【尖閣】領空侵犯した中国海監の航空機の機長インタビュー|海監の戦略
(沈阳晚报电子版(pdf)より)
12月13日に、国家海洋局・中国海監の航空機"B-3837"機が、尖閣諸島の領空侵犯をした。
2機の海洋監視機(中国メディア日本語版はこう表記している)が浙江省の舟山基地を出発し、"B-3837"機は最低高度は60mで飛行した後、領空内で28分旋回したそうだ。
"B-3837"機に乗っていたのは、パイロット2人と中国海监のスタッフが5人。
中国海監は、船舶や航空機が"非武装"であることを「三戦(世論戦・法律戦・心理戦)」の武器としているので、海洋監視機とパイロットの所属がどこか気になっていた。
中国海監・東海航空支隊の海洋監視機"B-3837"機の機長の取材記事が、出身の遼寧省の瀋陽晩報(沈阳晚报)電子版に載っていた。(*1)
記事は短いものだが、その話と合わせて軽く書いてみたい。
辽宁老乡驾机完成 首次钓鱼岛巡航任务(沈阳晚报电子版|12/15)
(*1)この紙面の"B-3837"機と尖閣の島々は合成写真でしょう。
中国海監の監視船や航空機についてのニュースを見聞きしていると、中国海監は日本の海上保安庁と同じような組織で、中国海監所属の艦船や航空機、海監の隊員だけが最前線に出動しているとイメージされるのではないだろうか。
実際には、海監の航空機(固定翼機・ヘリコプター)には、中国海監が所有しているが航空管制やサービスを航空会社に委託していたり、航空会社等からレンタルしている機体などがある。またパイロットが航空会社に所属している場合もある。
今回、領空侵犯した"B-3837"機のパイロット2人がそれで、中航工業の飛龍通用航空有限公司(中航工业飞龙通用航空有限公司)に所属している。・・・つまり「民間人」?
挑発にのって過剰な対応をしてしまうと、逆効果になるだろう。
地元出身者がニュースになっていたら、ローカル紙がインタビューを試みるのは万国共通らしい。
(中国メディアのネット化は、日本以上に進んでいるので、こういうローカル記事も結構簡単に見つける事が出来る。)
"B-3837"機のパイロット2人(陈书军(陳書軍)、张洪军(張洪軍))のうち、機長の陳書軍は遼寧省丹東市の出身。48歳。元中国空軍のパイロットで、除隊後に中航工業の飛龍通航に入社し、その後ずっと、海監の仕事に関わっているそうだ。
世界の空軍(日本の航空自衛隊も含む)パイロットが、除隊後に経験と資格を活かして、民間航空会社のパイロットに転職するのも万国共通のようだ。
今年6月からずっと家に帰れなくて、母ちゃんと子供に会ってないんだよ、と苦笑いしている。(苦笑)
ところで、領海侵犯した中国機への海上保安庁の警告に対して、"飞行员(パイロット)"が無線で、次のように回答したと報道されている。
中国巡逻机的飞行员回答称:“这里是中国的领空,我们是在自己的领空巡航”。
中国のパトロール機のパイロットは「ここは中国の領空である。我々は自国の領空パトロールをしている」と回答した。
(中国飞机巡航钓鱼岛回应日方:是在自己领空巡航より)
中国政府は"法執行"任務として、海と空からの立体パトロール(巡航)を行ったと言っている。他国への回答も、その"法執行"任務に含まれる。
しかし、もし”民間人のパイロット”が海保の警告に対してそう回答したのなら、それは法執行を行う資格がない人が行った事にならないだろうか?
分かりやすく書くと、警察官を乗せたハイヤー、その雇われ運転手が「スピード違反だ逮捕する」と叫んだ事を、警察の摘発実績にした感じ。
"飞行员"には同乗していた海監職員が含まれているのか?、誰が無線で回答したのか?、ちょっと気になっている。
・・・まあ、うちのブログ記事らしい、重箱の隅な事なんですが(笑)
"B-3837"機は、2004年に中国海監・東海総隊に配備された。
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中国海監は、所属艦船や航空機が "非武装" であることを武器にしている。
"B-3837"機は、2004年に中国海監・東海総隊に配備された。
"B-3837"機自体は中国海監が購入し所有している機体だが、運用やメンテナンス等は飛龍専業航空(飞龙专业航空公司)に依託されている。(参照:cn)(名前から察するにグループ会社(?)なのだろう)
海監の航空機の中には、このように海監が所有して運用を民間航空会社に委託している機体や、ヘリコプター"B-7101"機や"B-7772"機のように航空会社や関連会社からレンタルをしている機体がある。(参照(コメント欄も参照)」)
パイロットの中には、航空会社所属の民間人もいる。
(1987年の1機目納入当時からずっと、装備をそう調達するシステムになっているだけだろう)
中国海監の船艇に、機関砲を装備する海監船がある事や、中国海軍の退役艦から移籍改修した海監船がある事は事実だが、中国海監の船舶や航空機のほとんどは基本的には "非武装" 。それも武器として「世論戦」と、国際法上の「法律戦」を仕掛けてきている。
日本政府と海保は難しい対応が必要となるが、欧米からも右傾化が心配される中で、挑発にのって過剰な対応をするのは日本のためにはならない。
日本は、中国の所属不明機("B-3837"機)による領空侵犯に対して、空自のF-15を8機とE3Cを1機、スクランブル発進させた。これは通常の対応だ。
中国メディアの報道には、非武装の航空機に対して軍用機が9機もやってきたと、・・・まあ難癖つけているようなものもある。
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・・・
海上保安庁や日本メディアは、尖閣の現状について、いつもいつも同じような内容の発表や報道を繰り返しているように感じられる。
中国メディアの尖閣報道では、日本メディアがどう報じた、「日本の〜新聞によると“・・・”」という翻訳記事が非常に多い。中国の監視船が尖閣諸島周辺海域から数日いなくなった時には、中国メディアの報道もパタッと止まっていた。
中国メディアは当局発表がないので、日本メディアの記事を参照せざるをえないという、日本にとって非常に有利な状況にある。
しかしその利点は、世論戦において有効に使われていない・・・
日本メディアの記事では、海保の主張は"警告した"とさらっと簡単に書いて、中国海監の海洋監視船の主張をカッコ「」付きで書いていることが多い。本当に多い。
そして中国メディアは、そのカッコ「」付きの中国の主張をそのまま中国語訳して、日本メディアがこう記事に書いたと報道している。
記事の文字数が決定的に違う。
ならば逆に、海保の巡視船の警告内容を、カッコ「」付きで具体的に書いてみてはどうだろう? 海監の監視船の警告はさらっと簡単に文字数少なく書いたらどうだろう?
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