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2012年8月 7日 (火)

メモ:パナマ運河の通行料(2011年)

201208panama01
(wikimedia commons)

パナマ運河について調べていたところ、ネットでは古いデータの通行料が当たり前のように使われていることに気付いたので、ちょっとメモ。

wikipediaに「1トンにつき1ドル39セント」と書かれているので、信じてそのまま使っているのだろう。

通航料
パナマ運河の通航料は、船種や船舶の積載量、トン数や全長など船舶の大きさに基づきパナマ運河庁が定めている。1トンにつき1ドル39セント、平均で54,000ドル。

パナマ運河 - Wikipedia(記事公開時のもの)


(追記:2013/07/18)
2013年の通航料の記事を追加しました。

パナマ運河の通航料(2013年): メモノメモ
(追記ここまで)


パナマ運河庁(ACP)によると、2011年の運河通航料は1トンにつき3〜4.5ドルくらい。毎年改訂され、船の種類や大きさで細かく決められている。

Tolls Assessment - Maritime Services

201208panama02_2

パナマ運河の通航料は、パナマ運河万国尺度システム(PC/UMS)(パナマ運河通航船舶トン数、パナマ運河トン数とも)をもとにしているので、船舶の総トン数や載貨重量トン数をそのまま当てはめることは出来ない。
コンテナを積む船舶には20フィートコンテナを基準としたTEU(Twenty-Foot Equivalent Unit)が適用されるとか、総トン数や国際総トン数から運河トン数へ換算する方法が分からないし、いろいろ複雑。

さらに今年7月から、今後2年で15%の値上げが計画されているそうだ(参照)。世界の海運業界は、この値上げ案に反対し撤回を求めている。


2年後の2014年にはパナマ運河拡張工事「第三閘門建設計画」が完了予定であり、通行可能な船舶は、船幅32m(106ft)のパナマックスから、船幅48.8m(160ft)のポスト・パナマックスとなる。(参照


これまでの最高額の通航料は、2010年7月に、豪華客船「Norwegian Pearl」号が払った375,600ドル。この記録が破られるのは確実。(参照:en

最小額の通航料は、1928年に、旅行作家「Richard Halliburton」氏が泳いで通った時に払った36セント。
この記録が破られることは無いだろう(笑)



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2012年7月 6日 (金)

南鳥島沖の深海底のレアアース|資源価値と採掘方法

Rareearthoxides
(wikimedia commons)

南鳥島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の深海底の堆積物に、高濃度のレアアースが含まれることが確認された。

ハイテク製品に欠かせず、現在、中国が独占的に供給している、希少な金属「レアアース」が、日本の排他的経済水域にある南鳥島近くの海底に多く存在していることが、東京大学の調査で分かりました。 日本の経済水域でまとまった量のレアアースが確認されたのは初めてで、埋蔵量は国内の消費量の220年分余りに上るとみられています。

南鳥島海底に大量のレアアース(NHKニュース)(Googleキャッシュ)

今回の発表で注目されるのは、まず、ハイブリッド車のモーターに使われる「ジスプロシウム」や、液晶テレビに使われる「テルビウム」などが高い濃度で含まれていること。これらの重希土類元素は、現在は中国南部のイオン吸着型鉱床でしか生産されていないので、ほぼ100%を依存している。

そして、水深5600mという大深度であるということ。

この深海底のレアアース資源泥の採掘方法について、意外と触れられていないようなので少し。



レアアース資源泥は、今回発表と同じ東京大学の加藤泰浩教授の研究グループが、2011年7月に発表した、レアアースを高濃度で含有する深海底堆積物。海底火山等の熱水活動によって放出された物質が海水中のレアアースを吸着・濃縮して、堆積したものと考えられる。深度3,500 ~ 6,000 mの深海底に層状に広く分布する。
研究グループでは、レアアース資源泥は日本の主権がおよぶ排他的経済水域内でも存在している可能性が高いと考え、その発見を目標として研究を進めていた。

全く新しいタイプのレアアースの大鉱床を太平洋で発見(pdf)(東京大学)

(*)加藤泰浩教授の著書が、もうじき出版される予定です。

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今回、確認された南鳥島沖のEEZ内のレアアース資源泥の資源価値と採掘方法は、昨年の発表後の8月1日に文部科学省で行われた海洋鉱物委員会での、加藤教授への「レアアースを含む海底堆積物に関するヒアリング」の議事録と資料が参考になる。

海洋鉱物委員会(第14回) 議事録:文部科学省

ヒアリングでは、発見に至る簡単な経緯やNature Geoscience誌に全く書いていないことも含めて、分かりやすく説明している。科学コラムみたいで面白い。お奨め。(*1)


簡単に書くと、技術的に解決しなければならない部分もまだまだあるが、これから採掘方法を考えるという状態ではない。現在の原油・天然ガス採掘方法で採用できるものも多く、実現性は高いと感じられる。(その“あと少し”がとても大変なのは、よく分かっている)

加藤教授はヒアリングで、実証試験まで半年、基礎調査で3年、「最速で行くと、5年後くらいにはいけるのではないかと思っています」と言っている。


2011年のタヒチ沖のサンプルで資源価値が計算されている。

201207ree0101
海洋鉱物委員会(第14回) 配付資料:文部科学省

タヒチ沖(Site76)のレアアース資源泥を、4km2(2x2km)、海底下の地下10mまで掘った場合、総レアアース量は約36,000トン(酸化物換算)、ジスプロシウム量は約1,400トン(金属Dy)。
陸上のレアアース鉱山と違って、開発の障害となるトリウムやウランなど放射性物質をほとんど含まない。

南鳥島沖のサンプルの濃度は、平均1100ppm、最大で1700ppm。意外と、平均濃度は同程度だった。その理由は、生成過程にありそうだ。(本筋でないので後述→(*1))
1km2あたりで再計算(細かく計算しても仕方ないのでざっくりと計算)すると、レアアース量は約8300トンとなる。同じく、タヒチ沖(Site76)と同程度のDy含有量とすると、ジスプロシウム量(金属Dy)は約320トン。これは国内の年間消費量の4〜5割にあたる。

報道では、その海域のレアアース量は680万トンとあるので、海底下10mで均したとして約800km2、ざっくりと1000km2の範囲に分布しているのだろう。これは東京都の陸地面積の約半分にあたる。
全部掘る事を想定するのはナンセンスだが、4km2を掘っただけでも、年間消費量(2011年)をまかなうことが出来る(ジスプロは年間消費量の2倍)。


採掘は、石油・天然ガスの採掘で使われているFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)で想定されている。(*)Floating Production, Storage and Offloading system
FPSOは、採掘から生産までを行える洋上施設で、現在は海洋石油・ガス生産設備の6割以上を占める最もポピュラーな生産設備。
FPSOについては、三井海洋開発の「FPSO/ FSOとは」ページが詳しい。

201207ree0102
海洋鉱物委員会(第14回) 配付資料:文部科学省

大深度の海底の油井・ガス井では、固定式のプラットホームは使えない。タンカーと同じ船体を使ったFPSOだと、海が荒れた時に係留設備を残して避難できるし、防噴装置(BOP)を海底に設置するのではない頻繁に移動する採掘方法にも適しているだろう。

水深5600mの大深度から吸い上げる方法は、ライザーパイプに空気を送り込んで、泥に混ぜて浮力を与える、エアリフト方式が検討されている。
膨大な量の資源泥を処理しなければならないので、吸い上げ能力と処理能力が気になるところだ。

採掘システム構築のためのロードマップを見ると、実証試験までうまくいけば、そのまま一気に生産を進めることが可能かもしれない。(その“あと少し”がとても大変なのは、よく分かっている)


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コストについてもいろいろ計算してみたけれど、価格変動が大きいし、まとめるには情報不足。

詳しいことは7月20日に開催される、エネルギー・資源フロンティアセンター主催のシンポジウム「レアアースのすべてを語る ―海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまで―」で明らかにされることだろう。

【シンポジウム:レアアースの全てを語る】(2012/7/20) - 最新情報(東京大学)
201207ree0103



(*1)
なぜ南鳥島沖で、高濃度のレアアース資源泥が存在しているかというと、熱水活動の盛んだった白亜紀にレアアース資源泥が効率的に生成され、太平洋プレートが動いてきた結果だそうだ。

大陸や半島からでなくて良かった、と思ったというのは内緒の方向で(笑)




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2011年10月12日 (水)

ドイツZDFのFrontal21 「福島原発労働者の実態」(日本語字幕)動画の、元番組の動画、フルテキストなど

ドイツZDFのフロンタール21で放送された「福島原発労働者の実態」(日本語字幕)動画について、
日本語字幕版ばかりが広まっているので、ドイツZDFの元番組動画や、番組のフルテキストなど関連情報です。

前に書いた「ドイツZDF作成のFrontal21 「福島原発事故、その後(日本語字幕)」動画の、元番組の動画、フルテキスト、関連リンクなど」の記事と同じように、判断情報を増やすことを主眼としているので、番組内容については特に書いていません。
合わせてご参照ください。

みなさんの判断材料のひとつとなれば幸いです。



オリジナルは、ドイツZDFの番組 Frontal21が、10月4日に放送した「Arbeiter in Fukushima」。

YouTubeのZDFチャンネルに、オフィシャルなYouTube動画が見あたりません・・・ (どうしたんだろ?)

ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」 - YouTube
(ツイッター上で多くRTされていたので、このYouTube動画のリンクを借りました。)


ドイツZDFの、「Frontal21」のサイトの動画。「Arbeiter in Fukushima」のみ。(7分21秒)
Arbeiter in Fukushima | Frontal21 | ZDF

「Arbeiter in Fukushima」が放送された「Frontal21」番組全部(44分ちょっと)
Frontal21(2011/10/04) | ZDF
(「Arbeiter in Fukushima」(司会者の説明含む)は26分あたりから。)

German TV-channel ZDF talks with workers at Fukushima Dai-ichi (german, english subs) - YouTube(英語字幕版)

テキスト

「Arbeiter in Fukushima」のフルテキスト(ドイツ語)(pdf)

「Arbeiter in Fukushima」のフルテキスト(Google翻訳・英語訳)(pdf)

「Arbeiter in Fukushima」のフルテキスト(Google翻訳・日本語訳)(pdf)

ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」 日本語字幕の書き起こし(via. ★阿修羅♪ )

英語版字幕の書き起こし(放射能メモ) (追加)



(追記2011/10/13)

別の日本語字幕のYouTube動画



同番組の日本語字幕動画で一番古いのは10月5日の動画(司会者の前振りの字幕付き)。

コメント欄で「ドイツの国営放送ZDFの福島原発作業員を取材したドキュメンタリーに字幕をつけました。」と書かれている。

そのアカウント登録者が公開している動画はこれ1つだけ(現在)。別アカウントで他にも日本語字幕動画を作っています。

(追記ここまで)

(追記2011/10/13)

5〜6分の、山下俊一・福島県放射線健康リスク管理アドバイザーの発言について、福島県がホームページで訂正をしています。



福島県放射線健康リスク管理アドバイザーによる講演会

ーーーー引用ここからーーーー

訂正:質疑応答の「100マイクロシーベルト/hを超さなければ健康に影響を及ぼさない」旨の発言は、「10マイクロシーベルト/hを超さなければ」の誤りであり、訂正し、お詫びを申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。

ーーーー引用ここまでーーーー



その山下俊一のトンデモ発言の講演のYouTube動画

(擁護してると見られると嫌だなー。でも公式の訂正なので、追記。)

(追記ここまで)



ドイツZDF・Frontal21の番組内容のテキストの探し方

番組の内容を詳しく知りたい場合、文字原稿を調べたくなるかもしれません。その探し方。

まず、Frontal21のトップページにアクセスします。

Zdffrontal2101


放送後、間もない番組はトップページに載っているのでそれを探します。(今回は"Arbeiter in Fukushima")

Zdffrontal2102

その番組紹介欄の「Download Manuskript des Beitrags(ダウンロード 記事の原稿)」から、pdfファイルをダウンロードすることが出来ます。

古い番組は、検索するか、放送年月日が分かっている場合は左カラムのカレンダーの「Archiv als Liste」から手繰っていきます(原稿が残っていない場合もある?)。

Google翻訳は、そのpdfファイルのURLを元文章の入力欄にコピーし、翻訳を実行することで英語訳や日本語訳が作られます。
Excite翻訳など他のネット翻訳サービスでも英訳、日本語訳が出来ます。



メモ
原発労働者の問題は、事故以前からいろいろと言われていること。
ただ、前回も書いたけど、

東電や政府発表が信頼出来ないのはよく分かるけど、誰が訳したか分からない日本語字幕や、もしかしたら改変編集されているかもしれない動画や音声(充分な検証はしてないけど今回は大丈夫?)、分からない言語の番組内容、

よく丸呑みすることが出来ると思う。

今回は追記をあまり増やしたくないと思う自分がいる(苦笑)


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2011年10月 7日 (金)

マルクール核廃棄物処理施設の爆発事故、その後。 鉛の棺は誤解?

Questionmark

フランス、マルクール核廃棄物処理施設での、9月12日の爆発事故のその後。

9月後半になって、処理をしていた放射性廃棄物は4㌧の金属で63,000Bq(67,000Bq?)と公に言っていたのが、電気炉内にはその500倍近い(480倍とも)3千万Bqが存在していたと報道された。(参照
必ずしも最初の発表数値が嘘で500倍の放射性廃棄物を処理していたというわけではなく、電気炉内にそれだけ存在していたということらしい。炉自体とか炉の内側のクズとか色々考えられるけれども、詳細は不明。

フランス当局は充分な情報開示をしていないと思うので、非常に不満を感じている。
福島第一原発事故の後にも関わらず、この対応はあまりプラスにはならないのではないだろうか。
せめて詳細な事故原因と経過、室内の写真などを公開して欲しいものだ。

また、フランスの反原発団体のレポートでは、死亡したスペイン国籍の作業員は密閉された鉛の棺に入れられて埋葬された、と書いている(参照)。

真実は霧の向こうだが、ただ、この「鉛の棺」というのは「誤解」じゃない?、と、事故後1ヶ月弱の一連の関連ツイートのまとめも兼ねて、ちょっと重箱の隅な事を調べてみた。

調べていたら、フランスの葬儀サービスとか脇道が色々と面白い (; ´Д`)


「鉛の棺」というと、鉛が主な素材の棺をイメージしそうだ。

もし鉛製の棺が作られたら、埋葬にはクレーン車が必要で隠すことは難しく、間違いなく話題となるだろう。

鉛で遮蔽をするほどに遺体と体内の破片の放射線が強かったとしたら、鉛の厚さもそれなりに厚くする必要がある。たて横200cm×200cmで厚さ1cmの鉛で450kgほど。厚さ0.5cmでも225kg。
放射線遮蔽用の鉛ガラスで考えてみても、2m×1mで80〜100kg前後(参照)あるから、棺では2枚分(160〜200kg)は使うだろう。
やはりクレーン車が必要となりそうだ。

そんな棺を教会の墓地に埋葬しようとしたら、疑惑の目と反対を言う口があるだろうし、監視団体の耳もある。もし当局が二枚舌で騙して埋めたとしても、後日に掘り返して放射線測定をすることが求められるだろう。


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フランスでは葬儀は福祉の一環であり公共サービスの意味合いが強いため、葬儀サービスに関して非常に厳しい規定がある。
(参照:世界各地のお葬式 - フランス)(その他の参照リンクは末尾に)

葬儀で使われる、カバーや棺、内装や外装のアクセサリー、骨壺などについても "Article L2223-19" で規定されている。

4º La fourniture des housses, des cercueils et de leurs accessoires intérieurs et extérieurs ainsi que des urnes cinéraires ;

葬儀サービス :フランスの公式法情報サイトLégifrance


この条文の詳細が見つけられなかった(何度も改正してるし、慣れない・・・)が、フランス語版WIkipediaの「Cercueil(棺)」の項目に "Article L2223-19"に関して興味深い記述があった。適当な日本語訳ですが、抄訳。

Cercueil - Wikipédia

Lors d'un transport de corps effectué en cercueil à l'extérieur de la commune de fermeture du cercueil, un policier vient vérifier l'identité du défunt, et après fermeture du cercueil, il appose des scellés sur les vis de tête et de pied.

Pour un séjour en caveau provisoire, un transfert à l'étranger, un transport aérien ou le décès après certaines maladies : le cercueil doit être équipé d'une enveloppe intérieure métallique étanche soudée appelée « zinc » (autrefois dans un alliage de plomb et d'étain). L'incinération de ce type de cercueil peut être source de pollution, de même que lorsque le cercueil contient des corps ayant fait l'objet de certains traitement de thanatopraxie (autrefois le corps était traité par des injections de mercurochrome).

D'après certaines légendes, les vampires dorment le jour dans des cercueils, pour se protéger de la lumière du Soleil.
遺体の入った棺を市外へ運び出す時は、警察官が遺体の身元を確認した後に棺の頭側と足側を釘で密閉をする。

国外に運ぶ場合、飛行機で運ぶ場合、または特定の病気により死亡した場合の一時的な保管について: 棺の内側は、溶接し防水処理した≪亜鉛≫(鉛とスズの合金)で被い、密閉しなければならない。
防腐処理をされた遺体(昔はマーキュロクロムで処置していた)の火葬は、大気汚染の原因となる可能性がある。

伝説によると、吸血鬼は太陽の光から身を守るために日中は棺の中で眠る。


日本人からするととても厳しく感じられる。
特定の病気とは感染症か何かだろうか。ペスト(黒死病)の発生と吸血鬼伝説の報告例は重なると言われているから、不安感から密閉したくなるのも分かる気がする。
放射能に関わる事故の死者の葬儀についても規定があり、棺の内装についてもきっちりと規定されていても不思議はなさそうだ。

(追記2011/10/08)ちなみに、カトリックの教皇の遺体は、三重の棺に納められ、二番目の棺は5ミリの厚さの鉛だそうだ。(参照:教皇の遺体を納める棺 - カトリック中央協議会


実は、マルクールの爆発事故の被害者の棺には特別な対策は何もなく、
特定の病気による死者と同じ対応(お役所仕事)で、亜鉛(鉛とスズの合金)で内張りして密閉した棺だったが、情報提供者や記者がその規定を知らずに、「鉛が入っている!」「密閉している!」、「これは、放射線対策だ!!!」と勘違いした・・・

ということは、無い、か・・・?(笑)

(追記2011/10/08)

twitterで教えてもらった、Le Dauphine紙の記事「Le fondeur enterré dans un cercueil antiradioactif」によると、さすがに勘違いはなさそう(苦笑)



測定値は低く数フィートの距離で8.5μSvだそうだ。遺体内にあるという破片が線源?

事故原因にも触れているが、疑問符が多い文章となっている。

(追記ここまで)


最初に報道した、スペインのプブリコ紙(Publico)紙の9月18日の記事「París tapa el origen radiactivo del accidente de Marcoule」では、教会に埋葬された棺は、密閉され、そして内側を低レベル放射性物質防護(protección antirradiactiva ligera)と書かれている。勘違いかどうかは分からない(笑)(*1)

事故が起きた電気炉では、低レベル放射性廃棄物の金属を溶かし、その後に再加工をするのだそうだ。
炉内の金属の量が4トン(最小値)で、放射能濃度が後に報道された3千万ベクレル(最大値)とすると最大7500ベクレル/キログラムとなる。
記事には「溶融した金属片が遺体の内部にある」と書かれている。仮に1kgの金属が遺体内部にあるとすると、最大でも、元々の人体に含まれる6000〜7000ベクレルの2倍ほど。

核種にもよるが、(ご遺族には失礼な表現だが)低レベル放射性廃棄物(クリアランスレベル?)の地中埋設処理で求められる程度の容器(棺)の耐久性、放射線遮蔽性と耐食性、特に地下水の侵入と漏洩・拡散を防ぐための密閉処理と考えるのが妥当ではないだろうか。



激重な鉛の棺をイメージするよりは、まだ納得できるかな (´・ω・`)


(*1)スペイン語の「antirradiactiva」は、「放射能」や「放射線」でなく「放射性物質」を組み合わせるのが適切だろう。英語の「radioactive」は「radioactive materials」の略語としても使われる。

(追記2011/10/11)

訳文で、遺体に「弾頭」「榴弾砲 」または「弾頭の破片」と書かれている単語について。



マルクール原子力地区の爆発事故報道と誤訳 - Togetter



「破片」と訳した方が適切で、日本語で「弾頭」(類似語含む)と使われているのは、スペイン語の英訳を日本語訳して伝言ゲームになった結果だろうと書かれています。

(追記ここまで)


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「鉛の棺」という表現は、好意的に見るなら、伝言ゲームの結果と感じられる。

関連情報は、比較的に頻繁に追いかけていた(一連の記事も報道後の早い時期に確認してツイートしている)けれども、「鉛の棺」と確定した報道は見かけなかった。
それほどの重大情報なら多くツイート、リツイートされ、引用されているだろう。
念のため「marcoule coffin」など簡単なキーワードでいくらか検索してみたがスペインのプブリコ紙がソースの記事ばかりだった。

フランスの反原発ネットワーク(Réseau Sortir du nucléaire)のレポートも、その棺の部分は、スペインのプブリコ紙(Publico)紙の9月18日の記事が大本のソースのようだ。
しかし、遺体内部に金属片がある事は重要なのにレポートでは触れられていない。情報を取捨選択したというよりも、それに触れていない二次情報の、Rue98紙など仏メディアの引用記事を元にしたのではないだろうか。
Google検索してみたところ、この"sortirdunucleaire.org"のサイトで事故後に "Cercueil"(棺)という単語が出る記事は今回のレポートの1本だけ。

プブリコ紙の記事では、Chusclanの教会に埋葬された棺は、密閉され、そして内側は "protección antirradiactiva ligera"(低レベル放射性物質防護)されていると書かれている。

Y, por último, confirmaron igualmente que el ataúd que fue entregado a la familia, y que fue velado en la iglesia de Chusclan desde el viernes, iba sellado y con una "protección antirradiactiva ligera" en su interior.

この"protección antirradiactiva ligera"(低レベル放射性物質防護)という表現は、Rue98紙も記事「Nucléaire : les "trois secrets" de l'accident de Marcoule」でも「低レベル放射性物質防護が備えられている」という言い回しで使われている。しかし、Rue98日本語版の記事「核再処理施設マルクールの事故、3つの謎」では「棺には<低レベル放射能防護板>が施されていた事が確認された。」と「板」と断言してしまっている。

これはRue98日本語版のケースだが、国に限らず、マスコミに限らず、こうやって次第に歪められていく場合がある。

もっとも、当局の発表の間違いを叩いて批判することが主目的なら、こういう事はあまり関係はなく、「鉛の棺」と不安感を高める直接的な表現を使い、「低レベル」という表現がどこかに消えてしまっても気にしないのかもしれないが。



フランスのお葬式:パリ・南仏 コートダジュールの日記
フランス式お葬式について - 7月31日 - マダムケイコのフランス生活日記
葬祭研究所【世界のお葬式】フランス

メモ
正しく怖がりたいから調べてみる。


(追記)
自分の立ち位置を、書いておくべきかな。
自分の立ち位置は、柏崎は絶対反対!。原子力ムラを何とかしろ!。日本国内では次第に脱原発。どうせ10年20年30年かかる話だし、しばらくは完全廃止は社会経済的に難しい。さらに、日本だけでなく世界(先進国・新興国共に)的な流れでの現実的な対応が必要と考えている。
原理主義的な反原発運動とは距離を置いている。

自然と、いきすぎた反原発報道に異論を唱える記事となりがち・・・ (;;; ´Д`)



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2011年8月17日 (水)

「豊島逸夫が読み解く 金&世界経済」日経マネーを、前著「金に何が起きているのか」と一緒に読んでみた

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「金価格高騰はバブルか?」
ジョージ・ソロスは2010年2月のスイス・ダボス会議で「金は究極のバブル」と発言した。

これは2010年9月発行の、豊島逸夫の前作「金に何が起きているのか」の第1部・第1章に最初に書かれた一文。執筆当時にそういう不安感が強くあった事が分かる。

この時の金価格は「1200ドル」。

1年が経ち、2011年8月現在の金価格は「1800ドル」の最高値を記録した。

前書を読み返すと、金価格の上昇シナリオが、米国債の格下げやイタリアやスペインのデフォルト懸念が積み上がっていき拡大した結果なのだと考えられる。
近頃の豊島逸夫のツイッターの書き込みを読むと「雲の上」という表現も垣間見られるが、上値固めを着実にこなしているという印象も受ける。

本書「金&世界経済」は、前作と違い雑誌サイズで写真も多く使ったムック本。
主な骨子は3つ
 ジム・ロジャースなどの大物インタビュー、ディーラー間の談話
 プロ・ディーラーの投資手法を紹介しつつ、日本人の性質に合った個人投資家の投資方法の薦め
 以前のブログ記事を使って、現状を金を通して解説
その他に、実際の金の買い方・売り方の懇切丁寧な解説など。分かりやすく書かれている。

書店の経済誌コーナーに置かれているが、ご家庭ではリビングルームのテーブルやキッチンのカウンターに置かれて簡単にページをめくれる感じ。
セミナー参加者が「加齢臭漂うオヤジ」から「香水の香り」が混じり赤ちゃん連れも居ると書かれているように、ターゲット読者層をそこに合わせてきている。

こういう写真が多いムック本の利点は、こういった記事や解説をする人がどういう「顔」をしているか、どういう「顔相」をしているか、見ることが出来る所にあると思っている。
どういう人がその情報を書いているか知る、判断材料のひとつとなるんじゃないだろうか。(*1)

金に何が起きているのか金に何が起きているのか
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本書では、多彩なインタビューが目を引く。

ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを設立したジム・ロジャースとのインタビュー。
J・ソロス(投資の表舞台から下りた?)との投資姿勢の違いがよく分かる。

J・ロジャースは「金はまだバブルではない 2000ドルまで行く」と言うが、一方で「いずれはバブルになるかもしれないが、それは2020〜2025年の話であって、今すぐ、というわけではないと考えている。」と書かれている。
ただ、その後のディーラー対談で「3〜5年以内に2000ドルと言っていた」という部分があるので、インタビューの時よりもさらにシナリオが修正されているのかもしれない。
とにかく、変化が激しいので頭を切り換えていかないといけない。

そこで気を付けるように書かれているのが、プロのディーラーと個人投資家とは明らかに視点と時間感覚が違うということだ。
本書ではプロ・ディーラーと個人投資家、それらの持つ武器の違いを繰り返し書かれている。

プロ・ディーラーのやり方を知る「住友商事 ディーリングルームを見てきました!」は面白い。
結局、一次情報や関連情報、その情報を得るタイミングなどの情報量では、個人投資家はプロには敵うわけはない。
一方で、個人投資家ならではの強みがあり武器がある。
「リスクが苦手な日本人」のDNAに合った投資として、そのリスク回避DNAと闘う必要を説きつつも、プロが持てない、個人投資家が持つ「決算期が無い」ということを活用すべきだと書かれている。

今の市況では高リスクな一点張りのギャンブルではなく、コツコツと投資を進めるべき状況ということなのだろう。

金を通して世界を読む金を通して世界を読む
豊島 逸夫

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よくある金投資本では、結局、高騰している金にしか触れておらず、しかも投資メリットが9割・デメリットが1割で書かれていて、いかにも手数料目当ての「売らんかな」な姿勢が感じられた。
前作「金に何が起きているのか」では、プラチナ投資が取り上げられていた所が目を引いた。(*2)

本書「金&世界経済」では、さらにパラジウム投資について書かれている。
こういう先を先を読む姿勢は、他の金投資本であまり見られない特徴と感じる。
(プラチナ、パラジウムどちらもETFを使っての投資が可能)

パラジウムに関わるインタビュー「プラチナ・パラジウムは同じ値段になる!?」の、イギリスの貴金属調査会社GFMSのポール・ウォーカー。

以前、金に関する記事を書いてから、金とプラチナに関わる記事はアンテナを向けるようにしていた。
しかし、パラジウムがプラチナの副産物的位置で製錬されるとは始めて知った(多分、詳しい人には常識なのだろうが)。さらにプラチナ需給は供給過多だそうだ。
こういった情報が、マイナーな投資本や有料ブログが持つアドバンテージだろう。




以前、「金関連本をまとめて読んでみた記事」を書いた時に、いい機会なのでヘソくり使って金貨を一個買ってみた。

今、売れば、それで新しいMacBookAirを買えるんだよなあ・・・

それは投資姿勢として間違っているのは分かってるんですけど、NHK地上波ニュースが金価格高騰&金を売る人々の列という報道をしたし、今がてっぺんかな、という気分にもなる。

(追記2011/09/26)やっぱりそうだった(笑)


前作では「日本人は世界でもユニークな金に対する投資感を持つ」と書かれている。
1990年代、金価格が200ドル(!)、グラムあたり1000円(!)を割り込む中、日本人投資家だけは逆張りで金を買い漁り「ジャパニーズ・バーゲンハンター」と呼ばれていた。彼ら彼女らが利益確定で3倍以上で売っていることで2008年以来、金の輸出国となり今に至っているそうだ。

でも、もう1年待っていれば4倍以上・・・

1年前に買った金貨も、もう少し待っていれば・・・???

悩ましい・・・ 




(*1)マスコミ露出の多い豊島逸夫はいつもの場慣れした顔。ブログの文章の方が個性が感じられる気がする・・・
(*2)これも投資の多角化を求める投資会社の思惑かもしれないが、深読みしすぎも良くないし・・・




Amazonで金貨も売っていたのかっ!?
しかも、"独立行政法人造幣局" !

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2011年7月10日 (日)

太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(2/2)

Rareearthoxides2
(wikimedia commons)

前記事:太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(1/2)

国内で話題になった深海底のレアアースは「使えないし、情報は古いもの」という記事を中心に、中国メディアの反応について考えてみた。

中国メディアの反応は、日本で報道された当日と翌日は、ネイチャー・ジオサイエンス誌で「東京大学の研究グループによって、太平洋の深海底に陸上で確認されている埋蔵量の800倍のレアアースが存在していることが発見された」という発表の第一報と、英国・BBC中文版の記事の転載が大部分で、数も少なく、反応はにぶいものだった。

ところが、翌々日の7月5日に、日本が発見した深海底のレアアースは「使えないし、情報は古いもの」という報道が出たとたんに、その転載記事が急増していた。
サーチナが紹介しているので、日本語でも概略を読むことができる。
日本の海底レアアース大発見「使えないし、情報古い」

サーチナが情報ソースと書いているのは中国経済網。
元記事は「稀土大发现想忽悠谁 专家称深海稀土可利用率不高」(レアアースの大発見はごまかしだろう 専門家によると利用可能性は高くない)」のようだが、さらにその元の記事は国際金融報が書いたもの。

中国メディアでは他紙の参照が多いので、日本メディアのニュースで「中国の〜紙によると」と報道されても、元ネタを調べると実際には他紙の参照記事や引用記事だったり、元の記事から一部削除や編集をした記事という場合がよくある。そのため、非常に多くの記事があるように見えても実はたった1つの記事のコピペ(複製・転載)なこともある。
この中国経済網や他の多くの記事でもコピペしたものが多い。


教養としての資源問題 ―今、日本人が直視すべき現実教養としての資源問題 ―今、日本人が直視すべき現実
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国際金融報は人民日報社が発行している経済誌で、8ページの金融に特化した情報誌。その7月5日版の1面に大きく載っている。(*1)


稀土大发现想忽悠谁 专家称,深海稀土可利用率不高,中国仍为第一大国」(レアアースの大発見はごまかしだろう 専門家によると、利用可能性は 高くなく、中国は依然と一番の(レアアース)大国だ)

人民網・日本語版が「「日本がレアアース大発見」のニュース 狙いは何?」という邦訳記事を書いている。(参照

この記事によると、

日本メディアの報道は中国のレアアース輸出制限に対する圧力としての、一種の「世論戦・メディア戦(舆论战)」のようだと言っている。また、米国のレアアース鉱山についての報道の後も中国に対しての輸出制限緩和の圧力が続いていることから、それもまたメディア戦と見ているようだ。
日本の発見がごまかしという根拠として、
 「今回発表された深海底のレアアース資源はすでに1月5日に発表された「古いニュース」であること」
 「深海底のレアアース資源の採掘には技術的に困難であり不可能に近いこと」
をあげている。
終わりのところでは、中国も深海底資源の開発利用にも注意を向けなければならないと書いて、実際にそういった企業活動が進められていることを紹介している。


(追記)
タイトルの「稀土大发现想忽悠谁」を「ごまかしだ」と意訳しましたが「誰をごまかしたいのか」の方が適切ですね(参照)。大筋変わらないので修正はしていません。
(追記ここまで)

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国際金融網の記事で根拠と言っている部分について考えてみる。

1月5日に発表された「古いニュース」は、時期的に1月6日にサーチナが「日本が南鳥島近海でレアメタル、レアアースの調査を実施へ」と報道した事だと考えられる。(参照

日本が2011年4月から「南鳥島(みなみとりしま)」近海で1年間にわたって海底資源調査へ乗り出すと伝えた。レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)を豊富に含む「コバルト・リッチ・クラスト」の埋蔵を調査するためで、記事は「日本政府が周辺国家との競争になる前に、排他的経済水域の資源の開発に手を打った」と伝えた。

記事を読むと一目瞭然。
このレアメタル、レアアースの海底資源調査はコバルトリッチクラスト(CRC)に対するもので、今回のレアアース資源泥(REY-rich mud)とは別の深海底鉱物資源である。
深海底鉱物資源は、「コバルト団塊」、「深海熱水鉱床」、「コバルト・リッチ・クラスト(CRC)」の3つが発見されていたが、今回の東京大学の発見はまったく新しい4つ目の「レアアース資源泥」の事。


記者が、深海底繋がりで混同したもかもしれないし、それとも南鳥島と排他的経済水域(EEZ)を絡ませて反日の雰囲気を出そうとしたのかもしれない。
案外もっと簡単な、もっと打算的な事のように感じられる。

今回の新発見のニュースを「古いニュース」だと強調することによって、すでに市場には織り込み済みの話題だと感じさせようとしたのではないだろうか?

中国メディアの中では、経済情報誌の国際金融報はいち早く、政治的な見解が出るより先に、反駁する記事を書いていたようだ。
中文の元記事を見てみると、「舆论战(世論戦・メディア戦)」と「旧闻(古いニュース)」が括弧付きで何度も書かれ、特に強調しようとしている。
今回の東大の発表は、6月になって原油、金・銀・プラチナなど商品市場が大きく下落している中の、6月後半にはレアアース銘柄の株価も下落を続けているタイミングでのサプライズだった。
それに対抗するための、レアアース相場への悪影響を考えて書かれた、ごまかしだったと考えられる。

記事タイトルで「第一の大国」と書いているように、レアアース大国と自認しているプライドを脅かされるような状況は好ましくないだろう。

中国が国内産業を優遇するためレアアースを高値で安定させてるために価格操作を行っていると言われる(参照)。
この国際金融報の記事の後に、各中国メディアが一気に複製記事を発信してきた。記事内で、「舆论战(世論戦・メディア戦)」を仕掛けていると他者のせいにしているところは、まさに自分がその情報操作を行っている事の裏返しなのかもしれない。


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深海底資源の採掘は、まだまだ技術的に成熟してはおらず、今後の探査や技術開発が重要な、これからの産業だ。

これは東京大学の一次資料に書かれているし、日本メディアの記事でも同じように書かれているのだが、朝日新聞や日本経済新聞では誤解されそうな表現となっている。例えば、朝日新聞の記事では、

技術的には、海底の泥を吸い上げるだけで採取でき、陸地の鉱床のような放射性元素をほとんど含まず、利用に適するという。海底で、開発が有望なレアアースの存在が確認されたのは初めて。

という書き方をし、すぐにでも実行可能にも感じられる誤解を与えそうな表現となっている。(参照

これらの記事を読んで危機感を増幅させたのかもしれない。

サーチナが「太平洋海底のレアアース資源…中国で「日本の脅し」の見方」 で触れている中国青年報は、「日本科学家称太平洋海底稀土资源丰富(日本の科学者によると太平洋の海底に莫大な量のレアアースがある)」で、朝日新聞の4日の記事を翻訳引用している。(参照

研究报告还指出,从技术角度看,海底稀土的开采只需要将淤泥吸上来,而且其中不含陆地稀土矿藏中伴生的放射性元素铀、钍等,所以“很容易提取和炼制”。
技術的には、海底の泥を吸い上げるだけで採取でき、陸地の鉱床のような放射性元素をほとんど含まず、利用に適するという。

その上で、大部分は公海にあり日本だけの資源ではないことと日本の排他的経済水域(EEZ)にも存在することにも触れ、日本メディアの報道は「中国だけに希土類資源があるのではない。売り惜しみをするな」と警告する姿勢が見られると主張しているようだ。この中国青年報の記事も比較的に早い時期に出たものでコピペされていた。


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国際金融報は「古いニュースだ」の記事で、これは日本メディアによる「世論合戦・メディア戦」と書いている。
日本メディアの報道は、中国へ圧力をかけるための情報操作なのか、蛇足ながら考えてみた。

中国ではメディアによる情報操作が多いという話をよく聞く。その中国から見たら、他国メディアの報道もそういうものと見えてしまうのだろうし、レアアースの輸出制限など圧力外交をしていると、疑心暗鬼になりレアアースに関する全ての他国の対応が圧力に見えてくるのかもしれない。
時期的に、松本剛明外相が訪中した後、海江田万里経済産業相が訪中しレアアース問題を話し合う直前の事なので、余計にそう見られてしまうのかもしれない。

日本の中の人からすると、そこまで考えて官学協調路線をとってくれているなら、その方が嬉しい(笑)

日本でマスコミによる情報操作が行われていないとはとても言えないが、今回のレアアースの報道はちょっと違うだろう。

東日本大震災の後、日本メディアは明るいニュースはことさらに大きく報道し、反論記事は載せないようにしているように感じられる。内向きになっている。
そういう日本マスコミの持つ悪い「空気」の中で、いいかげんな記事が出て、それを読んだいくつかの中国メディアが噛み付いてきた、とそんな感じではないだろうか。

日本メディアが報道し外国メディアが反証する。調べてみると外国メディアの方が正しいらしく余計に日本メディアの報道が信頼されにくくなってしまうだろう。
好むと好まざるとに関わらず、そういった「空気」に支配されることの危険性については、山本七平の「空気の研究」以降、多くの研究がされている。

その空気は、日本メディアだけでなくロイター日本語版の記事にも影響しているようだ。
7月6日にJulie Gordon記者が書いた「Analysis: Underwater rare earths likely a pipe dream(分析:海中のレアアースは夢物語のようだ)」という分析記事(参照)は、Reuters中文版で「日本开采海底稀土可能只是白日说梦」中国語に訳されている(参照)。
要するに、過去の例と、カナダのNautilus社がパプアニューギニア沖で計画している採掘計画などに触れて、現状では非常にコスト高という分析をし夢物語とキツイ表現を使った記事だが、Reuters日本語版では邦訳記事はないようだ。



深海底の鉱物資源の採掘が難しいことはよく知られているし、ちょっと関連書籍を読めば書かれている。
だから、今回のレアアース資源泥が、比較的に採掘しやすいことは明るいニュースだ。

陸上資源はその産出国の事情によって供給リスクが生じるが、海底資源はその心配は少ない。
10年後に、陸上埋蔵量の1000倍のレアアースが供給されるとは思わないが、海底資源探査(特にEEZ)と技術開発を進めない理由は特に思いつかない。(政治以外)

脱原発の主力と見られている天然ガス資源。米国で水圧破砕法がシェールガス(非在来性ガス)に対して技術開発され実用化されることで、天然ガスの産出量が増え、2009年にはロシアを抜いて世界一の生産国となった。

こういう部分ももう少し客観的に報道すべきだと思うのだが、残念ながらほとんど見かけない。


多分、NHK教育の科学番組が放送をしてくれるのだろう。



メモ
(*1)人民日報と朝日新聞は提携関係にある(参照)。さらに考えたくなるのは、ちょっと「マッチポンプ売りの少女」の悪影響だろうな(笑)

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2011年7月 7日 (木)

太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(1/2)

Rareearthoxides
(wikimedia commons)

テレビや新聞等で広く報道されたのでご存じの方も多いと思いますが、
東京大学のグループによって、太平洋の深海底の泥にレアアースを大量に含んだものが多くあることが発見され、英国の科学誌NatureGeoscienceで報告されました。稀土
レアアースについて素人ながらにいろいろ書いてきたことだし、これについてもちょっと調べてみました。


概略は、NHKと毎日新聞の記事が比較的に詳しくまとまっているので、それらの記事を参照ください。
ここでは主に、あまり触れられていない部分と、中国メディアの記事について。

(追記)
後半の中国メディアの記事についての部分は修正中です。すぐ後にWTO違反の話も出てくるとは思わなかった・・・m(_ _)m

次記事:太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(2/2)
(追記ここまで)

 太平洋海底 大量のレアアース - NHKニュース
 レアアース:太平洋深海に「陸上埋蔵の800倍」試算 - 毎日jp(毎日新聞)

詳細は、東京大学が公開している学術情報ページから、「全く新しいタイプのレアアースの大鉱床を太平洋で発見」(pdfファイル)を読むことが出来ます。

NatureGeoscience (Preview) : Deep-sea mud in the Pacific Ocean as a potential resource for rare-earth elements


以下、メモ貼り付けて体裁整えただけなので、である調中心です。

このレアアース資源泥(*注)は、これまでに発見されていた海底鉱物資源(コバルト団塊、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト(CRC))に続く4番目の新しい海底鉱物資源という点が重要。
(*注)この研究により発見された,レアアースを高濃度で含有する深海底堆積物.英文:REY (rareearth elements and yttrium)-rich mud(東京大学の資料より)

東京大学のグループが、太平洋の深海底(水深2500〜6000m)の掘削コア・サンプルを詳しく分析したところ、地上の鉱山よりも含有量が高いサンプルが広範囲で見つかった。
ハワイやフランス領タヒチ周辺の特に含有量が多かった海域では、その資源量は、陸上の埋蔵量1億1千万トンの800倍以上という膨大なものだった。

注意が必要なのは、埋蔵量は技術的・経済的に採掘可能な資源の量で、資源量が800倍でも採掘可能な量は違うこと。

埋蔵量が800倍、1000倍」と書かれている記事は間違い。マスコミの科学記事では(残念ながら)こういう書き間違いはよくあることで、例えば朝日新聞は

推定埋蔵量はこれまで知られている陸地の埋蔵量約1億1千万トンの800倍の900億トンとみられ、2キロ四方の埋蔵量で日本の年間需要約3万トンを満たす計算。

と、知らない人は誤解しそうな書き方をしている。(参照
(ちょっと違うけど、預金と貯金の違いを知らずに、銀行貯金とか郵便預金と書いているようなもの。)

それだけなら恥ずかしい笑い話で済むのだろうし、わざわざこんな文章を書く事も無かったけれども、困ったことに、中国メディアの記事ではそういった朝日新聞や日本経済新聞の記事を参照して、日本の主張や今回の研究自体が間違っているという論調のものもある。
原因というよりも、自分の解釈でいちゃもんを付けるための道具に使われた感じ。

レアアースの問題は、国益も投資も絡むホットトピックスなのだから注意深く書いてほしいものだ。

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東京大学の一次資料では、注釈付きで書かれている。(一部抜粋)

この“レアアース資源泥”は,(1)レアアース含有量(※6)が高いこと,(2)資源量が膨大(陸上埋蔵量(※7)の約1,000倍)かつ探査が容易なこと,
※7 陸上埋蔵量 「埋蔵量」とは,経済的,技術的に採掘可能な資源の量をさす.現在確認されている世界の陸上レアアース鉱床の総埋蔵量は1 億1,000 万トン(酸化物換算量)である.
この海域において,1平方キロメートルの範囲(深度10~70 m)でレアアース資源泥を開発すると,日本の年間レアアース消費量の0.5~1.5 年分を供給することができます.さらに,大まかな推定では,この2 つの海域には,陸上埋蔵量のおよそ1,000 倍という膨大な量のレアアース資源が存在していることがわかりました(図5).

この中でも発見の重要性と膨大な資源量を強調しているが、この資料は科学論文ではないのだからそんなもんだろう。

また、東京大学がトップページに載せているこの公開資料とは別に、恐らくはその前バージョンだろう資料を、東京大学工学部がプレスリリースで載せている(参照 pdf)。

どこをどう強調したいのか分かって面白い。

参照:埋蔵量・資源量について(pdf)|石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)



そこにあるのは分かっている。
もしかしたら自分ちの敷地でも見つかるかもしれない。

問題は採掘コストと深海底環境だが、調査や試掘などの努力をしない理由はない。

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これからどういう手続きになるか考えてみた。

来年や再来年から採掘が始まってレアアースの供給が始まるわけではないのは分かるだろう。


Rees_pacificseabed01

今回の発見では、特にレアアース含有量が多い2つの海域をあげて鉱床と表現している。

それらの海域は大部分が公海であり、深海底は国連海洋法条約(*注)で「人類の共通遺産 (Common Heritage of Mankind)」と定められ、国際海底機構(International Seabed Authority (ISBA))によって管理されている。
(*注)正式名称:「海洋法に関する国際連合条約」(United Nations Convention on the Law of the Sea (UNCLOS))

国際海底機構によって「概要調査及び探査に関する鉱業規則」(マイニング・コード)が採択されれば、レアアース資源泥に対しても鉱区を獲得することが出来る。
マイニングコードは、2000年にコバルト団塊鉱床に対して、2010年に海底熱水鉱床に対して採択された。コバルトリッチクラスト(CRC)に対しては審議中。これからレアアース資源泥(鉱床)に対しても鉱業規則を策定するように要請をし、採択されることを目指すだろう。

海洋国・日本としてイニシアティブをとり、採択に向けての中心的役割を果たすことを期待したい。

一方、日本の排他的経済水域(EEZ)で同様の発見があれば、面倒な手続きのいくつかを回避して採掘を始められるかもしれない。

そのためにも、充分な科学探査と技術開発、環境影響評価は積極的に進められるべきだろう。


海底熱水鉱床に対してのマイニング・コードは、1998年にロシアから要請があり、2010年に採択された。
最初は海底熱水鉱床とCRCに対する要請だったものが、途中でその二つを分割して審議することになったとはいえ12年もかかっている。
国際秩序の大きな変化や、どこかの国による無理矢理なルール変更がなくても、レアアース資源泥鉱床に対しても5〜10年はかかるかもしれない。

さらに、レアアース大国を自認している中国は、自国が充分な探査能力と海底採掘技術を持っていない間は、環境影響評価が不十分とかいろいろと理由をつけて採決を遅らせようとするのではないだろうか。(自国が発見したものなら、採掘出来るように強硬に進めるかもしれないが。)
2国間で政治的なやり取りもあるだろうし、共同開発や技術協力という言い方もしてくるだろう。

その時の政府、経済界には、しっかりとした対応をしてもらいたいものだ。

なぞの金属・レアメタル ~知らずに語れないハイテクを支える鉱物資源~ (知りたい!サイエンス)なぞの金属・レアメタル ~知らずに語れないハイテクを支える鉱物資源~ (知りたい!サイエンス)
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中国では、東シナ海のガス田や南シナ海の油田開発を進め、海洋資源探査や技術開発に力を入れている。
東シナ海のガス田開発は周知の通り。
深度3000m級の海底油田掘削装置(オイルリグ)「海洋石油981」も1月に完成し南シナ海での運用を進めている。(参照

また、友人深海探査艇「蛟龙(蛟竜)号」が深度3579mへの到達に成功し、7月2日には深度5000mの実験探査を行うため母艦「向阳红09(向陽紅09)」が太平洋に向けて出航した。(参照

ところで、いろいろな記事の見出しで「中国が自主開発した有人深海潜水艇・・・」となっている。

この「中国が自主開発した・・・」表現でピンと来た方も多いと思う。
In the pontoon bridge さんとこの「中国 最新の深海調査船「蛟竜」」によると、

中国は「自力設計・自主開発」と発表しているが、中核技術である、耐圧殻の設計・製造はロシア、浮力材やマニピュレーター、水中投光器はアメリカ製で水中TVカメラ、デジタルカメラ、イメージング・ソナーなどは日本から導入している。

だそうだ(笑)

次記事:太平洋の深海底で発見されたレアアースと、それに対する中国メディアの反応(2/2)


参考資料:
外務省: 海洋の国際法秩序と国連海洋法条約

4.国連海洋法条約(「海洋法に関する国際連合条約」)
(2)概要
 オ 深海底
1) 深海底(国の管轄権の及ぶ区域の境界(いわゆる大陸棚)の外の海底及びその下)及びその資源は,「人類の共同財産」とされる。
2) いずれの国も深海底又はその資源について主権又は主権的権利を主張し又は行使してはならない。
3) 深海底の資源を管理することを目的として,深海底における活動を組織し及び管理するために,国際海底機構をジャマイカに設置。

国連海洋法条約と日本(pdf)




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2011年7月 2日 (土)

「韓国で50年分のレアアース鉱脈発見」という記事についてのつぶやきのまとめと補足

Rareearthoxides2
(wikimedia commons)

「韓国で30年〜50年分のレアアース鉱脈発見」のニュース。

素人なりに掘り下げて調べて、ツイッターでつぶやいていたので、そのまとめと補足。

ハングルを勉強するいい機会だからと調べて、メモをまとめていたら、あっさりと話が終わってしまったような・・・


(背景が灰色な部分がTwitterでつぶやいたもの)

50年間使える希土類、忠州と洪川で鉱脈発見|東亜日報・日本語版 (*1)

donga.com[Japanese donga] http://htn.to/8tTcou

韓国地質資源研究院の張浩完(チャン・ホワン)院長は27日、大田市大徳(テジョンシ・テドク)団地で東亜(トンア)日報の記者に対して「昨年12月から今月初めまで、忠州と洪川で試料を採取して分析した結果、希土類が0.6~0.65%含まれる2360万トン規模の鉱脈を発見した」と話した。これを換算すると、使用可能な希土類は約14万7000トンだ。張院長は、「国内で1年に3000トン規模の希土類を輸入しており、50年ぐらいは使用できる量が埋蔵されているものと見られる」と話した。
参照


韓国地質資源研究院
한국지질자원연구원
Korea Insti- tute of Geoscience & Mineral. Resources(KIGAM)



「忠州·ホンチョンソレアアースの2300万トン規模の筐体を発見」(地質図付き)これによると品位は0.1〜2.6%と0.1〜4.7%とあるから、東亜の記事の0.6〜0.65%は平均値か。 / 아시아뉴스 - 새롭게 함께하는 중심 언론!! http://htn.to/wPd45k

洪川の探査では、幅が平均23m、長さ1.2㎞規模の新しい鉱脈を発見した。鉱脈の規模は約1200万トンでREO(希土類酸化物)品位は0.1%〜4.7%である。 現在、より深い鉱脈の確認のため掘削探査が行われている。
また、忠州の探査では、幅が平均30m、長さ2㎞規模の新しい鉱脈をオレサン東部で発見した。鉱脈の規模は約1100万トンでREO(希土類酸化物)品位は0.1 %〜2.6%である。

Google翻訳



第1期探査計画の成果。軽希土なのは確かだろうけど種類は不明。|【韓国】韓国国内での探査を強化:レアメタル安定確保へ[資源]/NNA.ASIA http://bit.ly/kFibI1

韓国政府は、2013年までにレアメタルの埋蔵が有望視される全国11の主要鉱化帯を精密探査する計画。対象は、第1期(今年〜12年)が江原道洪川郡や忠清北道忠州市、慶尚北道蔚珍郡など6カ所、第2期(11〜13年)が慶尚南道河東郡や江原道鉄原郡など5カ所だ。


「レアアース」と一括りにされることが多いけれども、どの元素なのかはかなり重要。
例えば、ジスプロシウム(Dy)など重希土の生産は今のところ中国でしか行われていない。

忠州ではルチルと燐灰石が主らしい http://bit.ly/lyERNN (pdf)。La, Ce, Ndあたりかな?
韓国では,17 年度の調査で高い希土類異常が得られた忠州鉄鉱床付近の詳細地質調査を行い,アルカリ岩の貫入に伴う曹長石化帯に希土類元素が濃集していることを確認した.これらの岩石はルチルや燐灰石などの希土類鉱物が確認された.

産業技術総合研究所(AIST)の「鉱物資源研究グループの2006 年度の活動(Activities of the Mineral Resources Research Group in 2006)」より。(参照 pdf
現在(2006年)、韓国忠州鉄鉱床は採石場になっている。


ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)だとすると、光学レンズや液晶パネルの研磨剤あたりか。
液晶パネルはサムスンの主力商品だから、研磨剤などが韓国国内産が安く手に入るようになると、さらに価格競争力がつくわけだけど・・・

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鉱脈を見つけても・・・|(引用)韓国は現在、レアアース加工技術が劣りレアアース全量を2次製品や完成品の形で輸入している。|レアアース加工技術、韓中機関で共同研究 (聯合ニュース)2011/04/11 - Yahoo!ニュース http://bit.ly/ji00cQ

希土類加工技術協議会は21日、中国の包頭希土研究院とレアアース(希土類)の加工技術を共同研究する協定を結んだ。
(中略)
韓国は現在、レアアース加工技術が劣り、レアアース全量を2次製品や完成品の形で輸入している。 政府は昨年末に発表した第4次海外資源開発基本計画で、レアアースをリチウムとともに新成長鉱物に指定。鉱山確保や加工技術開発などを通じ、自給率の引き上げに拍車をかけている。鉱物公社は年内に100日分の国内需要量に相当するレアアース1500トンを備蓄する予定だ。


韓国、希少金属加工技術に3000億ウォン投資 http://bit.ly/mqNgyZ |レアアースを含めたレアメタル全般に対してだから効果低そう。すると簡単な手は、加工技術を持つ会社との提携や経営権取得、パテント獲得か・・・




輸入量3000トンから単純計算して50年。2008年の輸入量が5000トン弱だから30年の方がまだマシ。品位0.1%の鉱脈も含めて全量掘れればだけど。 RT 韓国でレアアースの鉱脈を発見…50年分の埋蔵量に期待=韓国 [サーチナ]http://bit.ly/k5WxL1


これで、中国は「韓国は50年分のレアアースを備蓄している!」と言って輸出規制を正当化していくんじゃないかなw


レアアースに関して、中国は厳しい採掘規制や輸出規制をかけ、各国からクレームがついているので繰り返し繰り返し自己正当化をしている。

日本に対する中国メディアの報道の例のように、採掘可能性や採算はともかくその数字だけが一人歩きするかもしれない。

「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」 変な記事の背景
中国メディアが伝える日本のレアアース備蓄 一連の記事のまとめ

「日本はレアアースの3分の2を備蓄」という記事について調べてみた

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鉱脈を発見したのはいいけれど、それ、掘って使えるの?

品位2%以上なら経済性あり。|(引用)専門家は「現時点では原石に含まれる含量が少ないため、経済性は低い」と考えている。|襄陽・忠州のレアアース、経済性の判断は先送り | 朝鮮日報 http://bit.ly/m9m3JN
江原道洪川や忠清北道忠州では1980年代からレアアースの存在が確認されていたが、生産は行われていなかった。品位(原石に含まれる含量)が低く、埋蔵地域も住宅地や幹線道路から近いため、採掘を行っても経済性が低かったからだ。2000年代以降も漢灘江(江原道)、漢江、錦江流域でレアアースの調査が行われたが、やはり品位が低く、経済性なしとの結論が下されていた。

中国や米国、オーストラリアでは品位が5%以上だが、洪川や忠州で原石の分析を行ったところ、平均でわずか0.6%だった。そのため専門家は、現時点では韓国のレアアース鉱山の経済性は低いと考えている。


参照



(ぐぐ訳)韓国で50年近く使用することができる"レアアース"鉱脈が発見されたという主張は事実と異なることが分かった。 「国内発見の希土類鉱床、経済性がない」 / 내일의 희망을 전하는 정치경제일간지 내일신문 http://htn.to/wBRgSL

30日、《韓国》国内のレアアースの分野のある専門家は「レアアースが経済性を持たせるには品位が2%以上にならなければならない」とし「しかし、地質資源研究院が最近発見した希土類の品位は0.6〜0.65%水準で経済性がない」と明らかにした。

続いて、「一緒に産出される資源の品位が高いと、希土類自体の品位が低くても打算を合わせることができる」とし「今回発見された鉱脈では鉄鉱石が一緒に産出されたが、鉄鉱石の経済性の品位基準の50%より大幅に足りない20%水準に過ぎない」と評価した。 純度を上げるには、それだけ莫大な費用がかかるという指摘だ。
《中略》
《韓国が輸入している全量を置換出来るという報道に関連して》 知識経済部関係者は「過去にも国内でレアアースの存在を確認した事例がある」とし「問題は経済性ですが、今回発見された希土類は、現状では、開発の価値があるということはできない」と言った
続いて、「精密探査を試みるべきだが(初期の探査の結果より)急に品が大幅に上がったことはほとんどない」と付け加えた。
彼はまた、「レアアースを半導体や二次電池などの産業用に​​使用する選鉱、製錬、素材化の3段階の工程を経なければならない」とし「韓国は加工技術が皆無なうえに、製錬技術も不足して現在の日本の製錬工場を経て、輸入している実情」とし、経済性に懐疑的な立場を見せた。


(ぐーぐる訳から、表現をちょっと調整)(Google翻訳



だめじゃん・・・ (´・ω・`)





(*1)はてなブックマークを経由させているので、タイトルが表示されなかった・・・orz

関連情報

【韓国経済】韓国のレアアース備蓄わずか3トン、対策急務[09/24]

地表に現れているレアアースの品位は0.3~1.3%。Nb, Ta混ざっていて経済性が高いことが分かったと書いている。|「韓国の研究チーム、モンゴルで大規模なレアアース鉱脈発見」 / donga.com[Japanese donga] http://htn.to/J56BWd
これか http://bit.ly/mtkRyt RT 地表に現れているレアアースの品位は0.3~1.3%。Nb, Ta混ざっていて経済性が高いことが分かったと書いている。|「韓国の研究チーム、モンゴルで大規模なレアアース鉱脈発見」http://htn.to/J56BWd
参照




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2011年6月23日 (木)

「日本はレアアースの3分の2を備蓄」という記事について調べてみた

Rareearthoxides
(wikimedia commons)

日本はレアアースの3分の2備蓄 - SankeiBiz(サンケイビズ)」という記事。

日本はレアアースの3分の2備蓄(2011.6.21)

 中国中央テレビは19日、業界関係者の話として、「米国はレアアース(希土類)備蓄量では、世界第2位で、世界の総資源量の約12%に上るが、 一貫して何とかして備蓄量を増やし、毎年中国から大量に輸入している」「日本はレアアースをほぼ100%中国から輸入しているが、輸入しているレ アアース資源のうち、工業生産には約3分の1しか使っておらず、残りの3分の2を戦略備蓄として保管している」と伝えた。

 同テレビによると、2009年末現在、中国で確認されたレアアース資源の埋蔵量は8396万トンで、推定では中国のレアアース埋蔵量は世界の 36%に上る。2010年の中国のレアアース製錬・分離製品の生産量は世界の91%、輸出は世界貿易量の90%に上った。

なんか変だと感じたので調べてみた。


この記事の元ネタは、中国中央テレビ(CCTV)が6月19日の朝のニュース「朝闻天下」で放送したもののようだ(参照)。

中国のレアアース業界再編に関しての特集番組で、一連のトピックス(参照)は、

三大央企暗战南方中重稀土(三大レアアース企業の重希土類をめぐる戦い)
谁在掌控稀土矿产资源 (誰がレアアース鉱物資源を管理しているのか)
工信部正制定稀土兼并重组方案 (工信部はレアアース業界の再編計画を画策)
工信部:不把稀土作讨价还价工具 (工信部:レアアースを駆け引きの道具として)
稀土并不“土” 物以“稀”为贵 (レアアースはただの“土”ではなく“稀”な貴重なものだ)
短评:关注我国稀土行业整合重组 (解説:我が国のレアアース業界再編への関心)
。(ちょっと意訳)

全部で15分ちょっとの特集。映像だけ見てもけっこう面白い。

解説の前の「稀土并不“土” 物以“稀”为贵」で特に日本について触れられている。(*1)

ここでは、中国のレアアースの産業利用の水準が低い(我国稀土资源利用水平低)という話から、米・豪・カナダ・日本などはレアアースの戦略備蓄を重視している(美澳加日等注重稀土战略储备)という話となり、1分45秒あたりから(最後の15秒だけ)日本中心の話になっている。番組の一連の流れを考えると、ここで言及されていると思われる。
(中国語のヒアリングはさっぱりなので、もしかしたら違っているかもしれませんが、)

とりあえずの結論。

日本に言及している部分とはいえ、SankeiBizの記事は、テレビニュースの本筋の中国のレアアース業界再編にはまったく触れていない。「中国のレアアース」に関連する複数の記事の一つというわけでもないようだ。

タイトルは「日本はレアアースの3分の2備蓄」。

15分の「レアアース業界再編」ニュースの中から本筋以外のごく一部だけを抜き出すのは、いろいろな点で疑問に感じる。

(追記2011/06/24)SankeiBizが24日に「レアアース企業 合併統合を推進」という人民日報の記事を紹介している。別紙なので、今回とりあげた記事とは直接の関係はないだろう。(追記ここまで)

それ以前に、その記事のタイトルと内容は正しいのだろうか?

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この「日本はレアアースの3分の2備蓄」という記事内容について中国語メディアの記事を調べていたら「40〜50年分を備蓄している」が一緒に使われているものが多いことに気付いた。

例えば、香港の明报は「真相惊人」コーナーで「日本囤积稀土够用50年」(日本は50年分以上のレアアースを蓄積)という記事で並べて書いている。他も似たりよったり。

その「レアアースの輸入の2/3を戦略備蓄し、40〜50年分を備蓄している」は本当なのか調べてみた。



「40〜50年分備蓄している」について。

昨年の9月はじめに「日本は20年分のレアアースを海底に備蓄している」という変な記事があり、それについて検証をしていたので、そちらを参照してみてください。

「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」 変な記事の背景
海底に20年分とはどこから出てきたか?
海底に「備蓄?」/「ためこむ?」 日本を狙い撃ちにした表現
中国メディアで転載・編集され、削除された部分

その時は、複数の中国メディアが、中国の「稀土(レアアース)の父」徐光憲 氏のインタビューや他のレアアース関連の記事を転載・引用していく過程で、元の発言の一部が削られたり表現が変わり、編集されていったことで、結果的に根拠のないものになったかもしれないと書いた。

また報道内容が、20年から30年、40〜50年と、根拠が示されないまま大きくなっていくことにも言及した。最初に「40〜50年」を見かけたのは、包鋼希土集団の匿名の関係者の言葉を載せた記事だったと記憶している(*2)。その数字を使っているのかもしれない。

徐光憲 氏の試算によると、日本は1995年から2005年までの10年間で利用量20年分を購入し、生産に使いつつ備蓄もしているのだそうだ。(参照
この試算から考えてみると、1995年から2005年までの備蓄量は、20年分の購入量からその10年を単純に引くと備蓄は10年分、2/3を備蓄したとすると13.3年分、実際には生産使用量はうなぎ登りに増え価格も高騰しているので備蓄に回せる分はもっと少ない。
その10年間での最大貯蔵量を13.3年分と無理矢理計算してみると、日本はその後の2006年から2010年のたった5年間で最大36.7年分のレアアースの備蓄をしたのだろうか?(*3) 日本すげー(笑)

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「日本はレアアースの3分の2を備蓄」について。

この中国中央テレビのニュースの元ネタは、2010年9月末にさかのぼる。
前述した「海底に20年分備蓄」(9月上旬)の検証記事を書いた後に出てきたもののようだ。

明报の記事を含め多くの記事で「《金融时报》の報道によると・・・」となっているので、一連の関連キーワードがいつから出現したか調べてみたところ、新浪网の記事などが引用している、中国中央テレビ(CCTV)の番組「环球视线」で9月29日夜に放送した「中国稀土 中国做主」(中国のレアアースは、中国が采配を振る)が震源地の可能性が高い。

おや?

これも中国中央テレビ(CCTV)じゃないか。

(動画のスナップショット)
Rees_china_ft_20100929

日本从中国进口稀土资源,只有1/3用于工业生产,其余的2/3都被作为战略储备来封存,中国收紧出口是出于战略的考虑。ーー英国的《金融时报》
(日本の中国からのレアアース輸入のうち、1/3が工業生産のためであり、残りの2 / 3が戦略備蓄として封印されており、中国は戦略的に考慮して輸出規制をする。ーー英国のFinancial Times)

前述した「所谓我国加强稀土出口管理传言遭西方误读」(所謂、中国のレアアース輸出制限強化について西側の見方は誤っている)(テレビニュースの書き起こし)より、

 客观地观察,日本国内时下并不缺乏可以使用的稀土。资料显示,从1983年起,日本就出台了稀有矿产战略储备制度,储备对象包括镍、铬、稀土等10种稀有金属。因此,据英国的《金融时报》报道,日本从中国进口稀土资源只有1/3用于工业生产,其余的2/3都被作为战略储备来封存。业内专家指出,目前日本保存的稀土资源甚至够用四五十年。
客観的に見て、日本国内ではレアアース(稀土)は欠くことの出来ないものとなっている。資料によると、日本は1983年に、ニッケル(镍)、クロム(铬)、レアアース(稀土)など10種類を対象とした希少鉱物(稀有矿产)の戦略的備蓄制度を始めている。英国のフィナンシャルタイムズ紙の報道によると、日本は中国から輸入したレアアース(稀土資源)の3分の1を工業生産に使い、残りの3分の2を戦略備蓄としている。日本が保全しているレアアース(稀土資源)は40〜50年分だと業界の専門家は指摘する。
(日本語適当訳)

「フィナンシャル・タイムズ紙が報道」と書かれているのだが、レアアースに関して該当する記事はFT.com、FT中文版ともに見つからず、言及している英文記事も見あたらなかった。
時期的に、FT紙による海江田大臣へのインタビューがくさいが、もしそういう事を言ったのなら間違いなく国内でも英文ニュースでも報道がされているだろう。

何か理由があって、FT.comから削除された記事なのだろうか?

もしご存じの方がおられたら教えてください。



他の部分について考えてみよう。

日本では、通商産業省(当時)の経済安全保障問題特別小委員会の報告に基づき、1983年度(昭和58年度)からレアメタル国家備蓄制度がスタートした。この部分は正しい。
しかし、対象品目はニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウムの7元素であり、レアアースは含まれていない。
備蓄目標は国内消費分の60日分(国家備蓄:42日分、民間備蓄:18日分)だ。60年分ではない(笑)

2009年度に新規備蓄対象鉱種としてインジウム及びガリウムの2鉱種が追加された。レアアースは要注視鉱種(備蓄は必要ではないが注視し検討を要する鉱種)に含まれているので国家備蓄はされていない。
参照 pdf)(経済産業省)

そして、2010年10月1日に「レアアース総合対策」が策定され、レアアースの国家備蓄が行われるようになった(参照)。これはCCTVの報道の後の話。

参考資料:我が国におけるレアメタル備蓄事業の歴史(pdf)(JOGMEC, 2005年)

2009年までの話は、化学業界の話題さんとこの「レアメタルの国家備蓄拡充」に詳しく書かれている。



レアメタルは31品目47種類あり、その中にレアアースの1品目17種類が含まれている。日本でも勘違いされることがある。

CCTVの「中国稀土 中国做主」の内容を読むと、抜き出した部分だけでもレアアース(稀土)(稀土資源)と希少鉱物(稀有矿产)が混在しているのが分かる。稀有矿产 は希少鉱物と訳されるが、文脈から所謂レアメタルを示している。
このあたりで、レアメタルの数品目(レアアース以外)とレアアースががごちゃごちゃになってしまって「レアアースの備蓄が行われてきた」という表現となったのではないだろうか。

このCCTVのニュースが報道されたのが9月29日で、日本でレアアース総合対策が策定されたのが10月1日と非常に近い(事前にプレスリリースは出ていただろう)。
ニュースを見たり記事を読んだ人は、周辺情報と合わせて考え1983年まで遡って日本はレアアース17種類を国家備蓄してきたと感じても不思議はないだろう。

もしかすると、FT紙の報道もレアアース以外のレアメタルに関するものだったのかもしれない。

中国中央テレビの報道は、微妙な表現を使いながら、レアメタル(レアアース以外)とレアアースを混在させてミスリーディングを誘っているようにも感じられる。

中国は、レアアースの輸出制限をすることの正当性を、繰り返し繰り返し強調している。

2010年後半からは、違法採掘の摘発強化や、最初に書いたレアアース業界の再編など大鉈をふるっている最中だ。そこで、国内の規制強化に対する不満のガス抜きに使おうとしていたのだろう。

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(*1)短評の部分で言及しているかもしれない。

(*2)元記事のURLはメモっていなかった。

(*3)さらに無意味に、10年間で購入した全てのレアアースを備蓄に回したとしても、2006年から2010年の5年間で20〜30年分のレアアースの備蓄をしたということになる。書いてみたけど、意味不明(笑)

(*4)個人的には、また、中国メディアが変なデータ解釈をして、コピペコピペで広めてるのか、という気分。

メモ
ここは公平に、中国の言い分が全面的に正しい場合も考えてみよう。
東京電力と原子力村じゃないけど、日本政府とJOGMECも事実を隠蔽していると考えてみよう(笑)
実は、日本はレアアースの大量の戦略備蓄をしていて、それは40〜50年分あるのかもしれない(笑)

それが事実だったら、どれほどの国益となるだろうか(笑)
こういう隠蔽情報なら大歓迎なんだが(笑)

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2011年2月26日 (土)

エジプトは、ミロシェビッチを引きずり下ろした学生達(オトポール)から何を学んだのか? | FP誌

Egyptprotest

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前の記事
エジプト・カラー革命・裏話 4月6日運動とオトポール!
エジプト革命 アルジャジーラTVが放映した「4月6日運動」の活動


「レボリューション U - オトポール、CANVAS、ミャンマー、そしてエジプト革命」
Revolution U - Otpor, CANVAS, Burma, and the Egypt Revolution - By Tina Rosenberg

「エジプトは、ミロシェビッチを引きずり下ろした学生達から何を学んだのか?」
"What Egypt learned from the students who overthrew Milosevic." 。

米国の外交専門誌フォーリン・ポリシー誌で、反体制グループの支援組織CANVAS(元Otpor)がエジプト革命の4月6日運動グループや、他の国の反体制グループに対してどうトレーニングなどをしているのか詳しく載っていた。

セルビア(旧ユーゴスラビア)の「オトポール」(Otpor / Отпор)が、どういう戦略で抵抗運動を進め、ミロシェビッチを引きずり下ろしたのか。
オトポルののメンバーは、その後に「CANVAS」 (Centre for Applied Nonviolent Action and Strategies)というNGO?団体を作って世界中の若者の反体制運動を支援し、エジプト革命の「4月6日運動」(April 6 Youth Movements」はもとより、多くの国で若者の反体制グループへの支援をしている。
グルジアやジンバブエの例をあげつつ、特にミャンマでの反体制運動の失敗とその後の若者たちの新たな反体制グループへのトレーニングの様子が書かれている。また、ベラルーシや北朝鮮の反体制グループ、そしてイランでのGreen revolutionの失敗など。

FP誌のティナ・ローゼンバーグ(Tina Rosenberg)記者が、Otporの主要メンバーの、スルジャ・ポポビッチ(Srdja Popovic)、スロボダン・ジノビッチ(Slobodan Djinovic)、それとイワン・マロビッチ(Ivan Marovic)に取材をしてきた。



長いので気になったところを少々。例によって適当な日本語意訳です。

Otpor's founders realized that young people would participate in politics -- if it made them feel heroic and cool, part of something big. It was postmodern revolution.

"Our product is a lifestyle," Marovic explained to me.
"The movement isn't about the issues. It's about my identity. We're trying to make politics sexy."

Traditional politicians saw their job as making speeches and their followers' job as listening to them; Otpor chose to have collective leadership, and no speeches at all. And if the organization took inspiration from Gandhi and Martin Luther King Jr., it also took cues from Coca-Cola, with its simple, powerful message and strong brand.



オトポールは、当時の反体制運動の戦略として、伝統的な政治活動で使われる指導者のスピーチなどは行わず、集団での指導体制を選んだ。
インドのマハトマ・ガンジーや米国のマーティン・ルーサー・キングの運動から影響を受けつつも、さらに、シンプルで力強いメッセージと強力なブランドイメージというコカ・コーラの販売戦略を手本にしたと言っている。

若者たちを政治運動に関わらせるために、運動を格好良くセクシーなものというイメージを作ろうとしたそうだ。
拳を振り上げたシンボルマークの黒いTシャツを着て逮捕されたメンバーを、あたかもロックスターのように仕立て上げ英雄化していった。

セルビア・スタイル(Serb style)とポポビッチ氏が言う、劇場型の政治運動を作っていったのだろう。

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何年もの退屈とも言える時間を使って市民の中に浸透していき、街頭でのデモ運動では、非暴力で、かつ体制側にも暴力を使わせないような、街頭の群集のリスクが少なくなるような運動を計画していった。

CANVASはこれまでに50の国の反体制グループを支援したと言っているが、もちろん失敗もある。そんなに革命や反体制デモは成功していない。

ミャンマの軍事政権への反体制運動について、失敗例と現在進行形のコーチングの例があげられている。
例えば、2008年、ラングーンでの僧侶アシン・コヴィダ(Ashin Kovida)と「僧侶代表委員会」による街頭デモ(参照)の失敗は、非暴力でのデモ活動に対して軍事政権が発砲して鎮圧するとは思っていなかったからだそうだ。

また、運動が始まらなかった例としてベラルーシと北朝鮮の反体制グループが書かれている。

北朝鮮の反体制グループとはソウルのホテルで2日会っているが、結局、あたかも彫像のように動こうとしない北朝鮮の人々に対して、一体全体どうすればいいのかまったく考えつかなかったそうだ。

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今回、チュニジア、エジプトと続いた革命運動は、イランへも強く影響を及ぼすかもしれない。

2009年のイランの大統領選挙の抗議運動「Green Revolution」では、反体制グループのリーダーがオトポールのような戦術を使おうとしなかったから失敗した、のだそうだ。
イランは10年も恐怖に頼る政治をしていて柔軟性のないものとなっているので、ムバラク元大統領にとってのエジプト軍のように、政権が頼りにする柱となる勢力が民衆にとって恐怖の対象とならなくなった時、その政権は倒れるだろう、と言っている。

政権の柱は、アフマディネジャド政権のイランだと、大統領府、イラン革命防衛隊と民兵組織バシジ。それとイラン国民の誇りとしての科学技術、原子力開発かな。
多民族国家だから不満の種はいくらでも出てきそうだし作り上げられるし、革命防衛隊に対してのイラン国軍の不満を高めることも出来そうだ。原子力開発に対しては技術者への攻撃とウラン濃縮設備へのサイバー攻撃を実行(参照)している。

しかし、反アラブ人という結束や、イスラム教スンニ派に対するシーア派の立場、イスラエル・シオニスト政権に対する強硬姿勢など、ひっくり返すのはけっこう大変な気がする。
よしんばひっくり返せたとしても、エジプト革命のような背後に米国がいるカラー革命だと分かったら、モサデク政権転覆でのCIA暗躍とダブるだろうから、イラン人のプライドを酷く刺激しさらに反米な強硬な対応になるんじゃないだろうか。

イランで内乱が起こっても、それはそれで良いと思っているような気もするが。
2013年の大統領選挙に向けて、いろいろ仕込んでいそうだ。

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それにしても、話のなかでコカコーラの販売戦略が出てくるとは思わなかった。

前の記事で触れたAlliance of Youth Movements(AYM)の協賛企業に、なぜMTVが入っているのか不思議だったけれども、ソフト・パワーの戦術として若者層への浸透力の強いアメリカ大衆文化やエンターテイメント産業も利用しているのだろう。オトポールは2000にMTVから「Free Your Mind」賞を送られている。(参照

MTVの映像作成ノウハウをプロパガンダの映像に使えるようにトレーニングとか、MTVのライブ映像で流れるアーティストと反体制派グループのイメージをダブらせるとかやっていそうだ。
CANVASの作った反体制運動の非暴力マニュアルは、どこかの就活セミナーや研修のリーダーシップ・マニュアルとも感じられる出来だった。



もっとも、AYMの協賛企業に入っているのはコカ・コーラではなくペプシ。

これはこれで、旧ソ連との独占契約に続く、カラー革命後の国々へ向けたペプシコの壮大な販売戦略なのかもしれないが。



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