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« 「世界で最もクレージーな道路」はどこなのか調べてみた | トップページ | 【尖閣】中国の漁船群の正確な位置(9/18)。衛星海図より。 »

2012年9月19日 (水)

【尖閣】「中国の漁船1000隻」はどこにいった?印象情報か?

201209sen001
凤凰网より)

尖閣問題についてニュースやワイドショーを見ていると、評論家やコメンテータが、さも見てきたかのように「中国の漁船1000隻が尖閣諸島に迫っている」と言っている。

中国の港を出港する、中国国旗をはためかせた漁船の映像をバックに、このコメントを聞き、今日明日にでも尖閣諸島に漁船1000隻が押し寄せると感じる人も多いのではないだろうか。
中には、一斉に上陸作戦を行うと思いこんでしまう人もいるかもしれない。
これはちょっと不安感が強すぎると思う。

また、あの映像や画像は禁漁期間が終わった後の出漁している漁船で、尖閣諸島とは関係ないというコメントもある。
これはちょっと楽観的にすぎると思う。
(過剰な報道を冷ますためにコメントしたのかな?)

漁船は洋上にあり、実際のところはまだ分からない。
中国の外交部の報道官は、18日の記者会見で回答を避けて、ごまかした。
(参照:2012年9月18日外交部发言人洪磊主持例行记者会

9月18日夜までの日本メディアと中国メディアの報道をいろいろ読んでみると、漁船1000隻(千艘渔船)という数字だけが一人歩きしているように感じる。

まず冷静になり、冷えた頭で考えてみよう。

結論は、
 尖閣諸島周辺の広い海域で漁をしてきた漁船の数が、年に1000隻(のべ数ではないようだ)。
 日本と中国のマスメディアが、読者・視聴者を意識したタイトルを付けて、参照をしあった結果、「漁船1000隻」という記事が氾濫し、常套句となり一人歩きをしている。

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日本メディアでは、例えばNHKは中国国営の中央人民ラジオの報道、日本経済新聞は中国国営ラジオの中央人民放送(電子版)と報道している。(どちらも同じもの)

中国国営の中央人民ラジオは、休漁期間が終了したことから、17日、沿海部の浙江省や福建省などから漁船1万隻余りが出港し、このうち1000隻が、17日午後、尖閣諸島の周辺海域に到達する見通しだと報じました。
NHKより)


“漁船1000隻が尖閣に”と報道(NHK|9月17日 19時50分)

中国漁船1000隻、18日にも尖閣海域に到着(日本経済新聞|9/17 20:19, 9/18 0:35更新)


中央人民ラジオや中央人民放送とは、中央人民広播電台(China National Radio(CNR))で、その番組「中国之声《全球华语广播网》」だろう。
後に書く中国メディアの転載や引用で書かれているし、国際ニュースでよく参照される番組だ。

中央人民広播電台の電子版の "中国广播网" の記事
 「东海伏季休渔结束千艘渔船今或抵钓鱼岛海域捕鱼」
 (東シナ海での休漁期間終了 今日、千隻の漁船が尖閣諸島海域に到着し漁を行う)
が元ネタと考えられる。
(中国广播网の記事は、なぜか404 not found で、すでに削除されている。)

他の中国メディアが、タイトルも含めて転載しているので、参照してみよう。

东海伏季休渔结束 千艘渔船今或抵钓鱼岛海域捕鱼(新华网|9/17)

历经三个月的东海伏季休渔后,浙江、福建等地万余艘渔船启程出海,预计有千艘渔船将于今天下午抵达钓鱼岛海域。农业部门表示,将做好一切出海护渔维权和执法管理的准备。而对于重返渔场的渔民,此刻有期待,也有忐忑。

3カ月の東シナ海での休漁期間が終了し、浙江省、福建省ほかの1万余隻の漁船が出航した。今日午後に1000隻の漁船が尖閣諸島(钓鱼岛)海域につく見通し。農業部によると、漁業の権利と保護のための準備が行われる予定である。漁民たちも、漁場への復帰を不安とともに楽しみにしている。

日本メディアが「漁船1000隻」を伝えた17日夜の記事の後から、「千艘渔船」をタイトルに使う中国メディアの記事が、前日までは数本だったのが、一気に増えた。
勇ましさを強調したタイトルなので、常套句となったと考えられる。

日本メディアと中国メディアが、読者・視聴者を意識したタイトルを付けた結果のようだ。

では、漁船1000隻の根拠はあるのだろうか?

中国メディアのどの記事も、農業部による発表と書いている。
(それ以外の根拠を示している記事は、まだ見つけていない。)

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もとになっているのは、農業部漁業局の尖閣諸島問題(钓鱼岛问题)の担当者による、9月13日の記者会見。

农业部渔业局有关负责人就钓鱼岛问题答记者问

この記者会見では、「漁船1000隻」に該当する部分は1箇所しかない。

据不完全统计,福建、浙江等沿海省每年进入钓鱼岛海域作业的渔船约有1000多艘。我国渔民在钓鱼岛海域始终拥有无可争辩的渔业权益。

不完全な統計によると、福建省、浙江省等の沿海地域の省から毎年、漁船1000隻以上が尖閣諸島(釣魚島)海域に入り漁をしている。我が国の漁民が、尖閣諸島(钓鱼岛)海域での漁で収益を得てきたことに疑う余地はない。


3カ月の禁漁期間を終え、中国の漁船団が、尖閣諸島海域で漁を行うことについての正当性を主張したもので、歴史的な経緯や漁獲高などとともに、年に1000隻の漁船による漁業活動があげられている。
(この記者会見の他に、農業部のコメントとして漁船1000隻が当該海域に向かうというコメントがあったのかもしれないが、見つけられなかった。)

漁船1000隻が出港したとは言っていない。

ところが、前述した中国广播网など、一部の中国メディアがタイトルに使ったところ、日本メディアがそのまま報道。
つぎに、その日本メディアの記事を中国メディアが参照し、実際の状況が分からないまま「漁船1000隻」の数字が一人歩きをしたようだ。


農業部が発表した「年に1000隻の漁船」は、延べ数だろうか?
2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の時の記事で、その漁船"闽晋渔5179"が所属している福建省の港だけで、尖閣諸島海域で操業する漁船は100隻あると書かれている(参照:cn)。

尖閣諸島海域の漁場で1000隻が操業する可能性は、ないとは言い切れない。

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南方周末の記事によると、尖閣諸島海域が属する漁区は闽东渔场(福建東漁場)と台北渔场(台北漁場)だそうだ。

东海休渔期结束千艘渔船将赴钓鱼岛海域作业(東シナ海の休漁期が終了 1000隻の漁船は尖閣諸島(钓鱼岛)海域に行き、漁をするだろう)(南方周末|9/16)

钓鱼岛及其附属岛屿位于我国东海大陆架上,其附近海域属于我国渔民历来所称的闽东渔场、台北渔场,渔区面积约1.2万平方公里。

魚釣島(钓鱼岛)と付属島嶼は、我が国(中国)の大陸棚場にあり、その付近の海域は我が国の漁民が歴史的に漁業を行ってきた闽東漁場と台北漁場である。漁業区域の面積は1.2万平方キロメートルである。


尖閣諸島は、北緯25度44分~56分、東経123度30分~124度34分の海域に位置する。(参照:wikipedia

闽東漁場と台北漁場の位置を確認してみよう。

海洋渔场生态特征数据库 - 国家农业科学数据中心(海洋漁業データベース)

闽东渔场
 位于福建省北部近海,其范围为26°00ˊ~27°00ˊN,125°00ˊE以西海域,面积约为16600平方海里 (福建省北部近海、(中略)面積は16600平方海里)
台北渔场
 位于台湾省东北部,其范围为24°30ˊ~26°00ˊN,121°30ˊ~124°00ˊE,面积约为10600平方海里 (台湾省の東北部、(中略)、面積10600平方海里)

闽東漁場は、東経125度より西の海域で、大陸まである。台風襲来時の地図が分かりやすい。

201209sen002

台北漁場は、闽東漁場の南側で、東経121度30分〜124度00分。
台湾の台北市がだいたい東経121度30分なので、そこから北東海域、魚釣島と大正島の間くらいまでと考えればだいたい当たる。

中国の農業部の主張では、2つの漁場の中のどの範囲で1000隻が漁をしてきたのかまでは書かず、少しぼかしてある。

日本と中国のマスメディアが報道している漁船群は、これらの漁場の、比較的に尖閣諸島に近いあたりの海域広くで漁を行うのではないだろうか。
(より適切には、トロール可能な地形や、漁場の水深などを参照する必要がある)

追加記事:【尖閣】中国の漁船群の正確な位置(9/18)。衛星海図より。

血気盛んな漁業組合の漁船群が尖閣諸島に近づき、接続水域や領海での漁を試みるかもしれない。
大陸近海の漁業が壊滅状態なので、尖閣諸島周辺のほとんど手つかずの漁場は宝の山に見えることだろう。
しかし、その数は1000隻はいかないと思う。

全ての漁船が出港していて、全ての漁船が同じ海域で漁ができるわけはない。

漁船に乗っている漁師の父ちゃん・兄さんたちは、漁をして、持って帰って水揚げしないと、燃料費が稼げないし、なにより母ちゃんに怒られる(怖)
尖閣近くに行くより、そっちが重要という人も多いんじゃないかな(笑)

もちろん、中国漁船の中には、上陸を目論む活動家の船も混じっているかもしれないし、上陸用の小型ボートを乗せているものもあるかもしれない。
もし中国の行政や各種団体による動員が行われているとするなら、とりあえず尖閣近くに立ち寄らせて、見た目の漁船数を増やす工作もしてくるかもしれない。

じきに、航空写真などが出てくることだろう。

海上保安庁の巡視船や水産庁の漁業取締船の隊員のみなさん、ご苦労さまです。
 ビシッ ∠(・_・)



メモ
一連のニュースを見たり読んだりしていると、日本メディアの報道は画一的で、薄っぺらで、他方面から見たものがとても少なく感じます。

兵力を見誤って作戦を立てるのは、間違いのもと。
頭に血がのぼっただけで行動をするような奴が自陣にいると、敵以上に味方に損害を与えるかもしれない。

もちろん、一個人のひとつの意見です。

どこの魚の骨とも分からない奴が書いたものなんだから、頭っから飲み込まずに、冷静に、適切に、噛み砕いてみてください。
喉にささるかもしれませんよ(笑)



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