『外科医、正露丸を斬る』読了
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『外科医、正露丸を斬る 〜ぼくが外科部長をやめて経営者になったら見えてきたこと』読了
著者の柴田高 氏は、正露丸やクレベリン等を製造販売している大幸薬品の代表取締役社長(医学博士)。
ダイヤモンド社の『Kei』連載のコラムに、大幅加筆修正をした一冊。
ラッパのマークの『正露丸(征露丸)』が効く理由や、『クレベリンゲル』の空間除菌に少なからず興味があるなら読んでおいて損はないと思う。それと、筆者は肝臓外科専門医だったので、それ関係の裏話。
コラムの一部は、ダイヤモンド社のウェブページで読むことができるが、そこでは外科医の視点での雑多なコラムという印象は拭えない。本書は、コラムの文章に加筆して、「一見すると何の価値もないように見えるものが、見る人によっては『宝の山』になることがある。」という方向で、まとめ治したのだろう。
コラム『外科医のつぶやき』最終回:“想定外”のままですんでもらいたい、 強毒性新型インフルエンザの憂鬱
うちのブログでは、二酸化塩素ガスを使った消臭除菌製品の検証論文の紹介など、記事にしてきた。やはり気になるのは『クレベリンゲル』に関わる部分。
ちょっと尺が短いのは残念だったが、コラムに載っていない事(*1)も含めて、面白く読むことができた。
『クレベリン Cleverin』は、「室内を賢く(clever)、清潔(clean)にする」から命名されたことは、意外と知られて小ネタだろう。
大幸薬品は、これからの衛生管理として「3層防衛」を提唱している。
第1層「物体防衛」:ウイルスが体や物体に付着することを想定した、手洗いの励行、咳・くしゃみのエチケット、排泄物処理等の「うつらない」「うつさない」行動の徹底。
第2層「空間防衛」:ウイルスが咳やくしゃみで空間中に浮遊すると想定し、呼吸することにより吸い込むウイルス量を減らす。二酸化塩素ガスを使用した製品『クレベリンゲル』の「空間除菌」はここにあたる。
第3層「体内防衛」:ウイルスの体内への侵入とその増殖を抑える。うがいによる排出やワクチン接種。
本書で詳しく書いているが、大幸薬品のホームページにも書かれているのでぜひ参考にしてほしい考え方だ。
これからの衛生管理「3層防衛」について|これからの衛生管理(大幸薬品株式会社)
読んでいて感心したのは、医者としての視点と、経営者としてのフットワークが、うまく相乗効果をあげている点。
上場直後に、幸か不幸か鳥インフルエンザの世界的流行が起こったように、そこに運が引き寄せられたとも感じられる。
その根幹にあるのは、「見る人によっては『宝の山』」という視点なのかもしれない。
本書の終わりの方で、今興味をもっているのは、「噂話に惑わされないよう」と慎重な表現を使いつつ放射線ホルミシスと書いている。
あやしい・・・(笑)
それが「宝の山」となるか、間違いと証明されるか、あやしいままで消えるか、これからの研究に期待したい。何も研究がされないよりずっといい。
予想と違う実験結果が出れば出たで、それは何か別の大きな発見につながることもあるだろう。
そういう研究がiPS細胞につながったと、山中伸弥教授はノーベル賞受賞会見で語った。(参照)
「予想と違う実験結果が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)につながり、この場に来ることができた。予想外の結果は失敗ではなくチャンスだ」
(*1)Kei本誌のコラムを全部読んだわけではないので、未確認。
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