中国海監が海洋監視船を増強|中国海軍の退役軍艦11隻(2/2)
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国家海洋局・中国海監の海洋監視船には、中国海軍の退役軍艦を改造・改装した船がある。
2012年以降は特に1000㌧級以上の軍艦が再配備され、尖閣諸島の領海にも侵入してきている。
尖閣対応か 海軍退役船11隻を改造 中国、海洋監視船に(MSN産経|12/31)
沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入するなどしている中国の海洋監視船について、国営新華社系の新聞、国際先駆導報は31日までに、中国は2000年以降13隻を建造、また海軍の退役艦船11隻を改造して使用していると報じた。
尖閣対応か 海軍退役船11隻を改造 中国、海洋監視船に(MSN産経ニュース|21012/12/31)
海軍軍艦から海監の海洋監視船に改造・再配備されたこれら11隻は、すでに報道された艦船がほとんどで、今後さらに11隻が増えるわけではない。
(前編:中国海監が海洋監視船を増強|中国海軍の退役軍艦11隻(1/2))
中国海軍の退役軍艦は、多くがオーシャンタグや砕氷船など支援艦船であり、すべてが船齢30年を越える"老兵"たちだということはこれまでの記事で書いてきた。
参照:
中国海監、新しい(?)3000トン級の海洋監視船を配備 | 昔の名前で出ています
中国海軍の退役"戦艦"(笑)が海監の海洋監視船に|中国メディア日本語版の記事のワナ
など。
それら"老船"の海監137や海監111も、尖閣諸島周辺海域にも出張ってきている。
元軍艦がやってきたと、軍事行動を過剰に警戒する人もいるようだ。
実際問題、国家海洋法条約では、沿岸国の政府公船(*)への攻撃はもとより、対抗措置についての規定は無く、国内法での法整備も整っていない。(*2)
(参照:外務省: 海洋の国際法秩序と国連海洋法条約)
(*)海上保安庁の巡視船や、中国の海監総隊の海洋監視船や渔政局の漁業監視船などが含まれる。
中国も、国際法を無視しての実力行使に出るとはちょっと考えにくい。(むしろ、米国はじめ欧米諸国に対して、日本が国際法違反をしていると喧伝している)
実戦力よりも、元軍艦という心理的な圧力をかけることと、複数の3000トン級以上の大型監視船を"パトロールと称して"行進させ、既成事実を積み重ねるためだと思われる。
もしかすると元軍艦を出してくることで、相手国(日本やベトナム、フィリピンなど)を挑発し、偶発的な攻撃をさせようという意図があるのかもしれない。
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11隻の元海軍軍艦には、2隻の051型駆逐艦が含まれている。
1970年代に建造された051型(旅大型/ルダ型)駆逐艦、"131 南京"号と"162 南宁(南寧)"号。(*3)
"南京"号と"南寧"号は、旅大型初期型(Ⅰ型)のミサイル駆逐艦(3000㌧級)。
機関砲やミサイル発射装置などの兵装は当然、海監の監視船に改造・改装されるときに下ろされるだろう。
正直、軍艦については詳しくないので、この船齢30年の旅大型駆逐艦が、海洋監視船の任務においてどれほどの能力を発揮するのか評価しにくい。(詳しい評価は、軍事カテゴリーの人にお願いしたい)
素人ながらに考えてみると・・・、まず、32ノットという速力。
元軍艦の大型艦ということで、相手国の巡視船(パトロール船)や政府、世論へ心理的圧力をかけられるだろう。
もし、沿岸国と何らかの偶発的な武力衝突があった状況でも、中国海軍軍艦を出動させて軍事衝突をエスカレートさせるのではなく、中国海監監視船を武装化して準軍事組織とすることで対応出来るかもしれない。
中国海監総隊を将来的に武装化して準軍事組織とする可能性は、これまでにも肯定的に報道されている。
この駆逐艦2隻は、ヘリ搭載型の海洋監視船に改造・改装というのはどうだろう?
旅大級駆逐艦は数が多く、中にはヘリ搭載型に改造されたものもある。
36隻の海監船建造計画では排水量1500㌧級の船までで、ヘリ搭載型が建造されるという報道は(まだ)ない。
そうすれば、中国海監は3000㌧級の"海监83", "海监50"とあわせて、4隻のヘリ搭載型海洋監視船を配備することが出来るだろう。
"老兵"にそこまでカネはかけないかな?(笑)
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国際先駆導報の記事を踏まえた、中国海軍の軍艦から改造・改装され、中国海監に配備替えされる11隻は以下の通り。
(カッコ内は、元の船名、等。)
北海総隊(4隻?):
海監110(北拖710|オーシャンタグ(3000㌧級))(配備済)
海監111(海冰723|砕氷船/電子情報収集艦(5000㌧級))(配備済)
海監112(814 "辽阳(遼陽)"号|918型(沃雷型)機雷敷設艦(2000㌧級))(配備済)
東海総隊(3隻?):
海監137(东拖830|オーシャンタグ(3000㌧級))(配備済)
海监???(东测226|測量船(1000㌧級?))
海監???(131 南京号|051型(旅大Ⅰ型)ミサイル駆逐艦(3000㌧級))
南海総隊(4隻?):
海監167(南拖154|オーシャンタグ(3000㌧級))
海監168(南调411(海洋11号)|625型海洋測量船(3000㌧級))
海監169(852 海王星号(向阳红21号、海洋13号)|813型遠洋電子情報船)
所属予定曖昧:
海監???("南运830”(琼沙級・医療船/兵員輸送船(2000㌧級))
海監???(162 南宁(南寧)号|051型(旅大Ⅰ型)ミサイル駆逐艦(3000㌧級))
所属不明のどちらかが北海総隊に配備されるとしても、船名が"南运830”だったり南海艦隊の"南寧号"だったりと「南」の船なので困る(苦笑)
「北海3・東海3・南海5」? それとも他にもいるかな?
そのうちに分かるだろう。
(追記20130114)未確定情報だが、北海3隻・東海3隻・南海5隻で、所属予定曖昧にした2隻は南海総隊所属となるようだ。
(*2)台湾の漁船と台湾海巡署の巡視艦が、2012年9月に尖閣諸島領海へ侵入した際、台湾海巡の巡視艦が海上保安庁の巡視船に対して放水を行った。これに対して日本政府は、対台湾窓口機関「交流協会」を通じ台湾側に抗議している。(参照)
海保の巡視船は、台湾漁船には放水したが台湾海巡の巡視船には放水しないよう注意深く対応していた。
(*3)これまでにも、中国海軍の退役した、500トン級の037型(海南級)猎潜艇(対潜駆逐艦)2隻が海监北海総隊に再配備(2010年)されている。
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