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2015年4月13日 (月)

話題の東京大学卒業式の式辞 元ネタを調べてみた J.S.ミル『功利主義論』

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東京大学教養学部の卒業式での、石井洋二郎学部長の式辞が話題になっていると、"はてなブックマーク"経由で知りました。
 


「あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、『教養学部』という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる『教養』というものの本質なのだと、私は思います」

"東大卒業式、ネットで激賞 伝説の格言の内幕明かし、コピペ情報に警鐘 信州大あいさつと一緒に話題に(withnews) - Yahoo!ニュース

 
普段から自分なりに心掛けているつもりだけど、ここは'一人の学生'になったつもりで、一次情報を調べてみました。
 
"はてなブックマーク"に載っていたのは "Yahoo" の記事で、その元ネタの "withnews" の記事はこれ。
タイトルが違う事と写真が多く使われている事を除けば、(当然ですが)同じ内容です。
(追記:たまに、編集され一部が削除されている場合もある。)

 
"東京大学教養学部のオフィシャル・サイトの'式辞本文""はこれ。
平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞 - 総合情報
 
石井洋二郎学部長(当時(3月末で任期終了))の式辞の一部を引用させていただきます。


次に第二の間違いですが、これはもっと内容に関わることです。じつは、ジョン・スチュアート・ミル自身は「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とも「なりたい」とも、全然言っていないのですね。さきほど題名を挙げた『功利主義論』の日本語訳を見てみますと、こう書いてあります。
満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。
大河内総長の言葉とはだいぶ違いますね。ちなみに、英語の原文はこうなっています。
It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.
この原文を見ると、どうやらさきほど引用した日本語訳は正確なようですから、大河内総長のほうがこれをまったく別の文章に改変してしまったとしか考えられません。たぶん漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのでしょう。(後略)
(赤字強調は管理人による)

 
J.S.ミルの『功利主義論(UTILITARIANISM)』の原文をあたってみましょう。Gutenberg.org で無料公開されているので、引用させていただきます。

The Project Gutenberg eBook of Utilitarianism, by John Stuart Mill.
CHAPTER II.   WHAT UTILITARIANISM IS.

Whoever supposes that this preference takes place at a sacrifice of happiness-that the superior being, in anything like equal circumstances, is not happier than the inferior-confounds the two very different ideas, of happiness, and content. It is indisputable that the being whose capacities of enjoyment are low, has the greatest chance of having them fully satisfied; and a highly-endowed being will always feel that any happiness which he can look for, as the world is constituted, is imperfect. But he can learn to bear its imperfections, if they are at all bearable; and they will not make him envy the being who is indeed unconscious of the imperfections, but only because he feels not at all the good which those imperfections qualify. It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied. And if the fool, or the pig, is of a different opinion, it is because they only know their own side of the question. The other party to the comparison knows both sides.  (赤字強調は管理人による)
  日本語訳は、京都大学学術出版会の『近代社会思想コレクション5 功利主義論集』から、有名な部分の一節の前後と合わせて引用させていただきます。
すなわち、同じような環境のもとでは優れた存在は劣った存在よりも幸福でないと考えている人は、幸福と満足という二つの非常に異なった観念を混同している。 快楽を享受する能力の低い人はそれを十分に満足させる見込みが大いにあるが、高い能力に恵まれた人は、自分の求めることのできる幸福は今あるがままの世界においては不十分なものであるといつも感じていることは疑う余地のないことであろう。 しかし、このような人はこの不完全さが何とか耐えうるものであるならばそれに耐えることができるようになる。 また、その不完全を伴うのにふさわしい善をまったく感じることができなくなるいう理由によってだけでも、不完全さをまったく意識することのない人のことを羨んだりするようにはならないだろう。 満足した豚よりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい。 愚か者や豚がこれと異なった考えをもっているとしたら、それは愚か者や豚がこの論点に関して自分たちの側のことしか知らないからである。比較されている相手方は両方の側を知っている。 (原文は改行されていませんが、読み難いので、適宜、改行しました。) 
(赤字強調は管理人による)

 
この有名な一節の後に、こう続いているとは知りませんでした。

愚か者や豚がこれと異なった考えをもっているとしたら、それは愚か者や豚がこの論点に関して自分たちの側のことしか知らないからである。比較されている相手方は両方の側を知っている。
   「タフでグローバルなソクラテス」になれればいいなー♪ と夢見る以上に、「自分たちの側のことしか知らない愚か者や豚」になりたくはないと感じます。

 
JSミルの『功利主義』の本を手にとったのは(真面目に読んでいなかったw)、大学生のとき以来ですよ。
良い機会なので、今回はもうちょっと頑張って読むフリでもしてみましょうか。(笑)
 
 
石井学部長(当時)が話された"ツァラトゥストラ"の一節については、ご自身で調べてみることをお薦めします。
 

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