表された「Maté - South American or Paraguay Tea(マテ - 南米、パラグアイのお茶)」に古い話がいろいろ載っています。

マテの茶葉には、コーヒー豆のカフェインのような、マテ茶の木に特有の成分が入っていると言われてきました。

マテインの呼び名は、1876年に、Bijassonによってマテの木(Ilex paraguaryensis)の主要アルカロイド類の呼び名として付けられました。それが1904年にフランスのパリで発行された、Moreau de Toursによる「Le Mate, etude historique, chemique at physiologique.(マテ、歴史研究、生理化学)」で紹介されて、周知されたそうです。

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その時、マテインという物質は分離されていません。
カカオからテオブロミン(1878年)、茶葉からテオフィリン(1888年)のように、新しい植物の新成分の発見と分析が盛んに行われている時代なので、マテ茶の木の成分だから「マテイン(matein)」と呼ばれていたようです。
そこんとこ、発見者、企業や国の名誉や権利も絡んでいたのかもしれません。

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分子式が「C8H11N3O4」と書かれていますが、CASのScifinderでは分子式は「不特定(Unspecified)」となっているので、その後、間違いと確認されたのでしょう。
現在でも分子式が特定されていないので、特有の結晶構造を持つ成分ではないと考えられます。


マテ茶の茶葉に含まれるキサンチン誘導体(プリンアルカロイド類)の含有率は、カフェインは 0.7~1.7%、テオブロミンは 0.3 ~ 0.9%、テオフィリンは少量となっています。

それら3つのアルカロイドの特徴を持っていると考えるべきでしょう。

Caffeine content varies between 0.7% and 1.7% of dry weight (compared with 0.4– 0.9% for tea leaves, 2.5–7.6% in guarana, and up to 3.2% for ground coffee); theobromine content varies from 0.3% to 0.9%; theophylline is present in small quantities, or can be completely absent.

Yerba mate - Wikipedia, the free encyclopedia


ここに根っこがあるのかもしれませんが、日本でいまだに「カフェインが含まれていない」という間違いを使っている販売店があるのは、決定的には、米国での宣伝が元凶になっていると考えられます。

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(wikimedia commons)



2000年前後に、米国で健康飲料としてマテ茶のブームがあり、その時にマテ茶にもカフェインが含まれていると問題提起がされました。。
実際、その通りだったわけですが、米国のマテ茶の販売店(一部?)は、

「マテ茶に含まれているのはマテインであり、カフェインは含まれていない。だから心配いらない。」

という、どこかで聞いたような安全宣伝をして、誤魔化して売っていたそうです。残念ながら、健康食品販売でたまに聞く話です。(*2)
医薬品・薬物データベースのErowid.orgによると、御用学者(*1)による、適切な科学的リファレンスを参照しない紹介記事が元らしいです。
Does Yerba Mate contain caffeine or mateine?(Erowid Yerba Mate Vault)

その頃の宣伝文句を、そのまま無検証で日本での宣伝文句に使っているところがあるのでしょう。


次は「(5)カフェイン量。テオブロミン、テオフィリン。」の予定です。(タイトルは変更するかもしれません)

マテ茶と健康|(5)含有量:カフェイン、テオブロミン、テオフィリン【修正版】



以下に、Erowidに載せられているScifinderの情報を転載します。

Scifinder/Chemical Abstract Database Entry for Mateine:

The chemistry journal search engine Scifinder uses the Chemical Abstract Database, which is one of the most comprehensive resources for chemical information. The entry (below) for mateine states that an alternate name for mateine is "caffeine".

Registry Number: 1407-79-0
CA Index Name: Mateine (8CI)
Formula: Unspecified
STN Files: PROMT
(Additional Information is available through STN International.
Contact your information specialist,
a local CAS representative, or the CAS Help Desk for Assistance)
Class Identifier: Manual Registration
No Structure Diagram Available
No References
Database REGISTRY
other names include:
1H-Purine-2,6-dione, 3,7-dihydro-1,3,7-trimethyl-; Caffeine ;
1,3,7-Trimethyl-2,6-dioxopurine; 1,3,7-Trimethylxanthine;
3,7-Dihydro-1,3,7-trimethyl-1H-purine-2,6-dione; 7-Methyltheophylline; Alert-Pep;
Cafeina; Caffedrine; Caffein; Cafipel; Diurex; Guaranine; Koffein; Mateina;
Methyltheobromine; No-Doz; Refresh'n; Shape Plus; Stim; Thein; Theine; Tri-Aqua

Erowid Yerba Mate Vault : Does Yerba Mate contain caffeine or mateine?より)



(*1)御用学者・・・、便利な単語だ。

(*2)消費者以上に無知な販売者はいるだろうし、誤魔化したり嘘ついても売れればいいという無恥な販売者もいるだろう。




この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。


2012年7月14日 (土)

マテ茶と健康|(3)発がん性リスク

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マテ茶に発ガンリスクがあるというネットの書き込みを読んだり、報道を見たことがある人もおられると思います。

日本マテ茶協会では、その報道に対して見解を出しています。

当協会の見解
一部のインターネットサイトやそれを根拠としたテレビ報道について、誤った情報が流れておりますので、当協会としての見解をお伝えいたします。
報道内容は「熱いマテ茶を飲むとガンの発生率が高まる」と言うものでした。
確かに、マテ茶を飲むある地域では喉頭癌や食道癌の発生率が高いと言うことは言われています。しかしこれらはマテ茶がガンの発生率を高めているのではなく、マテ茶を飲む方法によってガンのリスクが高まっていると考えられます。
 (中略)
以上のことから、「熱いマテ茶を飲むとガンの発生率が高まる」と言うのは間違いであり、逆にマテ茶は「ガンのリスクを下げる」と言うことになります。しかし、マテ茶の伝統的な飲み方であるシマロンでマテ茶を飲用する場合は、熱湯を入れて飲むことは注意が必要であります。あまり熱すぎないお湯を使用し、一気に飲み込まず静かに飲むことをお勧めいたします。

マテ茶の報道について|日本マテ茶協会

引用が長くなりました。
詳しくは後で書いていきますが、私の簡単な結論を先に書いておきます。

・マテ茶の本場のウルグアイやブラジルの研究では、喉頭ガンや食道ガンだけでなく、胃ガン、肺ガン、子宮ガン、腎臓ガンや膀胱ガンなどとの関連も調査されている。
 これらは、熱い飲み物と飲み方だけでは説明がつかない。
 上記の日本マテ茶協会の見解では、ごく一部だけを説明し、逆に「ガンのリスクを下げる」と反論している。
・マテ茶製品の茶葉や、被験者の尿から高いレベルで、ベンゾピレンなど発ガン性リスクのある化学物質と関連物質が見つかっている。
 研究は現在進行形で進められている。
・マテ茶の、伝統的な製法によって作られたものは汚染されている可能性がある。
 それは、採取した茶葉を、火と煙であぶって乾燥する工程。
 ブラジルで店頭販売されているマテ茶製品の中には、これが含まれるものがある。
・日本での、マテ茶の飲み方や量では気にすることはない???(確証なし)
 日本で売られているマテ茶製品には、分析データも、茶葉の製法の情報もない。

もしあなたが、飲食物のリスクを強く気にされるなら、耳障りの良い宣伝文句に釣られず、分析データも情報もないものは口にしないという選択肢も考えるべきかもしれません。



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国立がんセンターはウェブサイトで、マテ茶とがんの関係について慎重な表現で書いています。

南米で非常な高温で飲まれる習慣のあるマテ茶が食道のがんのリスクを上げることは"ほぼ確実"であると指摘されています。また、口腔、咽頭、喉頭のがんについても、"限定的"ではありますが、リスクを上げるとする研究結果が見られます。

生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究 | 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター

このように日本語だと、食道や喉頭あたりの癌についての情報が多いですが、独立行政法人 国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報や、マテ茶には発がんリスクあり!では、胃ガンや腎ガンのリスクについて触れています。

私は発ガン性リスクの有無自体よりも、これまでのマテ茶関係の記事で書いてきたように、販売者の広告に不満と不安を感じ、充分な情報が提供されていないところを心配しています。



ウルグアイ国立がんセンターの、デ・ステファニー(Eduardo De Stefani)ほかの研究では、過去の研究を追跡調査する形で、マテ茶を飲む量は、喉頭がんや食道ガンだけでなく、体の他の部位のガンと関連づけられるという結果を報告しています。これは2011年の論文で、現在進行形で研究が行われているようです。

Maté Consumption and Risk of Cancer: a Multi-site Case-Control Study in Uruguay(pdf)
(マテ茶の消費とガンのリスク:ウルグアイの複数のケース・コントロール研究)

1990年から2004年の、ウルグアイのモンテビデオ市の4つの病院の患者13,201人を対象に、マテ茶の消費量と13種類のガンについて調査をしました。一部を簡単に訳してみましょう。

結論として、これまでの研究で述べられたように、マテ茶の飲用は、上気道消化管、食道、胃、喉頭、肺、子宮、膀胱、腎臓のガンと関連づけられる。一方で、口腔、咽頭、大腸、直腸、女性の乳ガンなどはマテ茶の飲用とは関連づけられない。マテ茶の発ガンへの影響について、さらなる研究が必要である。

In summary, the present study displayed that maté drinks were positively associated with cancers of upper aerodigestive tract, esophagus, stomach, larynx, lung, cervix uteri, bladder, and kidney. On the other hand, cancers of the mouth, pharynx, colon, rectum, and female breast were not associated with maté consumption. Further studies, focused on mechanisms of maté influence on carcinogenesis are needed.

研究では、ベンゾピレンなどの化学物質が、ガンの部位に対するマテ茶の発ガン作用の原因である可能性があるとも書いています。

ベンゾピレン(ベンゾ[a]ピレン)は、多環式芳香族炭化水素ではじめて発ガン性が確認されたことで有名な化学物質です。「焼き肉や焼き魚の焦げた部分に発ガン性がある」という話を聞いた人も多いことでしょう。
(追記:誤解されそうな表現だったので追記。魚や肉の焼け焦げ自体は心配する量ではないとされています。一方、紹介している研究では、消費量とがん患者との相関関係やリスクファクターが調べられています。)

300℃から600℃の間で不完全燃焼する。コールタールや自動車の排気ガス(特にディーゼルエンジン)、タバコの煙、焦げた食べ物の一部などに含まれる。
ベンゾピレン - Wikipedia
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ブラジルの最南端の、ウルグアイと接するリオグランデ・ド・スール州の大学病院で行われた血液検査や尿検査で、喫煙者とともにマテ茶を愛飲する健常者の尿に、多環芳香族炭化水素(PAH)の曝露を示す物質が濃縮していることが確認されています。

Higher urine 1-hydroxy pyrene glucuronide (1-OHPG) is associated with tobacco smoke exposure and drinking maté in healthy subjects from Rio Grande do Sul, Brazil.
(ブラジル、リオグランデ・ド・スール州での、喫煙者とマテ茶を飲用する健常者の尿の高レベルの1-OHPG)

"1-OHPG"(1‐ヒドロキシピレングルクロニド)は、人体への多環芳香族炭化水素(PAH)の曝露の指標として使われているそうです。
以下、一部を簡単に訳してみましょう。

結論
喫煙とマテ茶の飲用は、ブラジル南部の人々を高レベルのベンゾ[a]ピレンにさらしている。この高レベルの多環芳香族炭化水素(PAH)の曝露は、住民に見られる食道ガン(食道扁平上皮癌:ESCC)の高い発症率の一因だろう。マテ茶に関連づけられる尿中の1‐ヒドロキシピレングルクロニド(1-OHPG)の濃縮は、(食道ガンの原因が(訳注))熱傷だけでなく汚染の影響があることを示唆しており、過去の研究で報告された、マテ茶の消費量と食道ガンリスクの増加の関連についての説明を補うだろう。

Conclusion
Tobacco smoke and maté both contribute to high levels of benzo[a]pyrene exposure in the people of southern Brazil. This high PAH exposure may contribute to the high rates of ESCC observed in this population. The increased urine 1-OHPG concentrations associated with maté suggest that contaminants, not just thermal injury, may help explain the increased risk of ESCC previously reported for maté consumption.

熱傷が原因で食道癌になったか、なりかけているものが、高濃度のベンゾピレンなど発ガン性の多環芳香族炭化水素の曝露によって悪化した可能性が示唆されています。

ウルグアイは米国以上の牛肉消費国で、アサードというバーベキュー料理が有名です。隣接するブラジル南部地域も似た食生活と考えられるでしょう。これがベンゾピレンの原因である可能性もありそうです。
しかし2008年の研究では、店頭販売されている8つのメーカーのマテ茶を、熱い湯(80℃)と冷たい水(5℃)で作って分析したところ、熱いマテ茶だけでなく冷たいマテ茶でも多環芳香族炭化水素(PAH)が検出されています。(参照:en

この汚染の原因は、マテ茶の製造工程にあると考えられているようです。

マテ茶は、マテの木の葉を採集して、それを乾燥させ、加工して作ります。
伝統的な方法では、大きな煙突(垂直型・水平型)を使い、その中にマテの葉を入れ、薪を焚いて、その熱と煙でいぶすように乾燥させます。
大手のマテ茶メーカーで、伝統的な製法を使い乾燥させている、と言っている所もあります。(詳細が分からないので、風評被害とならないようリンクは載せません)

その燃焼の副生成物である、ベンゾピレンなど発ガン性の多環芳香族炭化水素が、マテ茶の茶葉で高濃度になり、そのまま製品化されていると考えられるそうです。

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マテ茶と発ガンリスクについて、米国の非営利団体PLoS(Public Library of Science)のMelinda Moyer氏が、PLoSのウェブサイトで紹介し、問題提起をしています。
PLoSは、学術情報に対するオープンアクセスを主張する、米国の生物医学分野の研究者を中心とした非営利団体です。(参照

The hottest new health drink—that might give you cancer(一番ホットな新しい健康飲料 ー 発ガン性があるかもしれない)

アリシア・シルベストリやマット・ディロン、マドンナたちが愛してやまない、南アメリカから来た新しい健康飲料「マテ茶(Yerba Mate)」。
しかし、口腔ガン、食道ガン、肺ガン、肝臓ガンや膀胱癌の危険性について報告されてきました。

意訳。内容は、この記事で書いたものとだいたい同じです。
この記事に対して、マテ茶の大手メーカーのひとつ Guayaki社の営業担当副社長がPLoSに見解を送っています。

The Yerba maté industry responds(マテ茶業界の反応)

研究結果があまりあてにならないと前置きをした後、いろいろ書いてあり、こう締めくくっています。

多環芳香族炭化水素(PAH)は、食品、飲料、バーベキューの肉や甲殻類、水、コーヒーや茶、ありとあらゆるところで見つかっています。
多環芳香族炭化水素(PAH)は、環境汚染、収穫や燻煙プロセスに起因すると、研究は示唆しています。重要な点は、過去の調査で、オーガニックで空気乾燥されたマテ茶の茶葉(yerba mate)には、green teaよりもずっと少ない量の多環芳香族炭化水素(PAH)しか検出されていないことです。

Human and environmental PAH’s are found virtually everywhere including foods and beverages such as barbecued meats, shellfish, water, coffee and tea.
Research suggests that PAH may result from environmental pollution, harvesting and smoke finishing processes. It’s important to note that organic, air-dried yerba mate is found to contain lower amounts of PAH than green tea in recent testing.

オーガニックで空気乾燥なら汚染は少ないと書いているあたり、汚染を認めているような返事なので、オーガニックでも空気乾燥でもない製品はどうなんだ?、とツッコミたいところですが、それはともかく(笑)

同じ様な企業や業界の見解と山ほど戦ってきたというMoyer氏は、あまり納得していません。
記事の最後でこう書いています。

「マテ茶は「ガンのリスクを下げる」飲み物として売っているくせに、実際には、発がんリスクを下げるだけでなく発がんリスクを上げるという多くの証拠があることを、もっと気にするべきです。」

その通りだと思います。

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近頃は、放射能だと、ミリシーベルトどころか1マイクロシーベルト未満でも曝露したくない人もいるようです。
考え方や感じ方は人それぞれですが、その人なりに、いろいろな情報を調べて、データを集めて、リスク・マネージメントをしているのしょう。

逆に情報がないという不安感は、311後の現在では、特に感情的に増幅しやすくなっています。

日本で販売されている、マテ茶がどういう製法で作られたのか書いている製品は見かけません。(全ての商品を確認したわけではありません)
マテ茶の「お茶」や「茶葉」に、ベンゾピレンが含まれているのか、いないのか、分析データは見あたりません。
日本語での詳しい情報は見つけられませんでした。
(日本人名らしき著者のマテ茶関係の英文論文が意外とあるので、ネット非公開の研究論文にはあるかもしれません。)

日本では、「健康にいい、健康にいい」「ガンのリスクを下げる」と、都合のいい情報が強調されています。原発についての東京電力の対応みたいで、聞いていて、いい気分ではありませんね。劣化コピーされた宣伝文句の連呼は、特にそうです。


本文では触れることが出来なかったのですが、ニューヨーク食育&フード事情さんとこのマテ茶が癌リスクをあげるらしい・・・ の記事の内容が、私のスタンスとよく合っています。

私は、発がんリスクがある可能性を踏まえた上で、消費量は微々たるものだからあまり心配することはない(かもしれない)と、けっこう楽観的に考えて、毎日飲んでいます。
不安になったら、そしてマテ茶に飽きていなかったら、Guayakiの副社長が言っているようにオーガニック・マテを飲みましょうか。その時は、メーカーに製法を問い合わせるでしょう。


次は、「(4)マテイン?それともカフェイン?」の予定です。(タイトルは変更するかもしれません)

マテ茶と健康|(4)マテイン?カフェイン?

メモ
出来るだけ参照数の多い論文を使いましたが、生理学者でもマテ茶専門家でもないので、論文や書いた科学者の信頼性まではチェックしきれていません。
もしかすると、マテ茶を目の仇にする放射脳な科学者だったり、業界の御用学者の論文なのかもしれません(笑)
ま、その辺は、専門家が調べることでしょう。

一連のマテ茶記事では、マテ茶の製品画像リンクをアイキャッチがわりに貼っていますが、この記事では、特定のマテ茶製品とガンがイメージづけられる恐れがあると考え、使いませんでした。
ブログサービスがココログフリー(無料版)なので、ココログ側が自動で貼り付けるGoogleアドセンスの広告までは責任はもてません。


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。


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マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)

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長文になったので2つに分割しました。

マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(前編)

前半では、マテ茶の生産と消費が多い地域で、宣伝で言うほど太り過ぎや肥満の割合は低くないことなどを書きました。

一方、デンマークの研究で、肥満体の被験者にマテ、ガラナやダミアナなどの植物の抽出物のカプセルを飲ませたところ45日で体重が5kg減ったという研究結果が、よく広告で使われています。

この説明は論文の内容の半分だけです。



デンマークでの調査が元ネタで、論文のタイトルは「Weight loss and delayed gastric emptying following a South American herbal preparation in overweight patients(肥満患者における、南米の薬草調合剤による体重減少と胃内容物排出の遅れ)」(PubMed
(Andersen T., Fogh J., Weight loss and delayed gastric emptying following a South American herbal preparation in overweight patients, J. Hum. Nutr. Dietet., vol. 14, 243-250 (2001))

タイトルから推して知るべし。
要するに、胃の内容物の排出速度が遅くなることから、満腹感が長く続き、総摂取エネルギーが減ることで体重が減少したという研究結果です。(*1)


研究では、南米原産の3種類のハーブの、マテ(Ilex paraguayensis)の葉、ガラナ(Paullinia cupana)の種とダミアナ(Turnera diffusa, Turnera aphrodisiaca)の葉、それらの抽出物の混合物入りカプセルを使っています。これらは『YGD』(Yerba mate、Guarana, Damiana)と呼ばれ、ダイエット・サプリメントでも使われています。

被験者は44人で、BMIが25.8~30.4の肥満体、平均年齢は男性38.4才・女性38.7才。
毎日3回の食事前にYGDカプセルをリンゴジュースで飲み、超音波検査で胃内容物の排出速度(GET)を測定しています。論文には、超音波検査画像も載っています。

胃内容物排出速度は、偽薬での被験者は平均38分±7.6分だったのに対して、YGDカプセルでの被験者は58±15分と、有意に排出速度が遅くなっていることが確認されました。

被験者たちの体重は、10日後に0.8±0.05kgの減少、45日後に5.1±0.5kgの減少と、有意に体重が減少していることが確認されました。マテ茶の宣伝で使われているのは、ここだけです。


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(注意:この商品画像とリンクはアイキャッチのイメージ用に載せました。YGDは入っていません。)


胃の内容物の排出速度が遅くなることが原因なら、食物繊維たっぷりの粉寒天をカプセルに詰めて飲めばいいじゃないかと思ったのですが(*2)、 YGD混合物の中身は、マテ:112mg、ガラナ:95mg、ダミアナ:36mgで、1カプセルあたり143mg。1日3回なので429mgと、食物繊維が原因と考えると少なすぎ。
他の成分が、胃内容物排出速度の遅延に関わっていると考えられます。(*3)




次は、「(3)発ガン・リスク?」の予定です。(タイトルは変更するかもしれません)

マテ茶と健康|(3)発がん性リスク

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(wikimedia commons)



ところで、焼き肉チェーン最大手の「牛角」が、「太陽のマテ茶」×「牛角」コラボして、全店舗でマテ茶ドリンクを提供しているそうです。(プレスリリース

マテ茶の研究から、胃内容物の排出が遅くなり満腹感が長く続く可能性があります。

これは追加注文で客単価が上がることを期待する焼き肉店としては、憂慮すべき「副作用(笑)」ではないでしょうか。(笑)

「牛角」の太陽のマテ茶コラボ担当者さんには、営業会議の席の質問で、この「副作用(笑)」についてツッコまれる可能性もあるので、それなりの回答を用意しておいた方がいいかもしれません(笑)

お奨めは「『太陽のマテ茶』は薄い(私個人の感想です)ので、その心配は起こりません」かな(笑)





(*1)なぜ、中途半端な結果を、論文紹介した上で書いているのかな?と違和感を感じます。元は、日本マテ茶協会のウェブサイトにも転載されている、大阪市立大学の名誉教授が書かれた「マテ茶について」と思われます。
(この「世界の研究データ|マテ茶について」が載っている本は未読ですが、全文掲載らしい。)

この資料は、日本語でのマテ茶の科学的な総合情報源としては、情報量でもリファレンスでも最高のものでしょう。
しかしマテ茶の知名度が低い頃のもので、マテ茶の良い部分を特に強調して書いてしまわれ、それがそのまま転載されて、引用されて、文字が削られて、 内容が再検証されることなく劣化コピーされて一人歩きしていったのではないでしょうか。


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。


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(wikimedia commons)


マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(前編)

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主な内容は次の4つです。
 1. レタスの25倍の食物繊維?
 2. 南米は肥満体が少ない?
 3. 牛肉を食べると太る?
 4. 実験で体重が減っている、その理由

簡単に結論書くと
 A1. マテ茶の「茶葉」には食物繊維あるかもね。「お茶」にはほぼゼロ。
 A2. 米国に比べれば少ないね。でも先進国の平均くらいの肥満率。
 A3. 牛肉食べると太るは誤解。食べ過ぎたら太るのは当たり前。
 A4. お腹いっぱいだから。 (←これは後編で、マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)

なんか「詳しく書いてるけど長文なブログ」という自分の存在を、自ら否定してしまう事を書いた気もしますが(笑)、詳しく書いてみましょう。



コカ・コーラの『太陽のマテ茶』のペットボトルには、

マテ茶葉には、レタスに比べて約25倍*の食物繊維やカルシウムが豊富に含まれています。(*100g当たり、当社調べ)

と書かれています。
あっちこっちで疑問だと言われていて、コカコーラ社に問い合わせた方もおられました。

「太陽のマテ茶」に含まれております食物繊維は、
マテ茶葉より抽出されにくいことから、
製品中の食物繊維は微量となっております。

コカ・コーラ社から太陽のマテ茶の回答来たよー。より(Googleキャッシュ))

また前の記事では、米国や南米で売られているマテ茶のティーバッグの成分表や、マテ茶の「お茶」の成分の分析結果を調べてみました。
『太陽のマテ茶』、マテ茶と食物繊維
『太陽のマテ茶』|マテ茶に含まれる食物繊維について、もう少し詳しく調べてみた
マテ茶のティーバッグの成分表には食物繊維は0.0mgと書かれています。

『太陽のマテ茶』発売以前からマテ茶を販売している、いわゆる老舗の中には「マテ茶に含まれる成分に食物繊維を書いていない」ところもある、という事に気付いている人も多いことでしょう。

さらに代表取締役が日本マテ茶協会の会長もしている、日本緑茶センターのマテ茶、これを販売する通販大手Amazon社の複数の商品説明にも、食物繊維は書かれていません。(記事投稿時)

マテ茶
南米で古来から飲み継がれてきたマテ茶は、茶・珈琲と並ぶ世界三大飲料のひとつです。植物性のカルシウム、鉄分、葉緑素、ビタミン、カリウム、マグネシウムなどの成分をバランスよく含み、あっさりと飲みやすい味です。食生活が不規則になりがちな現代人の毎日の飲料に最適です。
(Amazon.comより)

201200mate02
(wikimedia commons)

食物繊維、どこ〜〜〜???(笑)

西暦2012年にコ○・コー△の製品を中心に、新しい教義をぶち上げ、≪後『太陽のマテ茶』時代≫が始まりました(笑)

テレビCMでは、右下になんか書いてあるようです。(読めないよ・・・あ〜あ、嘆息)

201207mate0203
YouTubeより)

コカ・コーラの太陽のマテ茶<公式サイト>には、はっきりとこう書いてあります。

201207mate0201
太陽のマテ茶<公式サイト>

マテ茶は、マテ茶葉から抽出した南米の国民的飲料!
「マテ茶の茶葉について」
マテ茶の“茶葉”には、レタスに比べて
約25倍*の食物繊維などが豊富に含まれています。
          (*100g当たり、当社調べ)

さすがコカコーラ。テレビのイメージCM(30秒版のみ)や製品パッケージでは小さな文字で、ホームページではデカデカと書いています。

でも、そこまで「茶葉」 「茶葉」「茶葉」と連呼しなくても・・・(笑)

他の成分もちゃんと書けばいいのに、と思ったのは私だけじゃないはず(笑)
テレビCMの「レタス25倍*のカルシウム」(こう読めます)はどこ行ったー、と言いたくなってきました(笑)


それにしてもコカコーラは、嘘広告と言われないよう対策をして、グレイゾーンから外れなさそうなギリッギリのところを攻めていますね。
「残念な広告」と言われてはいても、尊敬はまったくできないけれども、小狡いうまいと感じさせます。さすがグローバルゲーム・プレイヤー(笑)

もし批判されたとしても、矢面に立たされるのは日本マテ茶協会という構図が出来ているようにも感じられます。


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マテ茶の広告で、「肉を沢山食べている」のに「南米の人には肥満体が少ない」それは「マテ茶を飲んでいるから!」という、3点セットの宣伝を目にした人も多いでしょう。

それらと一緒に、「ダイエットに最適」「痩せる」という表現がついている広告をしている通販サイトもあります。よくあるダイエット広告(笑)と感じられます。

実際のラテンアメリカを知っている人の中には「南米の人に肥満体が少ない???」と、違和感を感じた人も多いのではないでしょうか。

マテ茶の生産地であり、特によく飲まれているのは南米大陸の南の国々、ウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチンとブラジル南部です。
その地域の太り過ぎと肥満の割合は、米国の70%以上に比べたら少ないと言えますが、OECDの平均と同じくらいで多いです。
日本の20%台(男性28%・女性20%)・肥満が4%未満と比べたら、かなり多い。

ウルグアイでは、2009年の「第一回・“太り過ぎと肥満”全国調査(ENSO I)」によると、人口の51%が太り過ぎや肥満でした。17%が肥満で、5%が肥満に繰り上がる可能性が高いそうです。
Sobrepeso y obesidad(太り過ぎと肥満)(Alimenta.com.uy)

アルゼンチンでは、国立衛生局が2006年から2009年に行った全国調査の結果、人口の53.4%が太り過ぎや肥満でした。肥満は2005年は14.8%で2009年は18%と、急激な増加傾向にあり、肥満が24%という州もあります。
Más de la mitad de la población argentina sufre sobrepeso y obesidad(人口の半分以上が、太り過ぎと肥満で苦しんでいる)(La Gaceta紙)

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(wikimedia commons)


日本緑茶センター代表で日本マテ茶協会会長の北島さんは、インタビューでこう語っています。

「南米人は日本人よりも3倍も肉を食べ、ほとんど野菜は摂取しないのに、肥満体の人は少ない。それはマテ茶を飲んでいるからといわれます。マテ茶は食物繊維も豊富で便通も促します」(北島さん)
※女性セブン2012年7月5日号

日本人の3倍肉を食べる南米人 肥満体少ない理由はマテ茶説も(NEWSポストセブン) - エキサイトニュースより引用

201207mate0207
エキサイトニュースより)

女性週刊誌『女性セブン』の記事だし、大目に見てスルーしたい気もするのですが・・・
御社が販売しているマテ茶の「お茶」に、便通をうながすほど食物繊維が豊富であることを証明してほしいものです。

もしマテ茶をよく飲むから肥満体が少ないと主張するのなら、4億人近い人口の「南米」をイメージだけで一括りにせず、マテ茶の消費量の多いサンプル層と少ないサンプル層で比較すべきです。

少なくとも、肥満率が低いという説明に「米国と比べて~」と付け加えるべきではないでしょうか。



アルゼンチンでは、肥満を減らして成人病患者を減らすために、もっと果物や野菜を食べよう運動が進められています。(参照:es
もっともっとマテ茶を飲もう運動はなさそうです(笑)

WHOの調査では、南米各国の野菜・果物摂取量はだいたい200g前後(Table.1)。日本の野菜・果物摂取量の4割ほど。日本も多いとは言えないのに、これは少なすぎ。
The grobal burden of desease attributable to low consumption of fruit and vegetables: implications for the global strategy on diet (pdf)(WHO)


マテ茶は、日本語では「飲むサラダ」とも言われますが、英語では「Liquid Vegetable(液体の野菜)」という表現が一般的のようです。
米国並みに牛肉消費して野菜をあまり食べないのに、「生活習慣病の発症率が比較的低い」ことから、マテ茶(*)が野菜の代替物となっているのだろう、米国で注目されてブームとなったのだそうです。

確証はありませんが、「体重が減る」仮説は御用学者による後付けなんじゃね?という違和感も感じています。

(*)薄いマテ茶飲料ではなく、茶葉も一緒に飲んでしまうような伝統的な飲み方の濃いマテ茶です。


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(wikimedia commons)


牛肉の1人当たり年間消費量は、ウルグアイやアルゼンチンは米国以上です。ブラジルやパラグアイも米国並の消費量です。主要産業の一つが牧畜なので、消費量も多いのですね。

世界の牛肉(1人当たり年間消費量(kg))

 2007年2008年2009年2010年2011年
ウルグアイ51.750.658.462.161.0
アルゼンチン69.267.5 66.755.853.5
ブラジル36.836.937.137.838.4
アメリカ42.641.039.838.837.9
パラグアイ26.231.935.335.635.6
USDA「World Markets and Trade」

マテ茶の広告では、米国よりも「肉の消費量が多い」と言っていますが、牛肉の話です。
米国では、さらに豚肉、鶏肉、その他乳製品、マクドナルドにドミノ・ピザ等々、食べ過ぎで、比較対照としてはどうかと思います。

マテ茶の広告で、「たくさん肉を食べているのに、太っていない。それは・・・」という宣伝文句をよく見ます。
太り過ぎと肥満率がけっこう高いことは、前に書きました。

日本の農林水産省は、「“肉を食べると太る”は誤解」と言っています。

「肉を食べると太る」そんな誤解をしていませんか?
実は肉の摂取はダイエットには効果的なもの。
赤身の牛肉には脂肪分を燃焼させる成分が含まれダイエット中に不足しがちな鉄分の補給もできるうれしい食材なのです。

農林水産省/MAFF NEWS 国産牛を食べて健康で美しいからだにより)

国産牛肉を食べようキャンペーンの一環でしょうが、実際問題、「肉を食べると太る」というのは誤解を含んだイメージで、太る原因は、肉と炭水化物ばかりの栄養バランスが悪い食事だったり、米国みたいに食べ過ぎで、食べ過ぎなのではないでしょうか。

マテ茶協会のホームページの中でも、管理栄養士の伊達友美さんが「肉食ダイエット」と称して、果物や野菜以外からもビタミン・ミネラルを補給することが重要としてマテ茶を勧めています。(参照)(*1)

野菜や果物も含むバランス良い食生活は重要だし、消費カロリーより摂取カロリーが大きかったら太ります。
もとタニタの管理栄養士の安中千絵さんは、著書の中で「ダイエットに覇道なし、王道あるのみ」と、座右の銘にしたいような名言を書いています。エネルギー収支を減らすという王道あるのみ。


野菜や果物を食べていなくても、マテ茶を飲めば大丈夫とか変な勘違いをしないよう注意が必要です。(売り方が、イメージ広告中心なので、勘違いしている人もいそう)

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ウルグアイ料理は、アサード(Google画像検索)という牛肉のバーベキュー料理のような肉料理が中心で、それにイタリアやスペインからの移民が持ち込んだパスタがよく食べられているそうです。(参照:ウルグアイ料理(e-food))


肉と炭水化物中心で野菜少ない、と太る要素がたくさん。

これで日本並みの肥満率を維持出来る社会なら、ウルグアイに移住したいです(マジで 笑)

(asado アサードの例)
201207mate0204
Noticias Rurales .com.uyより)



研究論文で「肥満体の被験者にマテ茶ほかの抽出物を服用させる実験をしたところ、45日で体重が5kg以上減った」というものがあります。よく、マテ茶の体重減少の例として宣伝文句で使われているものです。

その論文では、体重減少の原因についても書かれていますが、マテ茶の宣伝では「体重が減った!」ところばかり強調しています。

すでにかなり長文になってるので、これについては後半の記事「不都合かもしれない真実2」で。

マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)



(*1)ここでは「´美女大国´南米」(原文ママ)と、ちょっとイメージ中心すぎだと思える表現もあるのですが、せめて、中南米の美女国の3Cでマテ茶が・・・とか書いてみればよかったのに(笑)


この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。

メモ
うちのブログでは、マテ茶を応援しています。マジで。



2012年7月13日 (金)

マテ茶と健康|(1)序

コカ・コーラのペットボトル飲料『太陽のマテ茶』の売れ行きが絶好調だそうです。

コカ・コーラシステムが2012年3月19日(月)から全国で発売した新製品「太陽のマテ茶」の売れ行きが大変好調で、計画を大幅に上回り、発売 開始2カ月(5月18日時点)で4,000万本(500mlPET換算)を突破いたしました(*1)。
*1)出荷ベースを元に500ml換算。自社データ

日本コカ・コーラ | ニュースリリース

個人的にはマテ茶は嫌いじゃないし、暗い雰囲気ただよう今日この頃、『タベル、アソブ、マテ茶』のコンセプト(個人的に『栄養あるもの食べる、体を動かす、健康に気をつかう』と意訳)で、何となくでも元気が出そうな商品は応援したい気もします。

でも、前の記事で書いたように、その広告の内容には首を傾げるようなものがあります。

いろいろと調べていたら、いろいろと違和感を感じるネタが出てきたので、いろいろと書いてみましょう。
(この記事ではさわりだけを書いて、後の連続記事で情報ソースを載せて詳しく書きます。)



コカコーラが『太陽のマテ茶』を発売してから、ちょっとしたマテ茶ブームらしく、マテ茶の通販サイトが雨後の竹の子のように出てきました。こうなると、いい加減な広告も増えてしまうのは世の常なのでしょうか。
中には、『太陽のマテ茶』の宣伝文句の「マテ茶の"茶葉"にはレタスに比べて約25倍の食物繊維が含まれている」を劣化コピーして、「マテ茶にはレタスの25倍の食物繊維が含まれている」と書いている所も多々あります。

マテ茶|太陽のマテ茶<公式サイト>

マテ茶の「お茶」には、食物繊維はほとんど入っていません。
コカコーラに問い合わせた人もいて、「微量しか入っていない」と回答をもらったそうです。

『太陽のマテ茶』発売以前からマテ茶を販売している、いわゆる老舗の中には「マテ茶に含まれる成分に食物繊維を書いていない」ところもあるという事に気付いている人も多いことでしょう。

これが「マテ茶って食物繊維多いらしいね」と世間話する程度なら勘違いな笑い話で済みますが、通販サイトの広告だとダメでしょ。
そこんとこコカ・コーラは広告のやり方が、尊敬できないけど、うまくて、グレイゾーンを外れないぎりぎりの所を攻めています。
そして、うっかり者がブラックな所に入り込んでしまう。

(注)「マテ茶」とだけ書くと、「茶葉」か「お茶(浸出液)」か、あるいはマテ茶の植物か分かりにくいので、必要な場合はそう書くようにしています。

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(wikimedia commons)


「肉を沢山食べる」のに「南米の人には肥満体が少ない」、それは「マテ茶を飲んでいるから!」という、3点セットの広告を目にした人も多いでしょう。

実際のラテンアメリカを知っている人の中には「南米に肥満体が少ない???」と、違和感を感じた人も多いのではないでしょうか。


あのアメリカ合衆国と比べて低いと言っているのでしょうが、太り過ぎや肥満の割合は先進国平均と同じくらいで、けっこう高いです。
日本と比べると、太りすぎ率は2.5倍、肥満率は5〜6倍です。
(*)細かい説明、情報ソースやURLは、後の記事で載せていきます。



では、マテ茶には体重を減らす可能性はないのでしょうか?

ネットショップの広告では「マテ茶の抗肥満効果として、肥満患者にマテなどの抽出物のカプセルを45日間飲ませたところ体重が5kg以上減った」という宣伝文句が使われています。
これは論文の半分だけです。

論文の題名は「Weight loss and delayed gastric emptying following a South American herbal preparation in overweight patients(肥満患者における、南米の薬草調合剤による、体重減少と胃内容物排出の遅れ)」です。
題名から分かるように、論文では肥満患者の体重が減った原因は、胃内容物排出時間が遅くなったためだろうと書かれています。

日本でのマテ茶の広告では、日本マテ茶協会も含めて、「研究によると体重が減った」という、都合のいいところだけを抜き出しているところばかり。

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(wikimedia commons)


日本マテ茶協会のウェブサイトには、マテ茶とその魅力について多く書いてあります。
正直な感想として、(もっと酷い商品情報をいろいろ知っているので)ちゃんと書かれていると思いますが、なんか都合のいい事ばかりを抜き出しているような違和感も感じます。

これが、「健康茶」という輸入量・販売量が少なく利用者も多くはないだろうマイナー・ジャンルなら、わざわざ長文で書こうという気にはならなかったと思います。それは、知名度が低く研究も少ないというハイリスクなモノを、健康に良いらしいというハイリターンの可能性を期待して飲むわけですから、自己責任の部分が大きいと考えているからです。

しかし今年になってから、マテ茶の宣伝が大規模に行われています。
「マテ茶は、コーヒー、紅茶とあわせて世界3大飲料」だそうです。
コカコーラというグローバル・プレイヤーが「太陽のマテ茶」飲料を出してきて売れ行きも好調だそうです。

世界3大飲料の一つなら、日本語になってないだけで研究がされていないわけがない。実際に、私のような素人がちょっと調べただけでも、スペイン語やポルトガル語だけでなく、英語でもけっこうたくさん見つかります。



メモ
別に、賢い消費者を気取ろうというつもりはないんですよ。
ただ、311以後は特に、都合のいい情報だけを公開して「安全、安全」と言って誤魔化し続ける政府やマスコミ、企業のやり方にいらだつことが多いのは私だけではないでしょう?

マテ茶の広告では、都合のいい情報だけを公開して「健康にいい、健康にいい」と言って売っている感じじゃないですか。
最初に書いたようにマテ茶は嫌いじゃないし一般的になって欲しいけど、ちょっと日本語情報を増やしてみようか。こんなところ。

次は「(2)不都合な真実」、その次は「(3)発ガン・リスク?」の予定。(タイトルは変えるかもしれません)
2日以内に公開予定。

マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(前編)
マテ茶と健康|(2)不都合かもしれない真実(後編)
マテ茶と健康|(3)発がん性リスク

以下、続きます。

この記事は、医者ではない当ブログ管理人が書いたものであり、健康に関するアドバイスではありません。健康についての判断が必要な場合は医師の指示を仰いでください。



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(wikimedia commons)

2012年7月 7日 (土)

『希土類少女(レアアース・ガール)』 青柳碧人著 読了

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レアアースのニュースを調べていて偶然に発見した一冊。


希土類少女 青柳碧人著 「レアメタル産む少女」の切ない話(日本経済新聞)

 ガドリニウム、モリブデン、ジスプロシウム……。あまり聞き慣れない元素名だ。それら希少な金属、いわゆるレアメタルは、現代日本のエレクトロニクス産業には不可欠な物質である。
 そこに注目した本書の設定は、それがなんと日本の少女の身体から産出されるという「レアメタル生成症候群」。  鉱物資源の少ないわが国では、海外からの輸入に頼っているわけだから、まことにめでたい現象のように思える。
(中略)
主人公はレアメタルの中でもさらに希少な、希土類元素(レアアース)を産出する娘で、死生観や恋のエピソードが、金属元素をめぐる逸話も交えながら展開し、非常に味わい深い。

作者の著書は初見。ミステリー作家らしい。
最初、文庫コーナーやラノベコーナーを探してさ迷ってしまったが、四六判のソフトカバーの単行本。



13歳から25歳までのごく一部の女性に現れる「レアメタル生成症候群」。体内でレアメタルが生成される症状のことを言う。
彼女達が生み出すレアメタルは製錬の必要がないほどの高純度で、安定して供給されるため、国家によって家族から引き離され、隔離されて、学生寮のような施設で暮らしている。そこには、典型元素棟、遷移元素棟、レアアース棟とあって彼女達は共同生活をし、時には体育祭なども行われている。

主人公の冴矢は、わき腹からジスプロシウムの塊を生み出す。ジスプロを生み出す人は、今は1人しかいない。

本作で面白かったのはキャラクター紹介で、普通はまず外見や雰囲気、性格などが描かれると思うが、本作ではまず彼女の持つ症状のレアアースの原子番号、元素記号と密度、特徴が書いてある。
冴矢は「ジスプロシウム、原子番号66・元素記号Dy・密度8.55g/cm3、工業的に重要な価値を持つ・・・」。他のレアアース少女たちでも詳しく書かれていて、あたかもレアアースの特徴が彼女達の一面でもあるかのようだ。もちろん、会話や行動描写でどんなキャラかはイメージできるが、面白い描き方をしている。

さあ、「レアアースを生み出す女性たち」というアイディアで、どう話が動いていく?


世界的な資源獲得戦争に巻き込まれる中、彼女達は、レアアースの特徴の特殊能力を持つ魔法少女レアアース少女として活躍、イットリウム少女はYAGレーザーを発射し、ラストでは主人公のジスプロ少女が超磁力パンチを放って敵の機動部隊を機能停止、壊滅させるのだろうか・・・、
とまあ、作者の作風をぜんぜん知らないので勝手な妄想して、(↑これは当然、妄想の産物です(笑))、わくわくしながら読み進めた。

途中、ちょっと戸惑うところもあったけど・・・

なるほど、こうきたかー



レアアースの特徴をうまくとりあげて、製錬・加工している。

結末は読む人それぞれの好みだけど、最後まで読んでから思い返してみると、白金族を生成するお嬢さまグループや、その他の道具立てもゴニョゴニョゴニョ
前作について、ミステリ作家の北山猛邦が「絶妙なバランスにある」とコメントした(wikipedia)そうだ、本作も面白いバランスで書かれている。


もしかしたら、新しい鉱脈を発見したのかもしれない。
前作も読んでみよう。



浜村渚の計算ノート (講談社文庫)
青柳 碧人

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

浜村渚の計算ノ-ト 2さつめ ふしぎの国の期末テスト (講談社文庫) 浜村渚の計算ノート 3さつめ 水色コンパスと恋する幾何学 (講談社文庫) 浜村渚の計算ノート 3と1/2さつめ ふえるま島の最終定理 (講談社文庫)

2012年7月 6日 (金)

南鳥島沖の深海底のレアアース|資源価値と採掘方法

Rareearthoxides
(wikimedia commons)

南鳥島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の深海底の堆積物に、高濃度のレアアースが含まれることが確認された。

ハイテク製品に欠かせず、現在、中国が独占的に供給している、希少な金属「レアアース」が、日本の排他的経済水域にある南鳥島近くの海底に多く存在していることが、東京大学の調査で分かりました。 日本の経済水域でまとまった量のレアアースが確認されたのは初めてで、埋蔵量は国内の消費量の220年分余りに上るとみられています。

南鳥島海底に大量のレアアース(NHKニュース)(Googleキャッシュ)

今回の発表で注目されるのは、まず、ハイブリッド車のモーターに使われる「ジスプロシウム」や、液晶テレビに使われる「テルビウム」などが高い濃度で含まれていること。これらの重希土類元素は、現在は中国南部のイオン吸着型鉱床でしか生産されていないので、ほぼ100%を依存している。

そして、水深5600mという大深度であるということ。

この深海底のレアアース資源泥の採掘方法について、意外と触れられていないようなので少し。



レアアース資源泥は、今回発表と同じ東京大学の加藤泰浩教授の研究グループが、2011年7月に発表した、レアアースを高濃度で含有する深海底堆積物。海底火山等の熱水活動によって放出された物質が海水中のレアアースを吸着・濃縮して、堆積したものと考えられる。深度3,500 ~ 6,000 mの深海底に層状に広く分布する。
研究グループでは、レアアース資源泥は日本の主権がおよぶ排他的経済水域内でも存在している可能性が高いと考え、その発見を目標として研究を進めていた。

全く新しいタイプのレアアースの大鉱床を太平洋で発見(pdf)(東京大学)

(*)加藤泰浩教授の著書が、もうじき出版される予定です。

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今回、確認された南鳥島沖のEEZ内のレアアース資源泥の資源価値と採掘方法は、昨年の発表後の8月1日に文部科学省で行われた海洋鉱物委員会での、加藤教授への「レアアースを含む海底堆積物に関するヒアリング」の議事録と資料が参考になる。

海洋鉱物委員会(第14回) 議事録:文部科学省

ヒアリングでは、発見に至る簡単な経緯やNature Geoscience誌に全く書いていないことも含めて、分かりやすく説明している。科学コラムみたいで面白い。お奨め。(*1)


簡単に書くと、技術的に解決しなければならない部分もまだまだあるが、これから採掘方法を考えるという状態ではない。現在の原油・天然ガス採掘方法で採用できるものも多く、実現性は高いと感じられる。(その“あと少し”がとても大変なのは、よく分かっている)

加藤教授はヒアリングで、実証試験まで半年、基礎調査で3年、「最速で行くと、5年後くらいにはいけるのではないかと思っています」と言っている。


2011年のタヒチ沖のサンプルで資源価値が計算されている。

201207ree0101
海洋鉱物委員会(第14回) 配付資料:文部科学省

タヒチ沖(Site76)のレアアース資源泥を、4km2(2x2km)、海底下の地下10mまで掘った場合、総レアアース量は約36,000トン(酸化物換算)、ジスプロシウム量は約1,400トン(金属Dy)。
陸上のレアアース鉱山と違って、開発の障害となるトリウムやウランなど放射性物質をほとんど含まない。

南鳥島沖のサンプルの濃度は、平均1100ppm、最大で1700ppm。意外と、平均濃度は同程度だった。その理由は、生成過程にありそうだ。(本筋でないので後述→(*1))
1km2あたりで再計算(細かく計算しても仕方ないのでざっくりと計算)すると、レアアース量は約8300トンとなる。同じく、タヒチ沖(Site76)と同程度のDy含有量とすると、ジスプロシウム量(金属Dy)は約320トン。これは国内の年間消費量の4〜5割にあたる。

報道では、その海域のレアアース量は680万トンとあるので、海底下10mで均したとして約800km2、ざっくりと1000km2の範囲に分布しているのだろう。これは東京都の陸地面積の約半分にあたる。
全部掘る事を想定するのはナンセンスだが、4km2を掘っただけでも、年間消費量(2011年)をまかなうことが出来る(ジスプロは年間消費量の2倍)。


採掘は、石油・天然ガスの採掘で使われているFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)で想定されている。(*)Floating Production, Storage and Offloading system
FPSOは、採掘から生産までを行える洋上施設で、現在は海洋石油・ガス生産設備の6割以上を占める最もポピュラーな生産設備。
FPSOについては、三井海洋開発の「FPSO/ FSOとは」ページが詳しい。

201207ree0102
海洋鉱物委員会(第14回) 配付資料:文部科学省

大深度の海底の油井・ガス井では、固定式のプラットホームは使えない。タンカーと同じ船体を使ったFPSOだと、海が荒れた時に係留設備を残して避難できるし、防噴装置(BOP)を海底に設置するのではない頻繁に移動する採掘方法にも適しているだろう。

水深5600mの大深度から吸い上げる方法は、ライザーパイプに空気を送り込んで、泥に混ぜて浮力を与える、エアリフト方式が検討されている。
膨大な量の資源泥を処理しなければならないので、吸い上げ能力と処理能力が気になるところだ。

採掘システム構築のためのロードマップを見ると、実証試験までうまくいけば、そのまま一気に生産を進めることが可能かもしれない。(その“あと少し”がとても大変なのは、よく分かっている)


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コストについてもいろいろ計算してみたけれど、価格変動が大きいし、まとめるには情報不足。

詳しいことは7月20日に開催される、エネルギー・資源フロンティアセンター主催のシンポジウム「レアアースのすべてを語る ―海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまで―」で明らかにされることだろう。

【シンポジウム:レアアースの全てを語る】(2012/7/20) - 最新情報(東京大学)
201207ree0103



(*1)
なぜ南鳥島沖で、高濃度のレアアース資源泥が存在しているかというと、熱水活動の盛んだった白亜紀にレアアース資源泥が効率的に生成され、太平洋プレートが動いてきた結果だそうだ。

大陸や半島からでなくて良かった、と思ったというのは内緒の方向で(笑)




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2012年7月 3日 (火)

蛟竜号|中国の深海潜水艇と海洋軍事戦略

201207kou0102
新浪网より)

中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号が、マリアナ海溝で水深7062mの潜水記録を作った。

日本国内メディアの記事をいくつか読むと、通信社の配信記事か中国メディアの記事の紹介ばかりで、中国の海洋資源の調査と開発については書かれている(まったく触れないものもある)が、金太郎飴状態。
幸いにも、毎日新聞社が「潜水技術の軍事転用」に触れていた。他人事な表現なのは残念だったが。

中国メディアによると、中国は今後、マリアナ海溝の最深部(水深約1万1000メートル)で活動が可能な有人潜水艇の開発を目指す。一方で、海底資源調査の活発化や潜水技術の軍事転用に対する懸念が周辺国や欧米諸国で強まる可能性もある。

中国:有人潜水調査船、7020メートルに到達(毎日新聞)

2009年の南シナ海での3000m級潜水試験の時のように、深海底に中国国旗を置くなどの話題性がなければ、紙面を割こうとしないのだろう。そのうち、保守色強いところや軍事色が強い雑誌が触れると思うけれども、日本語の記事や書き込みで、軍事転用を気にする人は(某巨大掲示板を含めても)意外と少ない。

中国は短期〜長期戦略目標を設定し、海洋技術開発をすすめ、「海洋大国」と「海洋強国」となることを目指している。(参照:cn

中国メディアで軍事の専門家がいろいろと言及していたので、中国の深海潜水艇とその技術の軍事的な側面を中心に、紹介をしてみたい。
(軍事には詳しくなので、変な素人表現になっている所もあると思います。ご容赦ください。)

海底資源の獲得を目指しているという話は、わざわざ書くまでもなく本気で狙ってきている事なので、特には触れていません。





中国は軍事・戦争に関して、戦闘力以外の非物理的手段を重視してきている。「三戦」と呼ばれる「輿論(世論)戦」、「心理戦」および「法律戦」を軍の政治工作の項目に加えたほか、「軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させる」との方針も掲げている。
(参照:平成23年版・防衛白書

海底資源の利用は、国連海洋法条約に基づいて設定された排他的経済水域(EEZ)や深海底鉱物資源の枠組みが決められているが、これまで、アメリカ合衆国は国連海洋法条約を批准していなかった。しかし中国の海洋進出が活発化したことに危機感を強め、批准手続きを進めている。早ければ今年中に批准するだろう。この方針転換には、中国の海洋戦略での「法律戦」に対抗する意図がうかがえる。


余談だが、中国は、現在ではEEZをあたかも領海のように拡大解釈をし、外国の軍艦が中国のEEZを通行する場合にも承認申請をするように求めている。・・・にも関わらず、日本のEEZや領海では我が物顔で、国際的に認められた特定海峡(3海里外)であるとして隊列を組んで通過していく。
南シナ海、中国政府の大暴論(ニューズウィーク日本版))

何だかなあ。

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閑話休題、

蛟竜号の関係者は、蛟竜号は科学研究目的だとよく発言をしている。
中国国防部も、蛟竜号(それと、同時期に打ち上げられた有人宇宙船「神舟9号」等の宇宙技術開発)は軍事目的では無いと繰り返しアピールしている。
「蛟竜号」それ自体は、中国海洋協会(COMRA)と国家海洋局が使う深海潜水艇だから、「蛟竜号は科学的調査が目的」とはっきり言うことは出来る。しかし研究開発された海洋技術の応用や、今後開発される予定の有人潜水艇や無人潜水艇についてはあまり言及はされない。

国防部の定例記者会見はいつも通りのやりとりで、
記者が「外国メディアが、軍事的な用途について推測してますが・・・」
と質問をすると、
国防部スポークスマンが「それはまったくのでたらめだ」(意訳)
と回答をする。何か、時代劇の台本を読んでいるような気分になってくる。

「自分たちは平和利用目的と言っているのに、外国が難癖をつけてきている」という、いつもの自己正当化をして世論を誘導する方法だろう。

中国の有人潜水艇「蛟竜号」は、深海科学研究と海洋環境保護に携わるために研究され、人間の海洋に対する理解と海洋の平和的開発と利用のために、プラスの役割を果たすだろう。

中国的“蛟龙号”载人潜水器是为了服务深海科学研究和海洋环境保护而研制的,它对于人类认识海洋,和平开发利用海洋,将发挥积极作用。

国防部:中国军队已经建立常态化战备巡逻机制(中国政府网)

正直な話、中国人をはじめとして、関連技術も含めて軍事用途に使われないとは誰も信じていないと思う。

実際にはどうかというと、各国の有人深海潜水艇がこれまで行ってきた作業は、民間・軍事にかかわらず遂行できるだけの能力を持ちつつあると見るべきだ。ただし長期間の運用が出来るかどうか、今後試されることになる。
今回の6回の7000m級潜水試験を一通り追いかけていたが、後半数回の潜水試験はとても安定した運用をしていた印象をもった。

南シナ海の水深3000m級の海盆でも充分に運用できるだろうし、東シナ海は楽勝だろう。

中国国産の4500m級有人深海潜水艇の開発計画も進んでいる。

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中国軍事科学院の杜文龙(杜文竜)研究員が、6月23日の湖北卫视(湖北衛星放送)の番組でインタビューに答えている。
その中で、深海潜水艇は天然ガスなどの海底資源の探査と開発に非常に重要であると強調するとともに、米国やロシアの深海潜水艇の軍事的な運用実例をあげて、同じように中国でも深海技術の軍事面への応用が可能であることに触れている。
(*)中国語のヒヤリングは苦手なので、字幕と映像を元にしています。

杜文龙:不排除蛟龙号深海技术用于军事
 (蛟竜号の深海技術を軍事に使う事を排除せず)
杜文龙:蛟龙号志在南海之外的深海地区
 (蛟竜号は南シナ海の深海を調査する)
杜文龙:蛟龙号比美国阿尔文技术更先进
 (蛟竜号は、米国のアルビン号の技術よりも進んでいる)
(動画:いずれも鳳凰视频)


また、香港の大公报紙の6月20日の記事『中国深海开发占据战略主动』(中国の深海開発の戦略)で、中国人民解放軍海軍の刘江平(劉江平)大佐はこう書いている。

西側メディアは、蛟竜号は“強大な軍事的な潜水能力”を持つと言う。実際のところ、蛟竜号の目的は主に科学研究である。ただし客観的には、蛟竜号の遠隔通信、電子的・機械的な先進技術は軍事でも使えるものだ。特に深海潜水艇の研究開発技術はそうである。蛟竜号の研究開発の成果は、祖国の広大な領海の防衛、特に水面下の安全を守る上で重要な貢献をするだろう。

有西方媒体认为,蛟龙号“具有强大的军事潜能”。其实,我国研制蛟龙号主要是用于科考目的,但客观上蛟龙号在通信遥控、电子、机械等方面的技术突破都可用于军事,尤其是用于深海潜艇的研制。蛟龙号的研制成果,可以说为保卫祖国的辽阔海疆,尤其是保卫水下安全方面作出了重要贡献。

中国深海开发占据战略主动(大公网)

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では、具体的にどのような軍事面の応用が考えられるだろうか?


香港の大公报紙の6月14日の記事は、

現在、中国は海洋の主権に関して未曾有の複雑な情勢と困難な任務に直面している。“龍(蛟竜)”は凄まじい勢いで進み、中国の科学技術レベルをめざましく発展させてきた。中国の海底資源の調査と開発レベルを高め、同時に海軍軍事技術も向上させている。人民解放軍海軍の海洋での三次元的作戦体制は完全となり、シーパワーはさらに力強く維持されることだろう。

现今,中国维护海权正面临前所未有的复杂形势和艰巨任务,“蛟龙”的,折射出中国科技水平的飞跃,既有助提升中国对海底资源的勘探开发水平,同时海底军事技术的提高,将使解放军的海洋立体作战体系更加完备,从而更好地维护海权。

港媒:蛟龙号深潜器可作军用 为潜艇绘制海图(腾讯网)

三次元的作戦体制が向上するということは、中国海軍の作戦能力全体が向上するということであり、将来的にはさらに空母を使った海上航空戦力も加わる可能性が高い。

続けて、蛟竜号で研究開発され実地検証された水中通信システムや自動定位システムは、海軍潜水艦への応用が可能であることと、高性能サイドスキャンソナーで調べられた精細な海底地形図は潜水艦の作戦遂行能力を高めるだろう、と書かれている。



台湾の「亚太防务(アジア太平洋防衛)」誌の郑继文(鄭継文)(*)は、深圳卫视(深セン衛星放送)の番組で、深海潜水艇と関連技術の軍事利用の危険性を詳しく述べている。
(*)軍事雑誌『全球防衛』誌の編集長。

201207kou0101

高速水声通信技术 采用声纳技术(高速水中通信技術 ソナー技術)
截获或剪断海底线缆 (海底通信ケーブルの切断あるいは傍受)
回收海床上的外国武器 (海底の外国製兵器の回収)
维修 救援海军潜艇 (海軍潜水艦の救援と補修)
悬停定位能力 (慣性航行能力?)

蛟龙号可回收海床上的外国武器 救援海军潜艇
 (蛟竜号は、海底の外国の兵器の回収や、海軍潜水艦の救援が出来る)
郑继文:蛟龙号7000米海试凸显中国科技成就
 (蛟竜号の7000m潜水試験で、中国の科学技術の成果は明らかになった)
专家:中国核潜艇用蛟龙技术或突破500米深潜
 (蛟竜号の技術を用いた中国の核原潜は水深500mを越える)
专家:蛟龙号有望提升中国核潜艇通讯系统
 (蛟竜号は、中国の核原潜の通信系統をアップグレードさせる)
专家:蛟龙号有助于中国核潜艇突破岛链
 (蛟竜号は、中国の核原潜の列島線の突破を助ける)
专家:美军自主式无人潜水器或将统治深海
 (米国の自律無人潜水艇は、いずれ深海を統治するだろう)
(動画:いずれも鳳凰视频)


全部を細かく書くと長くなるので、特に重要と感じたものをいくつか書いてみよう。

人民解放軍海軍は、潜水艦部隊の作戦能力を高めるために海底地形図の作成を進めている。
深海潜水艇(有人/無人)の高性能サイドスキャンソナーを使って作成された精細な海底地形図によって、潜水艦の隠密性が高くなる。待ち伏せ作戦や浸透作戦が行いやすく、潜水艦部隊の作戦能力が向上するだろう。
これは、対潜水艦監視網が強固になることも意味している。中国の接近阻止戦略(*)に大きく関わってくる。(*)接近阻止・領域拒否(A2AD)。

6月25日に米国の原子力潜水艦がフィリピンのスービック港に入港した。入港前に南シナ海の調査も行ったとみられるが、明らかにはしていない。(参照
中国海軍としては、米国海軍の行動を事前に牽制あるいは阻止したかったことだろう。


蛟竜号で使われ、性能の検証が行われた中国国産の技術として、水中通信システム、ソナーや定位システム、自動航行システムが特に注目されている。

今年、中国の最新の原子力潜水艦に水中通信上の問題があるという報道があった。

技術に問題なのは通信能力の不足だ。米国防総省が2年前に発表した報告書によると、人民解放軍の潜水艦は、海上に浮かび上がるか、通信ブイを水面に出さなければ外部と通信できない。これではすぐに敵の攻撃を受けてしまう。

中国が開発中の新型原子力潜水艦には「技術・政治的に深刻な問題」—SP紙(レコードチャイナ)

これが事実かどうかは分からないが、蛟竜号で使われたデジタル水中通信システムは、潜水艦の通信システムの性能アップや問題の解決に寄与するだろう。

ソナーと定位システム、自動航行システムは、そのまま遠隔操作無人探査機(ROV)や自律型無人潜水機(AUV)に応用され、性能の向上が見込まれる。
郑继文は、米国海軍が研究している無人潜航艇について触れ、中国海軍も将来的に軍用無人潜航艇を配備する可能性を示唆している。

中国では、蛟竜号の研究開発が行われるまでは、水深600m(6,000mじゃないよ)までの有人潜水艇の運用経験しかなかった。海軍の深海救難艇(DSRV)の性能も同程度と思われる。当然、米国海軍や海上自衛隊のDSRVの潜水・救助能力を目標にした、新たなDSRVを開発するだろう。



いつか国防部のスポークスマンが記者会見で聞かれたら、こう答えるんじゃないだろうか。

「蛟竜号は、科学調査を目的として研究開発されたものだ。」
「その後に建造されたものは、蛟竜号とは関係のない別の潜水艇なので、一切、嘘は言っていない。」

「仮に、蛟竜号と似たシステムが載っていたとしても、我が国が自主開発をした技術を国土と人民の防衛に使って何が悪いというのか。アメリカやロシアもやってきたことではないか。」

それはまあ、その通りなんですけどね。

過去からの教訓:中国政府の公式発表は、頭から信じ込んではいけない。



メモ
米ソ冷戦の頃から、いろいろと言われてきただろうこと、再び。

蛟竜号の潜水試験が行われている間に公開した方が良かったかもしれないけど、事故があったら後味悪いので潜水試験が終わるまで待ってみた。
むしろ、成功に気をよくしたからか、参照できる記事が増えた。

日本語訳が微妙なのは勉強中の身なので、ご勘弁ください。噛み砕いて書こうとしている・・・つもりです(苦笑)




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