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2014年8月11日 (月)

中国海警局の船艇は非武装と言い張る中国(2) 非武装と言い続ける矛盾(矛と盾)

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ベトナム政府は、武器と弾薬の管理と使用に関する法律を改定し、ベトナムの漁業検査船への銃や自動小銃、機関銃等を装備する事を決定したと報道された。法律が発効する9月15日から装備される模様。

専門家は「法律上、中国の海警局は海洋警察なので武装も可能だが、実際は武装していない」と語り、ベトナム漁業監視船の武装を常識外れだと非難。同時に中国漁民に対し警戒を強めるように呼びかけた。
ベトナムの漁業監視船が武器配備へ=中国は「常識外れ」と非難、漁民に警戒呼びかけ―中国メディア(8/5|MSN産経)

越南渔政船下月将配武器 提醒中国渔民高度警惕(8/5|环球网)

実際には、中国海警局として活動している船に、武装していて、機関砲を載せている船もけっこうあるわけなのですが・・・


環球時報の記事では、中国海洋発展研究会の郁志栄(郁志荣)研究員が、いろいろと興味深いコメントをしている。

中国海洋発展研究会の郁志栄(郁志荣)研究員は次のように述べた。
漁業監視船が武器を配備するのは、国際慣例に反している。ベトナムのこのような行動は、自信がないことを表している。漁業監視船の法執行任務は違法操業の摘発であり、武器を持っていない漁民に対して殺傷力のある武器を配備する必要はない。中国海警局に属している漁業監視船は、特殊な状況下で高圧放水銃を使うだけである。
中国海警局は海上警察力を持ち、武器を装備することは出来るが、もと漁政と中国海監の船が多く、武器は装備していない。
ベトナムが漁業監視船を武装させるのは常識を欠いたものである。さらにベトナムは沿岸警備隊ももっている。もしベトナムがこの規定を実施するならば、中国漁民は高度に警戒をしなければならない。

中国海洋发展研究会研究员郁志荣3日告诉《环球时报》,渔政船配备武器违反国际惯例,越南此举是心虚的表现。一般来讲,渔政船的行政执法目标是渔船的违法行为,因为渔民没有武器,所以渔政船也不应该配备杀伤性武器。中国渔政虽然已划归中国海警,但也没有配备武器,只在特殊情况下使用高压水枪。
(中略)
郁志荣说,去年7月,中国海警局成立。从法律上讲,海警属于海上警察力量,是可以配备武器的。但实际上,中国的很多海警船还是之前的渔政船和海监船,所以也没有配备武器。他认为,越南给渔政船配备武器不合常理,此外,越南还有正式的海警部队。如果越南这一规定开始实施,必须提醒中国渔民保持高度警惕。
越南渔政船下月将配武器提醒中国渔民高度警惕(8/5|环球网)

ツッコミどころ満載のコメントで、これらは、中国がやってきた事、やっている事といろいろと矛盾している。

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アメリカは中国に対し、南シナ海問題について「国際的な権利と慣習を尊重するように」一貫して求めている(欧米の価値観が必ず正しいとは言わないが、中国が"国际惯例"と言っている以上、そこには欧米も含む国際的な慣習と見るべきだろう)。

以前から各所で指摘されていることだが、中国が言うところの「国際慣例」は、日本や欧米が使う「国際」とは、ずれており、そしてそれが間違っている事だとは認識していないように感じられる。

例えば、国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)。
アメリカ合衆国が加盟も批准もしていない国連海洋法条約なら、かなり強硬に解釈して対応しても押しきれると考えているような気がしてならない。
(正直なところ、米国が国連海洋法条約に加盟しさえすれば、東シナ海も南シナ海も、いま東アジアから東南アジアで起こっている緊張関係は緩和するんじゃね?と思っている。)


中国海警局に武装した船はある。
日本のネット上で煽っているような「もと中国海軍の軍艦が多数で武装している」はデタラメだが、けっこうある。沿岸部と南シナ海には特に多い。ごく一部だが例を示そう。

もと公安部辺防海警(中国海警、辺防海警)の船には、機関砲など固定武装を持つ船が少なからずある。船員は武装警察部隊の隊員であり、武装している。

ベトナム沿岸警備隊「CSB4033」に衝突してくる、中国海警局の警備船「海警37102」(もと边防海警、山东海警一支队一大队)。(2014年)アレはもしかして、機関砲なんじゃないかな?(笑)

201405crs002

中国外交部がベトナム船による衝突の証拠写真を公表 すでにベトナムによって公表済みでした (ノ∀`) アチャー: メモノメモ
中国がベトナム船に“衝突”される映像公開、矛盾点【解析】 - NAVER まとめ

中国海警局の大型船(もと漁政の漁業監視船)の中にも、機関砲を装備した船が確認されている。

「海警3210(もと漁政310)」。南シナ海を管轄する南海分局所属。
海警局に配置された後も機関砲を載せている。(ブリッジの「中国」の文字の下。左右に1基ずつ。2基の機関砲の間に高圧放水銃がある)(2013年)

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記事のコメントによると「漁業監視船が武器を配備するのは、国際慣例に反している」そうだが、中国の農業部漁業局(漁政)の漁業監視船も機関砲を装備している船がある。

「漁政44601」広東省漁業総隊・潮阳漁政大隊所属。14.5mmの四連装機関砲を搭載。同型船もある。
ベトナムと海上国境を接する北部湾(トンキン湾)、西沙諸島を含む南シナ海を管轄している。

201408haijing202


しかも、新規配備された時の記事によると、2004年の「中越北部湾境界協定」と「中越北部漁業合作協定」締結による、北部湾(トンキン湾)の200海里の排他的経済水域(EEZ)と西沙諸島の警備のために、最新の装備と精鋭部隊を配備したと喧伝している。(2014年5月にも漁業局所属を確認)
これは国際慣例に反していないのだろうか?

201408haijing203

新造中国渔政44601船在粤东执法基地投入使用(汕头海洋与渔业局)
广东两艘新型渔政船交付 配备大口径四管机枪(图)


国家海洋局・中国海監総隊は、小火器で武装している(機関砲を持つ中国海監の所属船は、確認していない)。
中国海监南海総隊(南シナ海を管轄)の旗艦「海监83」(現在は、中国海警局「海警3383」)が南シナ海をパトロールする時の、海监の法執行隊員の武装の様子。海監の法執行隊員は機銃などの小火器を使用する権限を持っている。(2010年)

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中国海监也开始在南海武装执法图

新たに建造されている海洋監視船の中には、重機関銃を設置する場所を指定して発注している船もある


仮に、環球の記事でのコメントの「武装」を、機関砲など大型の固定兵装の意味だと好意的に解釈しても、素人がちょっと調べただけで簡単に矛盾が見つかります。

自らの対応を棚に上げて他国の対応を批判するという、中国当局や関係者のいつもの対応をしているのです。


もし、これらのコメントが、どこかの退役少将や軍事専門家によるものなら、生暖かい目で見て、茶化していたと思うんですよ。(笑)
しかしこの郁志栄(郁志荣)氏は、ある意味、“中の人”です。

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もし、これらのコメントが、どこかの退役少将や軍事専門家によるものなら、生暖かい目で見て、茶化していたと思うんですよ。(笑)
しかしこの郁志栄(郁志荣)氏は、ある意味、“中の人”です。

郁志栄(郁志荣)氏は、中国人民解放軍海軍・北海艦隊の出身で、元・中国海監東海総隊(東シナ海管轄)の副隊長。
北京大学で日本語を学び、日本の京都大学に留学して国際法を学んでいる。俳句集を出すなど日本文化に造詣が深く、東久邇宮国際文化褒章を受賞している(参照)。

なぜこのような人ですら、中国の対応を正当化するために矛盾するようなコメントをするのか?
分かっていないわけはないのです。

ここで「中国人は嘘吐き」と言うのは簡単だが、それはただの思考停止だろう。
むしろここに、中国共産党が自らの統治の正当性を主張しているのと同じような、中国当局および関係者が陥っている「自縄自縛」の現在の状況があるような気がした。

これまで正当性を喧伝し続けてきた以上、勝手に急な方針転換になるような事は言えない。これまで発信した内容に沿った発言をしなければならない。
少なくとも、中南海から下された指示がなければならない、自縄自縛の状態にあると感じた。



まず中国海監総隊の頃から、中国政府は「日本や米国の沿岸警備隊は武装し、機関砲を装備しているが、中国海監の船艇は“非武装”である。」と言い続けている。武力で威圧してくる外圧への対抗という図式だ。
中国海警局が正式に成立する前の、国家海洋局中国海監総隊の頃は、大きくは間違ってはいなかった。

中国海警局が正式に発足し、中国海監総隊、公安部辺防海警や農業部漁業局(漁政)、海関の船艇を再編統合しても、これまで通り“非武装”というアピールは続けてきている。
中国国内法と、統合再編される前の組織での法執行隊員の資格や職責の制限もある。(もと渔政の漁業監視員が、中国海警局に統合再編された後、自動的に海上警察権の行使は出来ない。資格を取得しなければならない。)

ただ、「中国の監視船は“非武装”で、武力で威圧してくる外圧へ対抗する」という図式は、とても甘い果実だった。


今回、ベトナムが漁業監視船を機関砲を装備するなど武装を強化する法改正を行った。
同じ論調で「ベトナムの漁業監視船の武装は間違いである」と言うことにしてしまった。
そこで、「中国の漁業監視船は非武装なのに、ベトナムが武装化するのはけしからん」と主張しなければならなくなったのではないだろうか。

相手の対応を非難するために、自らの正当性を主張する。
自らの正当性を主張するために、言っている事が明らかな嘘ではないなら、事実と矛盾していようがとにかく自己の正当性を主張する。
嘘だとは指摘されないような、言い訳ができる表現をする。

いかにも、中国人的だと思った。
矛盾であることを分かっていても、その方向でコメントをしているように感じた。

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上記のように、多々矛盾がある。
しかし、そこを指摘しても、いくらでも言い訳は出来そうだ。そういう表現でコメントをしている。

記事のコメントにツッコミを入れてみて、返ってくる言い訳を考えてみよう。


機関砲で武装している船があるんだけど?
 → あれは中国海警局だが、武装しているのは公安部辺防海警の船だ。漁業監視船は武装していない。
漁業監視船が武装してるんだけど?
 → 私は中国海警局の船について話した。あれは漁業局であって中国海警局ではない。
漁業監視船の武装は、国際慣例に反しているのでは?
 → 農業部漁業局(漁政)は、中国の国内法に則って活動している。国際慣例は関係しない、それは内政干渉か?
海警局の元・漁業監視船の大型船に機関砲があるんだけど?
 → あれは海警局になったばかりの写真だ。中国海警局は発足して1年であり、組織再編の途中だ。
海監の隊員が機関銃で武装してるんだけど?
 → 武装とは機関砲などの固定武装を言っている。
この状態でベトナムの船の武装化を非難するのは無理があるのでは?
 → 日本は、中国とベトナムの事について口を出す立場にはない。四の五の言うな(说三道四)
等々。

あれ?
中国当局が言いそうな言い訳がすらすらと出てくるのは何故だろう?(笑)
(あくまでも私個人の妄想です。氏が言いそうな事だとは言っていません。念のため。)



中国海警局という組織は、複数の海事組織(法執行部隊)を統合再編したものであり、国家海洋局と中国海警局の重ね合わせの組織構造になっている。謎の多い組織で、正式に発足してわずか1年という強みもあって、非常に言い訳がしやすい体制になっている。(矛盾の「盾」)

もしかすると、いずれ中国海警局の船艇が機関砲など積極的に装備し、準軍隊として武装している事を喧伝するかもしれない。その時は、日本や米国の武装艦に対抗するために仕方なく載せたものであり、このような事態を招いた原因は全て日本と米国にある、と言ってくるのではないだろうか。(矛盾の「矛」)

組織の曖昧さと、組織再編の時間差を使って、矛盾の矛と盾をうまく使い分けていると感じる。




中国は、
今回、国内向けには「中国漁船を武力で威嚇してくるベトナムはけしからん。中国共産党は漁民たちを守る」というアピールをしたい。

国外向けには、「中国の船は非武装なのに、ベトナムが船を武装化している。ベトナムはけしからん、中国は正しい。」とアピールをしているのだろう。
これらの記事は、人民日報や新華社通信、中国新聞網等の数多くの外国語版を通して伝えられる。中国メディア系のラジオやテレビがある地域では、文字だけでなく音声や動画でもプロパガンダが流されるだろう

中国の三戦(世論戦、心理戦、法律戦)のうち、法律戦では、中国は、国内法と国際法で対応を使い分けている。
世論戦は、すでに対立している国同士だけではない“国際世論戦”へと拡がっている。

日本政府および関係各局は、このことを踏まえて、日本語だけではない様々な言語での適切な情報発信をしなければならない。さもなければ、国際世論戦で、初戦から劣勢に立たされることだろう。



100回繰り返せば、たとえ嘘であっても、本当だと感じられると言われる。
それを地でやっているのが、中国による南シナ海、そして東シナ海、黄海での島嶼の領有権の主張だ。

10年繰り返せば、国際社会も何がしかの理解を示しだすだろうし、その頃には世界での中国の政治経済の影響力がさらに強くなっている可能性を想定しているだろう。
南シナ海の現状はそれを表している。中国は成功体験と感じているだろう。

しかし、1度の砲火で状況を変えようとしてはならない。

日本政府、海上自衛隊および海上保安庁は十二分に理解しているし、懸命な対応をしていると信じている。
中国共産党、特に軍部と公安部がそれを理解しているなら良いのだが・・・


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